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第二章 運命の出会い(2)
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単独調査の結果、アルエライト王国に見切りをつけたジークリンデは、一刻も早く帰国し魔力災害に対しての対策を練る必要があると決断した。
満足に浄化のできない聖女と、聖女に丸投げして何もしようとしない王国。
見放すには十分だった。
莫大な国費を使うことになるが、自国を守るためにそれは些細なことだった。
国費で結界石と呼ばれる穢れから身を守る石を購入し、アルエライト王国との国境に配備し自国を守る。それと並行して、教会や聖属性の魔法を使えるものを広く雇って漏れ出してくるであろう、穢れたマナを地道に浄化することを考える。
アルエライト王国には悪いが、もうすでに他国を気にかけている状況ではないところまで来ていた。
アルエライト王国の民が亡命を望めば受け入れるが、それにも準備がいるだろう。
そのことも含めての対策を早急に立てなければなれなかった。
本当は、一刻も早い出立をと考えていたジークリンデだったが、一つだけ気になっていたことがあったのだ。
そのままにしておくのも気持ちが悪いような気がしたジークリンデは、すぐに行動に出ていた。
実は、アルエライト王国に来てから、王城内の二か所から清らかなマナを感知していたのだ。
一つは、王城の聖女にあてがわれた部屋だ。
そしてもう一つは、今にでも消えてしまいそうな弱々しいものだったが、たしかに清らかなマナを感じたのだ。
そこは、下人が働く区画だった。
どうしても確かめなければならない気がしたジークリンデは、気配を消してその場所に向かった。
そこで見たものにジークリンデは、衝撃を受けた。
やせ細った少女が同じ下人と思われる女たちから非道な扱いを受けている場面だった。
本当はすぐにでも飛び出していきたかったが、何とかそれを堪える。
ジークリンデは、忍び込んでここにいるのだ。
騒ぎを起こすわけにはいかなかったのだ。
少女を気のすむまで蹴りつけた女たちは、楽しそうにくだらない話をしながらその場を去っていく。
その場に残された少女は、数度腹を擦った後に、体を引きずって建物の陰に移動していた。
そして、またしてもジークリンデは驚くべき場面を目にしてしまう。
なんと、その少女は側に生えている木の根を食べ始めたのだ。
そんな少女の様子は慣れたものだった。初めて木の根を食べるのではなく、日常的にこうせざるを得なかったのだとジークリンデには見て取れたのだ。
ジークリンデには、もう我慢することができなかった。
衝動のままその哀れな少女を身に着けていたマントで包む。
覗き込んだ少女は、骨に辛うじて皮が付いているような酷いものだった。
なんとしてでもこの子を守りたいと強く思ったジークリンデは、懸命に何かを言おうとするも声が出ないでいる少女の様子に気が付き泣きたくなった。
彼女のために何かしたいという思いから、ジークリンデの口から自然と言葉が出ていた。
「大丈夫。俺が君を助けるから。だから、安心して休んでいていいから」
言い終わるのと同時に、ジークリンデは決意していた。
この子を全力で守ると。
そして、少女の髪を見て、その正体をなんとなく理解する。
前髪の一部が白髪だったが、それ以外は真っ黒な髪。
この世界では珍しい髪と、うっすらと開いた少女の黒い瞳。
それは、この子が異世界から来た確かな証拠だったのだ。
満足に浄化のできない聖女と、聖女に丸投げして何もしようとしない王国。
見放すには十分だった。
莫大な国費を使うことになるが、自国を守るためにそれは些細なことだった。
国費で結界石と呼ばれる穢れから身を守る石を購入し、アルエライト王国との国境に配備し自国を守る。それと並行して、教会や聖属性の魔法を使えるものを広く雇って漏れ出してくるであろう、穢れたマナを地道に浄化することを考える。
アルエライト王国には悪いが、もうすでに他国を気にかけている状況ではないところまで来ていた。
アルエライト王国の民が亡命を望めば受け入れるが、それにも準備がいるだろう。
そのことも含めての対策を早急に立てなければなれなかった。
本当は、一刻も早い出立をと考えていたジークリンデだったが、一つだけ気になっていたことがあったのだ。
そのままにしておくのも気持ちが悪いような気がしたジークリンデは、すぐに行動に出ていた。
実は、アルエライト王国に来てから、王城内の二か所から清らかなマナを感知していたのだ。
一つは、王城の聖女にあてがわれた部屋だ。
そしてもう一つは、今にでも消えてしまいそうな弱々しいものだったが、たしかに清らかなマナを感じたのだ。
そこは、下人が働く区画だった。
どうしても確かめなければならない気がしたジークリンデは、気配を消してその場所に向かった。
そこで見たものにジークリンデは、衝撃を受けた。
やせ細った少女が同じ下人と思われる女たちから非道な扱いを受けている場面だった。
本当はすぐにでも飛び出していきたかったが、何とかそれを堪える。
ジークリンデは、忍び込んでここにいるのだ。
騒ぎを起こすわけにはいかなかったのだ。
少女を気のすむまで蹴りつけた女たちは、楽しそうにくだらない話をしながらその場を去っていく。
その場に残された少女は、数度腹を擦った後に、体を引きずって建物の陰に移動していた。
そして、またしてもジークリンデは驚くべき場面を目にしてしまう。
なんと、その少女は側に生えている木の根を食べ始めたのだ。
そんな少女の様子は慣れたものだった。初めて木の根を食べるのではなく、日常的にこうせざるを得なかったのだとジークリンデには見て取れたのだ。
ジークリンデには、もう我慢することができなかった。
衝動のままその哀れな少女を身に着けていたマントで包む。
覗き込んだ少女は、骨に辛うじて皮が付いているような酷いものだった。
なんとしてでもこの子を守りたいと強く思ったジークリンデは、懸命に何かを言おうとするも声が出ないでいる少女の様子に気が付き泣きたくなった。
彼女のために何かしたいという思いから、ジークリンデの口から自然と言葉が出ていた。
「大丈夫。俺が君を助けるから。だから、安心して休んでいていいから」
言い終わるのと同時に、ジークリンデは決意していた。
この子を全力で守ると。
そして、少女の髪を見て、その正体をなんとなく理解する。
前髪の一部が白髪だったが、それ以外は真っ黒な髪。
この世界では珍しい髪と、うっすらと開いた少女の黒い瞳。
それは、この子が異世界から来た確かな証拠だったのだ。
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