嫌われ貧乏令嬢と冷酷将軍

バナナマヨネーズ

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第五話 契約結婚

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 クロムウェル曰、シュタット公爵家とシュタット侯爵の跡継ぎ問題は結構有名なのだとか。
 フェデュイは、シュタット公爵家の跡継ぎとして生を受けた。
 しかし、現在フェデュイがシュタット侯爵なのには理由があった。
 
 シュタット公爵家を継ぐには、愛する人との結婚が条件なのだとか。
 歴代の当主たちは、愛のある結婚をしたうえでその爵位を継いでいったというのだ。
 フェデュイは、なかなかそう言った縁に恵まれずにいた。そんな中、軍部で功績を上げて、爵位を授かり、自力で侯爵へとなったのだ。

 実際にフェデュイは、自身の功績で得た爵位もあるため別に公爵家の次期当主などどうでもよかったのだが、世間の目は違っていた。
 30歳までに結婚をしないと継承権を失ってしまうということは、誰もが知っている有名な話だった。
 今年27歳になるフェデュイは、世間の思いとは別に、急ぐ気もなく、このまま独身でもいいかと思っていたことは誰も知らなかった。
 

 
 そんなフェデュイのお家事情を思い出したリリルは、瞬時にフェデュイの口に出した結婚を契約結婚だと結論付けていたのだ。
 契約結婚という考えに至った時、少しだけ胸に痛みが走ったことに首を傾げつつも、こんな自分を求めるなどそれ以外に考えられなかったリリルは、胸の痛みについて深く考えることもせずに、思いついたことを実行したのだ。
 フェデュイは、リリルの言葉に間髪入れずに答えていた。
 
「わかった」

 自分で言い出したことだが、まさかこんな提案が受け入れられるとは思っていなかったリリルは目を丸くすることになった。
 そんなリリルを一瞥した後に、フェデュイは、執事と思われる男に何やら指示をしてから、リリルに言ったのだ。
 
「すぐに手配する。これで、クロケット男爵家の借金は無くなる」
 
 自分で言い出したことではあったが、こんなことがまかり通るとは思っていなかったリリルは、あっさり自分の要求が通ったことに驚きを隠すことが出来なかった。
 
「えっ?」

「ん? どうした?」

「どうして?」

 呆然とした様子でそう言ったリリルにフェデュイは、ほんの少しだけ表情を緩めて言ったのだ。
 
「妻の実家を助けるのは当然のことだ」

 そんな言葉が帰ってくるとは思っていなかったリリルは、呆然とする事しか出来なかった。
 そして、その言葉は事実だったようで、次の日にはクロケット男爵家が負った借金は全て無くなっていた。
 
 
 それからは、フェデュイの婚約者として扱われるようになったリリルだったが、何故かフェデュイから婚約者扱いされると胸が苦しくて仕方なかった。
 
 リリルは、その胸の痛みを不思議に思いつつも深く考えないようにしていた。
 
 それは、リリルに付けられた侍女たちが陰で噂しているのを聞いてしまった日から余計に考えないようになったともいえた。
 
 ある日のことだった。
 耳のいいリリルは部屋の外から聞こえてくる侍女たちの話し声が聞こえてしまったのだ。
 
「あぁあ、旦那様ったら、あんな獣令嬢と婚約だなんて、信じられないわね」

「でも、あの家なら旦那様に口出しできないしちょうどよかったんじゃない?」

「言えてるわね。それに、あの獣令嬢なら、公爵家を継いだ後になんだかんだ理由をつけて離婚できるって考えたんじゃない?」

「「だよね~。くすくす」」

 聞くつもりじゃなかった会話だったが、耳のいいリリルはその会話の殆どを聞いてしまっていた。
 自分でも分かっていたはずなのに、何故か気持ちが落ち込んでいった。
 よろよろとソファーに移動してから、フェデュイから与えられた部屋にある座り心地のいいソファーに倒れこむようにして座った。
 そして、自分の尻尾に視線を向けてから、他の人にはない獣の証が急に自分を苦しめるものに感じられたリリルは、尻尾をぎゅっと掴んでいた。
 
(べ、別に、兄様と父様が好きでいてくれれば、誰になんて思われてもいいんだもん)

 そんなことを思いながらも、尻尾を掴んだ手の力は強くなる一方だった。
 自分の掴む力で尻尾が痛くなったリリルは、ため息を吐きながら手を離そうとした時に、尻尾に違和感を感じて首を傾げていた。
 そして、尻尾を手放したはずなのに手に残る毛の感触を不思議に思いながら自身の手を見て小さく悲鳴を上げることとなった。
 
「ひっ! な、なんで……」

 そう言ったリリルの瞳には涙が浮かんでいた。
 リリルは、自身の手にごっそりと付いていた尻尾の毛を見た後に、尻尾に目を向けて気が遠くなっていた。
 リリルの目に映った自身の尻尾の一部の肌が露出していたのだ。
 
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