私の番がスパダリだった件について惚気てもいいですか?

バナナマヨネーズ

文字の大きさ
6 / 17

第六話

しおりを挟む
 私の名前はファイ。
 クロスがなぜこんな場所にいるのか、その理由によっては……。まぁ、クロスの話をここは大人しく聞こう。
 
「あぁ、ちょっとな。ハンターの仕事で赤竜と戦って、何とか勝ったんだが……」

 そこまで聞いた私はピンと来ていた。
 
「ああ……。赤竜の最後のスカしっ屁ですか」

「………………格好悪」

「大丈夫ですよ! 初見殺しってやつです」

 ああ、私も若い頃に竜狩りをしていたとき、赤竜の最後のあがきで見知らぬ場所に強制転移させられるって話を聞いたことを思い出す。
 それよりも。
 
「ご主人様は人の身で赤竜をぶち殺したことの方が素晴らしいです!! 私のようなバイパーならまだしも、ご主人様のような華奢な方が……。ご無事で何よりです」

 最後は少し涙目になってしまった私は、クロスの無事を心から喜んでいた。
 だが、当のクロスは不満そうな顔をする。
 
「華奢じゃねぇし……」

「くくっ。引っ掛かるところはそこなんですか? ああ、なんて可愛らしいんですか!!」

「てっ、てめぇーー!! お前だってガリガリだろうがよ!! どっちかっていうとお前の方がほせぇーよ!!」

 肩を上下させてそう豪語するクロスは、悪戯を思いついた子供のような表情で私の顔を見つめた。
 
「なら見せてやるよ! 僕の力を!!」

 そう言ったクロスは、思いのほか強い力で私の腕をぐっと引いた。
  
「どうだ。僕の力は」

 そう言って、どや顔で私を横抱きしたのだ。
 今はガリガリだが、高身長の私を危なげなく抱き上げたその腕は、華奢なはずなのに力強く、びくともしなかった。
 間近に見上げるクロスの顔と甘く香る首筋に私の心臓は爆発してしまいそうだった。
 
「まぁ、多少僕よりデカいからな。だが、お前なんて簡単に抱けるんだぜ」

 どや顔でそう言うクロスが、更に顔を近づけて私の目を見つめてくるのだ。
 私は、何度も唾を飲み込み、全く力のこもらない両手でクロスの胸を押し返すことしかできなかった。
 
「ん? お前、顔が赤いが大丈夫か?」

「だっ大丈夫です! 大丈夫ですから放してください!!」

「ふふ。そうやって僕の腕の中でもがくお前を見ると……なんか……こう……」

 やばいやばい!!
 なんか、変な空気になってることに私は慌てふためくも、何故か体が動かなかった。
 体が動かない私は、少しでもこの空気から抜け出すため弱々しくも抵抗を続ける。
 
「ああ、そうかよ。これって、僕がお前のこと可愛いって感じたからか……。なぁ、いいか?」

「はい?」

「へへっ。ちゅっ」

 はえ? ちょっーーーーーーー!!
 今のは、そう言う返事じゃないから!
 疑問形だっただろうが!!
 
「ちゅっ。ちゅーっ」

 ナニコレ……。
 唇が当たってるだけなのに……。
 不味い。この空気に呑まれたら何かを失う気がする……。
 抵抗しないといけないのに、私の体は乾いた大地が水を求めるかのようにクロスの行為を受け入れてしまう。
 
「ちゅっ。なぁ、舌入れたい」

 口をくっ付けながらそう懇願された私は、余りの刺激に爆散しそうだった。
 その結果、完全に意識が飛んだのは言うまでもないな。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ヒールオメガは敵騎士の腕の中~平民上がりの癒し手は、王の器に密かに溺愛される

七角@書籍化進行中!
BL
君とどうにかなるつもりはない。わたしはソコロフ家の、君はアナトリエ家の近衛騎士なのだから。 ここは二大貴族が百年にわたり王位争いを繰り広げる国。 平民のオメガにして近衛騎士に登用されたスフェンは、敬愛するアルファの公子レクスに忠誠を誓っている。 しかしレクスから賜った密令により、敵方の騎士でアルファのエリセイと行動を共にする破目になってしまう。 エリセイは腹が立つほど呑気でのらくら。だが密令を果たすため仕方なく一緒に過ごすうち、彼への印象が変わっていく。 さらに、蔑まれるオメガが実は、この百年の戦いに終止符を打てる存在だと判明するも――やはり、剣を向け合う運命だった。 特別な「ヒールオメガ」が鍵を握る、ロミジュリオメガバース。

転移先で辺境伯の跡継ぎとなる予定の第四王子様に愛される

Hazuki
BL
五歳で父親が無くなり、七歳の時新しい父親が出来た。 中1の雨の日熱を出した。 義父は大工なので雨の日はほぼ休み、パートに行く母の代わりに俺の看病をしてくれた。 それだけなら良かったのだが、義父は俺を犯した、何日も。 晴れた日にやっと解放された俺は散歩に出掛けた。 連日の性交で身体は疲れていたようで道を渡っているときにふらつき、車に轢かれて、、、。 目覚めたら豪華な部屋!? 異世界転移して森に倒れていた俺を助けてくれた次期辺境伯の第四王子に愛される、そんな話、にする予定。 ⚠️最初から義父に犯されます。 嫌な方はお戻りくださいませ。 久しぶりに書きました。 続きはぼちぼち書いていきます。 不定期更新で、すみません。

【完結】異世界はなんでも美味しい!

鏑木 うりこ
BL
作者疲れてるのよシリーズ  異世界転生したリクトさんがなにやら色々な物をŧ‹”ŧ‹”ŧ‹”ŧ‹”(๑´ㅂ`๑)ŧ‹”ŧ‹”ŧ‹”ŧ‹”うめー!する話。  頭は良くない。  完結しました!ありがとうございますーーーーー!

吸血鬼公爵の籠の鳥

江多之折
BL
両親を早くに失い、身内に食い潰されるように支配され続けた半生。何度も死にかけ、何度も自尊心は踏みにじられた。こんな人生なら、もういらない。そう思って最後に「悪い子」になってみようと母に何度も言い聞かされた「夜に外を出歩いてはいけない」約束を破ってみることにしたレナードは、吸血鬼と遭遇する。 血を吸い殺されるところだったが、レナードには特殊な事情があり殺されることはなく…気が付けば熱心に看病され、囲われていた。 吸血鬼公爵×薄幸侯爵の溺愛もの。小説家になろうから改行を増やしまくって掲載し直したもの。

強面龍人おじさんのツガイになりました。

いんげん
BL
ひょんな感じで、異世界の番の元にやってきた主人公。 番は、やくざの組長みたいな着物の男だった。 勘違いが爆誕しながら、まったり過ごしていたが、何やら妖しい展開に。 強面攻めが、受けに授乳します。

「隠れ有能主人公が勇者パーティから追放される話」(作者:オレ)の無能勇者に転生しました

湖町はの
BL
バスの事故で亡くなった高校生、赤谷蓮。 蓮は自らの理想を詰め込んだ“追放もの“の自作小説『勇者パーティーから追放された俺はチートスキル【皇帝】で全てを手に入れる〜後悔してももう遅い〜』の世界に転生していた。 だが、蓮が転生したのは自分の名前を付けた“隠れチート主人公“グレンではなく、グレンを追放する“無能勇者“ベルンハルト。 しかもなぜかグレンがベルンハルトに執着していて……。 「好きです。命に変えても貴方を守ります。だから、これから先の未来も、ずっと貴方の傍にいさせて」 ――オレが書いてたのはBLじゃないんですけど⁈ __________ 追放ものチート主人公×当て馬勇者のラブコメ 一部暗いシーンがありますが基本的には頭ゆるゆる (主人公たちの倫理観もけっこうゆるゆるです) ※R成分薄めです __________ 小説家になろう(ムーンライトノベルズ)にも掲載中です o,+:。☆.*・+。 お気に入り、ハート、エール、コメントとても嬉しいです\( ´ω` )/ ありがとうございます!! BL大賞ありがとうございましたm(_ _)m

オレの番になって──異世界に行って愛猫の番にされる話

まめ
BL
不慮の事故により、異世界に転移することになった神木周。 心残りは、唯一の家族だった愛猫・ネロのことだけだった。 ──目覚めた草原で再会したのは、見覚えのある大きな黒い獣。ネロが追いかけてきてくれたのだ。 わからないことばかりの異世界だけど、ネロがいるからきっと大丈夫。 少しずつ心をほどき、神に招かれた世界で穏やかな毎日を楽しむ周たち。 しかし、そんな彼らに不穏な気配が忍び寄る―― 一人と一匹がいちゃいちゃしながら紡ぐ、ほのぼの異世界BLファンタジー。 こんにちは異世界編 1-9 話 不穏の足音編 10-18話 首都編 19-28話 番──つがい編 29話以降 全32話 執着溺愛猫獣人×気弱男子 他サイトにも掲載しています。

【完結】おじさんの私に最強魔術師が結婚を迫ってくるんですが

cyan
BL
魔力がないため不便ではあるものの、真面目に仕事をして過ごしていた私だったが、こんなおじさんのどこを気に入ったのか宮廷魔術師が私に結婚を迫ってきます。 戸惑いながら流されながら?愛を育みます。

処理中です...