私の番がスパダリだった件について惚気てもいいですか?

バナナマヨネーズ

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第十一話

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 私の名前はファイ。
 恐らく死んで時間を巻き戻ってきたと思われるのだが……。
 回帰前と今の状況が違いすぎて混乱している。
 だが、あの記憶が夢や妄想だとは思えない。
 匂い、感触、そして初めて口にした血の味……。
 すべてがリアルすぎて、本当にあったことだとしか思えない。
 そうなると、この誤差は……。
 クロスには回帰前の記憶があるとしか思えない……。
 
「クロス……。変なことを聞くかもしれないが誤魔化さずに答えて欲しい」

「おう。何でも答えてやるさ」

「ああぁ……。クロスも二回目なのか?」

 私がそう言うと、クロスは数回瞬きをした後に見たことが無いような怖い顔になっていた。
 
「二回目? どういうことだ? 言っておくが僕はお前が初恋だ! 前の恋人の記憶なんて僕が上書きしてやるから安心して僕の恋人になってよ」

 言葉だけを聞けば口説かれている気がするが、声音が低く、表情も怒気を隠そうともしないため、叱られているような気分になる。
 誤解されるのは凄く嫌だった私は、すぐに訂正の言葉を吐き出していた。
 
「ちっ、違う! 私だって、クロス以外なんて絶対にいないから! 好きなのはクロスだけだから! …………あっ」

「くくっ。そうか。僕たち両思いだな」

 そう言ってニヤリと微笑むクロスの顔を見て私の掘った墓穴の大きさに気が付く。
 だが、主従契約だけは譲れなかった。
 これはクロスの命綱になる。
 なぜか喉の渇きを今は感じないが、一度知ってしまった血の味を求めて襲ってしまう可能性を捨てきれないからな。
 
「はぁ……。私だってクロスが好きです。貴方が欲しいですよ。ですが、主従契約は絶対です。私のご主人様になってください」 

「…………それは、なんかヤダ」

「貴方にはデメリットのない契約ですから安心してください」

「はあぁ?! 尚更嫌だね。僕は対等な恋人同士になりたいんだよ」

 そう言ってクロスは顔を逸らしてしまった。
 この顔をしたクロスは、絶対に自分の意志を曲げないことを私は知っている。
 困ったことになった……。
 なら、命の譲渡だけでも済ませて、クロスを襲ってしまう前に私が消えるほかに手はない。
 
「わかった……。だけど……。私にも譲れないことがある」

「おう。何でも言ってみろ。まぁ、僕が聞ける範囲でだが、言うことを聞くよ」

「……。吸わせてほしい……」

「ん? なんて?」

「私はバイパーなんですよ。あまり知られてはいないのですが、血を求める性質を持っています」

「ふーん。いいよ」

「やっぱり駄目ですよね……」

「だからいいって」

「大丈夫です。わかっていましたから…………って、はい? いいんですか?」

「おう。ファイになら僕の持っているもの、何でもあげるよ。だから、血だって、命だって、未来だって、過去だって、なんでもだ」

 そう言って豪快な微笑みを見せるクロスに私は目を細めていた。
 とても眩しくて、愛おしくて、可哀そうな私の番。
 甘すぎるクロスの優しさに、私の理性がぐらりと揺れた。
 許されたとたんに、喉の渇きが私を襲う。
 ごくりと唾を飲んだ私に、クロスは可笑しそうな顔をする。
 
「ほら、良いぜ。ファイになら」

 そう言って私を誘惑するのだからたちが悪い。
 腕を広げて見せるクロスにふらふらと近づいた私は、あっという間に囚われていた。
 頭一つ分くらい背の低いクロスの腕の中に囚われた私は、想像もしていない事態に目を白黒させた。
 
「あ……ぅ……、まっ……て」

「ちゅっ。はむっ」

 後頭部を優しく押さえられた私は、クロスの柔らかい舌で蕩かされてしまっていた。
 唇を優しくはんだと思ったら、柔らかい舌が息苦しさに開いた歯列を抜けて口内をゆっくりと弄る。
 舌のつけ根、上顎と余すことなくだ。
 お互いの混じり合った唾液を飲み込むみ、だたクロスの深すぎる口づけを受け入れるだけの私は、いつの間にかベッドに押し倒されてしまっていた。
 
「ふうっ!! ちょっ、まっ!! あっ……」

「んっ、ふふ。待てない。むちゅっ!!」

 そう断言したクロスの手がいつの間にか私の素肌に触れていた。

 
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