私の番がスパダリだった件について惚気てもいいですか?

バナナマヨネーズ

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第五話

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 私の名前はファイ。
 出会って間もない番にさっそくメロメロになりつつあるバイパーだ。
 
 見た感じ恋愛経験バブ赤ちゃんレベルのクロスに危機感も覚えつつも、私のことを知ってもらおうと話を元に戻す。
 
「まぁ、若いころ戦争屋みたいなこともしていたのでお金だけは持っています。ご主人様が望むのでしたら、養って差しあげるというか、私の財産はご主人様の物ですから、湯水のごとく使ってくださいね」

「はっ?」

「遠慮しなくても大丈夫ですから。私の物はご主人様の物。ご主人様の物はご主人様の物ですから安心してください」

「何だそれは、最古のジャイアリズム的思考は!!」

「ふふっ」

「大丈夫だ。僕もそこそこ稼いでいるから……。まぁ、くれると言うものは貰ってもいい……のか? ちなみにどのくらい?」

 何故か最後は小声になって顔を寄せるクロスに、私は笑顔になってその耳元に囁いた。
 
「頑張ればそこそこの国が買えるくらいですよ」

「ひぇっ!!」

 私が囁いた方の耳を片手で押さえながらのけぞりながら驚くクロスが可愛くて私は自然と眉尻が下がりニヨニヨしてしまう。
 
 私の表情に気が付いたクロスは、プイっと横を向いてしまうが、それもまたいい!!
 
「私のことはこれくらいですね。よろしければご主人様のことも伺っても?」

 私の言葉にクロスは表情を少し暗くしたが、すぐに元の表情に戻っていた。
 
「僕か? クソつまんないよ」

「ご主人様の話は何でも聞きたいんですよ」

「なっ! お前のその初めて会った相手への重い感情はどこから来るんだ? なんだ? お前は眠り姫かなんかなのかよ!!」

 眠り姫……。ああ、そんな童話あったな。
 長寿のお姫様が生きることに飽きて、いつしか眠ったまま目覚めなくなったってやつ。
 最後は、王子様のキスで目覚めてハッピーエンドってクソな話だな。
 人生はそんな簡単じゃない。
 どうせ王子様が寿命で死んで、その後はまたお姫様は眠っちまうに決まってる。
 
 まぁ、遠からずともかな。
 そんなことを考えていると、クロスが大きなため息を吐いていた。
 
「もういい! 僕はクロスだ。家名は捨てた。歳は十九だ。今はハンターとしてそれなりに名が通っている。以上だ!!」

「ハンターですか……?」

「ちょっ! 引っ掛かるところそこなのかよ?」

 そう言って、何故か少しだけ嬉しそうに笑うクロスの表情に私の胸は掻き乱される。
 守ってあげたい。安心させてあげたい。
 そう感じさせる表情だった。
 きっと、辛い目に遭ったのだろう。沢山傷ついてきたのだろう。強くなければ生きていられなかったのだろ……。
 
 私が逃げずに立ち向かってクロスを生まれた時から守れていれば何か変わったのだろうか?
 あの時の飢えた獣のような思考に支配された私に、そんな理性的なことが出来たとは思えない。

「ああ、今まで生きていてくれてありがとう……。私の番……」

「あっ? 悪い聞きそびれた」

「ふふ。私はご主人様に出会えて幸せです」

「おっおおぅ……」

「それで、ご主人様はどうしてこんな場所に? 私が言うのはアレですが、ここは世界の果てのような場所ですけど?」

 そう、私が隠遁するのに選んだ場所は、世界の果てのような場所というか、本当に世界の果てなのだ。


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