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第一章 聖女になった少女③
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「あり得ない……。神託盤に文字が刻まれるなんて……。あり得ない……」
「どういいことだ? 神託盤が与えられてから、このようなことは一度もなかった……」
「しかし! 神託盤に光が差したと思った次の瞬間には名前が勝手に刻まれていたんだ!!」
神託盤と呼ばれる、歴代の聖女の名が刻まれた石板の置かれている部屋に集まっていた神官たちは騒然としていた。
騒ぎを聞きつけたのか、教会のトップたる教皇がその場に姿を現していた。
教皇は、白髪で長身の男だった。
威厳に満ちた、それでいて優しそうな声音で周囲の神官に問う。
「いったい何の騒ぎですか?」
「教皇猊下!! 大変なのです! 神託盤に!」
「まずは落ち着きなさい。それで、神託盤がどうしたというのですか?」
教皇の声で落ち着きを取り戻した神官だったが、その表情は紙のように白かった。
「申し訳ございません……。ですが、一大事なのです。神託盤に名前が刻まれているのです! そんな予定など無かったはずなのに……」
神官にそう言われた教皇は、一瞬眉を顰めたがそれに気が付く者はいなかった。
優しそうな容貌の教皇は、ゆっくりとした足取りで部屋の奥にある神託盤に向かった。
そして、目を見張った。
「……確かに……。信じられません。ですが、私たちのすべきことは一つです。名前の主を今すぐ探しなさい。神託盤が今反応を示したということは、敷地内に対象がいることが考えられます。逃げられる前に確保しなさい」
有無を言わせない教皇の言葉にその場にいた神官たちはすぐに行動に移していた。
その場に残った教皇は神託盤に刻まれた名前を冷え切った冷たい眼差しで見つめていた。
教会本部内での騒ぎなど知らないサラは、どこに行けば薬がもらえるのかと、教会の敷地内をふらふらと彷徨っていた。
そんな中、一つの建物から美しい音色が聞こえてきたのだ。
サラは、その音に惹かれるように建物に近づいていた。
何かに導かれるかのように目の前の扉を開いたサラは、鮮明に聞こえるピアノと讃美歌に何故か胸が熱くなるのを感じていた。
扉の中は何もかもが眩しく見えたサラは、目を瞑ろうとして何かがおかしいことに気が付く。
気が付けば、ピアノの音色も、讃美歌も聞こえなくなっていた。
その代わり、ざわざわとした人の囁きが聞こえるだけだった。
「てんし……?」
「光が……」
「なんて……美しいの……」
「奇跡……」
周囲のそんなざわめきなど一切聞こえていないサラは、眩しさの原因に遅れて気が付くのだ。
天を見上げて、そのあまりの眩しさに手をかざす。
「なんで、上から?」
建物の中にもかかわらず、何故か自分の頭上に差す光にサラは困惑していた。
そんなサラに一人の神官が声を掛けていた。
「おま……、貴方がサラですか?」
「えっ?」
「貴方の名前は?」
「わたしはサラだ」
サラに名前を告げられた神官はニヤリと表情を歪めたが、それは一瞬のことだった。
サラに声を掛けた神官は、短く「付いてきなさい」とだけ言って、歩き出してしまっていた。
どうしていいのか分からないサラは、身なりから教会の人間だと判断してついて行くことに決めたのだ。
あわよくばランドールを治すための薬が貰えるかもしれないという淡い期待を込めて……。
「どういいことだ? 神託盤が与えられてから、このようなことは一度もなかった……」
「しかし! 神託盤に光が差したと思った次の瞬間には名前が勝手に刻まれていたんだ!!」
神託盤と呼ばれる、歴代の聖女の名が刻まれた石板の置かれている部屋に集まっていた神官たちは騒然としていた。
騒ぎを聞きつけたのか、教会のトップたる教皇がその場に姿を現していた。
教皇は、白髪で長身の男だった。
威厳に満ちた、それでいて優しそうな声音で周囲の神官に問う。
「いったい何の騒ぎですか?」
「教皇猊下!! 大変なのです! 神託盤に!」
「まずは落ち着きなさい。それで、神託盤がどうしたというのですか?」
教皇の声で落ち着きを取り戻した神官だったが、その表情は紙のように白かった。
「申し訳ございません……。ですが、一大事なのです。神託盤に名前が刻まれているのです! そんな予定など無かったはずなのに……」
神官にそう言われた教皇は、一瞬眉を顰めたがそれに気が付く者はいなかった。
優しそうな容貌の教皇は、ゆっくりとした足取りで部屋の奥にある神託盤に向かった。
そして、目を見張った。
「……確かに……。信じられません。ですが、私たちのすべきことは一つです。名前の主を今すぐ探しなさい。神託盤が今反応を示したということは、敷地内に対象がいることが考えられます。逃げられる前に確保しなさい」
有無を言わせない教皇の言葉にその場にいた神官たちはすぐに行動に移していた。
その場に残った教皇は神託盤に刻まれた名前を冷え切った冷たい眼差しで見つめていた。
教会本部内での騒ぎなど知らないサラは、どこに行けば薬がもらえるのかと、教会の敷地内をふらふらと彷徨っていた。
そんな中、一つの建物から美しい音色が聞こえてきたのだ。
サラは、その音に惹かれるように建物に近づいていた。
何かに導かれるかのように目の前の扉を開いたサラは、鮮明に聞こえるピアノと讃美歌に何故か胸が熱くなるのを感じていた。
扉の中は何もかもが眩しく見えたサラは、目を瞑ろうとして何かがおかしいことに気が付く。
気が付けば、ピアノの音色も、讃美歌も聞こえなくなっていた。
その代わり、ざわざわとした人の囁きが聞こえるだけだった。
「てんし……?」
「光が……」
「なんて……美しいの……」
「奇跡……」
周囲のそんなざわめきなど一切聞こえていないサラは、眩しさの原因に遅れて気が付くのだ。
天を見上げて、そのあまりの眩しさに手をかざす。
「なんで、上から?」
建物の中にもかかわらず、何故か自分の頭上に差す光にサラは困惑していた。
そんなサラに一人の神官が声を掛けていた。
「おま……、貴方がサラですか?」
「えっ?」
「貴方の名前は?」
「わたしはサラだ」
サラに名前を告げられた神官はニヤリと表情を歪めたが、それは一瞬のことだった。
サラに声を掛けた神官は、短く「付いてきなさい」とだけ言って、歩き出してしまっていた。
どうしていいのか分からないサラは、身なりから教会の人間だと判断してついて行くことに決めたのだ。
あわよくばランドールを治すための薬が貰えるかもしれないという淡い期待を込めて……。
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