私の番がスパダリだった件について惚気てもいいですか?

バナナマヨネーズ

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第三話

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 私の名前はファイ。
 長く眠っていたような、瞬きほどの間だったような、不思議な感覚で目を覚ました。
 相変わらず喉の渇きはあった。
 だが、目の前の人物と視線が合った瞬間、全身の血が沸騰したような気がした。
 
 月のような綺麗な銀色の髪はサラサラと揺れ、神秘的な紫色の瞳と、きりりと整った眉、高い鼻梁、薄く形のいい唇。
 健康そうな肌色、細い首筋。
 芳しい匂いは甘く…………そして美味しそうな匂い……。
 
 そこまで考えた私は、すぐに目の前の存在が私の番だと気が付いた。
 番を目の前にした私は、いつ大切な番を喰い殺してしまうか、分かったものではなかった。
 だから…………。
 横たわっていたベッドから勢いよく飛び降りて私は、その勢いのまま床にひれ伏した姿を取り、全力でこう叫んでいた。
 
「どうか、貴方様のしもべにしてください。ご主人様!!」

 そう叫んだ瞬間、何か間違ったような気がしたが、それどころではなかった私は勢いのままに言葉を続けていた。
 
「この私と主従契約を結んでください。何からもご主人様をお守りすることを誓わせてください!!」

 そう、私の毒牙から貴方を守らせてください!!
 番の存在を認識してしまった以上、私に番から離れるという選択肢はなかった。
 だからこその主従契約なのだ。
 主従契約は、しもべが主を害してはならないという枷がある。
 これさえあれば、私は絶対に番に手を出すことはないと断言できる!! はずなんだ……。
 
 這いつくばってそう懇願する私に向かって、低く甘い声音が降ってくる。
 
「主従契約……? 僕は……。うん。いいよ。僕の名前はクロス。よろしく。お前は?」

 初めて聞く番の声は甘く、私の胸は震えた。名前を聞かれたこと、私の提案に乗ってくれたことが嬉しい余り、床に額を擦り付けるように大声で答えていた。
 
「私はファイです!! ご主人様にこの命が尽きる瞬間まで尽くさせてください!!」

「ふふ……。ファイね。短い間かもだけどよろしくね」

 ご主人様の答えに昇天しそうではあったが、やることはやらなければならない。
 私の番を守るために必要な儀式だ。
 
「ありがとうございます! それはさっそく契約の議を!!」

「おおぅ」

 私の勢いに一歩後退りしつつも逃げずにいてくれた番の足元に移動した私は、ご主人様を見上げて言った。
 
「それでは、ベッドに座ってくださいますか?」

「分かった」

「はい。ありがとうございます。それでは少し失礼いたしますね」

 私の指示通りベッドに腰掛けたクロスの履いていたブーツを片方脱がせた私は、ごくりと唾を飲んだ。
 足元に膝を付く形で見上げたクロスを改めて見つめる。
 歳は二十くらいだろうか? 身長は私よりも少し低いくらいだが、とても華奢だ。
 少し日に焼けた健康そうな肌、意志の強そうな眉、短く整えられた銀髪。
 これは一目惚れと言うやつなのか?
 全身が熱を帯びていくのを感じる。
 その熱が暴走しないうちにと、私は主従契約の魔術を構築していく。
 
「私は、ご主人様であるクロス様のお命を何からでも守ることを誓います。私は、ご主人様であるクロス様を絶対に裏切らないと誓います。私は、ご主人様であるクロス様に嘘を付かないと誓います。私は、ご主人様であるクロス様の願いを全力で叶えることを誓います。最後に、すべての誓いはクロス様のお命を最優先とし、クロス様のお命を守るためならば、すべての誓いは破棄される。これをもって、私、ファイはクロス様の従順なしもべとしての契約を結ぶことを宣言する」

 そういって魔術を行使した私は、クロスの足の甲に口づけた。
 本当は足を舐めまわしてしまいたかったが、それをぐっと堪えた私は、唖然とするクロスに向かって告げた。
 
「ご主人様。一生お側でお守りします」

「おっおうぅ……」

 少しだけ幼さを感じさせる表情でクロスは頬を少し染めてそう返事をしてくれた。
 喉の渇きは強くなる一方ではあるが、番の側にいられるという幸福感で、今のところは何とかなりそうだと思った私は、自分の単純さに頭を抱えることになる。そうと知っていれば、主従契約などしないで、トンズラこいて、再封印をすればよかったと思うことになるなんて、この時の私は思ってもいなかったんだ。
 

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