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 アストレイアは、突然現れた赤ん坊にジュリアと名付けた。
 不思議なことにジュリアは、数日で歯が生えたと思ったら、僅か一週間で三歳くらいに見えるまでに成長していたのだ。
 そのことからアストレイアは、ジュリアがどうやって生まれてきたのかを予想した。
 
 その結果、ジュリアは魔力の塊から生を受けたのではないのかと、アストレイアは考えたのだ。というか、そうとしか思えなかったのだ。

 あの日、ヴィラジュリオから吸収した魔力がどういう訳なのか分からないが、三年の時を経てひとつの命として生を受けたのだと、アストレイアは考えたのだ。
 アストレイア自身、禁忌魔法で体を二回も変化させた影響で、女性としての機能を失っていたので、子供を授かることは絶対にないと思っていたのだ。
 それなのに、愛するヴィラジュリオの魔力から生まれた可愛い女の子を授かったのだ。
 アストレイアの喜びようは相当なものだった。
 ジュリアが生まれて半年ほどは、様々な土地を転々とする生活を送っていた。
 しかし、ジュリアのことを考えると、土地を移り住むよりも、どこかの街に定住する方がいいと思ったアストレイアは、どこに住むかを悩んだうえで、ダンジョン都市に身を置くことにしたのだ。
 
 何故ダンジョン都市を選んだかというと、情報が集まりやすい場所だからだ。
 もし、アストレイアを探しているようであれば、その情報も掴みやすいと思ったからだ。
 そして、人が多ければ多いほど身を隠しやすいと考えての行動だった。
 その時のアストレイアは、女の体、真っ白な髪、子供連れという、アスタヴァイオンだった時とはかけ離れた状況に身を置いていた。
 恐らくだが、今のアストレイアの姿と子連れという状況は、ヴィラジュリオたちが探し人として伝えている状況とだいぶ異なっているだろうことが容易に想像できた。
 だからこそ、こそこそするよりは、堂々としていた方が案外見つからないのではなかと考えた結果の移住だった。
 
 ダンジョン都市に着いて、最初にしたことは住む家と生活するための仕事の確保だった。
 様々な土地を転々としながらも魔法薬や魔法道具を作っては売ってを繰り返していたため、それなりに資金はあったのだ。
 
 それならばと、ダンジョン都市では自分の店を持って、生計をたてようとアストレイアは考えた。
 ジュリアと相談しながら決めたのは、可愛らしい赤い屋根の物件だった。
 移住して、ジュリアと始めた二人での生活はとても楽しいもので、アストレイアは毎日が幸せだと感じていた。

 それから、徐々に店の評判が広がり、親子二人で十分暮らしていける程の稼ぎが出来るようになったのだ。
 
 ダンジョン都市に移住して一年。ジュリアは、見た目は五歳くらいに見えるくらいにまで成長していた。
 ヴィラジュリオに似たハニーブロンドの髪とアストレイアに似た緑の瞳の美幼女にだ。
 
 アストレイア自身、現在二十一歳になるが、十代半ばくらいの見た目のため、常連客以外は、二人の関係を年の離れた姉妹だと思うほどだった。
 
 
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