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第十三話 誘惑に抗えずに……
部屋の前に陣取った黒騎士に阻まれ、ティアナを見ることの出来なかった四人を連れた黒騎士が屋敷を離れた後のことだった。
存分に泣いたティアナは、落ち込みつつもこれからのことを考えていた。
「黒騎士……。何を考えているの?」
捕虜や奴隷が過ごすには豪華すぎる部屋のベッドの中で悶々と過ごしていると、胃を刺激するいい匂いが鼻腔をくすぐった。
小さくお腹の音を鳴らしてしまったティアナは、気が付いてしまった空腹感に抗っていた。
「ティアナお嬢様。どんどん召し上がってくださいね」
そう言って、にこやかな笑顔で配膳していくマーサ。
見たことも無い真っ白なパン。
香ばしい匂いのする分厚いステーキ。
シャキシャキと見るからに新鮮そうな野菜。
トロリとした甘い香りのする黄色いスープ。
そして、前世の記憶でも見たことのないほどキラキラと輝くフルーツの乗ったケーキ。
口の中に広がる唾液を飲み込み、ティアナは耐える。
しかし、隣でにこやかに微笑むマーサの圧に耐えられなかったティアナは、恐る恐るスプーンに手を伸ばしていた。
甘い香りのする黄色のスープをひと匙掬い、そっと口に運んだ。
スープを口に入れた瞬間。
広がるコーンの甘さとそれを引き立てるような微かな塩気。
こんなに美味しいものを口にしたことのなかったティアナは、気が付けば目の前の食事をガツガツと食べ進めてしまっていた。
「おいひぃい……。ぐすっ……。おいひぃいよぉ……」
泣きながら、こんなに美味しいものならマリカと食べたかったと。
そう思うと、涙が止まらなかった。
グズグズと泣きながら食事をするティアナの涙を拭うマーサは、何も言わずにただお代わりのスープを用いしてくれるのだった。
お腹が満たされたティアナに向かって、マーサは魅力的な提案をするのだ。
「それではお嬢様。今度はお湯をご用意したのでお風呂に入りましょうか」
「おふろ?」
「はい。温かいお湯に浸かるのは気持ちがいいですよ」
今まで濡れた布で体を拭くことしかしてこなかったティアナにとって、生まれて初めてのお風呂は信じられないほどの幸福感を与えたのだ。
「これが……おふろぉ……。あったかい……。とろけるぅぅ……」
マーサは、ティアナを風呂に入れる気満々だったが、本人の強い希望でそれは叶わず、渋々使い方を教えて、何かあった時のために脱衣所で控えていたが、浴室から聞こえるティアナの呟きに笑みを浮かべていた。
風呂から上がったティアナは、またしても着心地のいい寝間着に着替えされられた後、元の部屋とは違うへ部屋と移されていた。
その部屋はパステルカラーの可愛らしい印象を与える部屋だった。
天蓋の付いたベッドに寝かされたティアナがうとうととしながらこの状況に首を傾げたが、疲れ切っていた体は眠ることを要求し、それに抗えなかったティアナはぐっすりと眠ってしまっていた。
そして翌日からのことだった。
ティアナは、マーサに面倒を見てもらいながら、捕虜や奴隷には相応しくない良い生活を送ることとなるのだ。
どうしてとマーサに聞いてもただほほ笑まれるだけで、答えを得ることはなかった。
そして、目覚めた時に見た切り黒騎士に会いこともなく、一か月もの時間を黒騎士の屋敷で過ごすこととなったのだった。
存分に泣いたティアナは、落ち込みつつもこれからのことを考えていた。
「黒騎士……。何を考えているの?」
捕虜や奴隷が過ごすには豪華すぎる部屋のベッドの中で悶々と過ごしていると、胃を刺激するいい匂いが鼻腔をくすぐった。
小さくお腹の音を鳴らしてしまったティアナは、気が付いてしまった空腹感に抗っていた。
「ティアナお嬢様。どんどん召し上がってくださいね」
そう言って、にこやかな笑顔で配膳していくマーサ。
見たことも無い真っ白なパン。
香ばしい匂いのする分厚いステーキ。
シャキシャキと見るからに新鮮そうな野菜。
トロリとした甘い香りのする黄色いスープ。
そして、前世の記憶でも見たことのないほどキラキラと輝くフルーツの乗ったケーキ。
口の中に広がる唾液を飲み込み、ティアナは耐える。
しかし、隣でにこやかに微笑むマーサの圧に耐えられなかったティアナは、恐る恐るスプーンに手を伸ばしていた。
甘い香りのする黄色のスープをひと匙掬い、そっと口に運んだ。
スープを口に入れた瞬間。
広がるコーンの甘さとそれを引き立てるような微かな塩気。
こんなに美味しいものを口にしたことのなかったティアナは、気が付けば目の前の食事をガツガツと食べ進めてしまっていた。
「おいひぃい……。ぐすっ……。おいひぃいよぉ……」
泣きながら、こんなに美味しいものならマリカと食べたかったと。
そう思うと、涙が止まらなかった。
グズグズと泣きながら食事をするティアナの涙を拭うマーサは、何も言わずにただお代わりのスープを用いしてくれるのだった。
お腹が満たされたティアナに向かって、マーサは魅力的な提案をするのだ。
「それではお嬢様。今度はお湯をご用意したのでお風呂に入りましょうか」
「おふろ?」
「はい。温かいお湯に浸かるのは気持ちがいいですよ」
今まで濡れた布で体を拭くことしかしてこなかったティアナにとって、生まれて初めてのお風呂は信じられないほどの幸福感を与えたのだ。
「これが……おふろぉ……。あったかい……。とろけるぅぅ……」
マーサは、ティアナを風呂に入れる気満々だったが、本人の強い希望でそれは叶わず、渋々使い方を教えて、何かあった時のために脱衣所で控えていたが、浴室から聞こえるティアナの呟きに笑みを浮かべていた。
風呂から上がったティアナは、またしても着心地のいい寝間着に着替えされられた後、元の部屋とは違うへ部屋と移されていた。
その部屋はパステルカラーの可愛らしい印象を与える部屋だった。
天蓋の付いたベッドに寝かされたティアナがうとうととしながらこの状況に首を傾げたが、疲れ切っていた体は眠ることを要求し、それに抗えなかったティアナはぐっすりと眠ってしまっていた。
そして翌日からのことだった。
ティアナは、マーサに面倒を見てもらいながら、捕虜や奴隷には相応しくない良い生活を送ることとなるのだ。
どうしてとマーサに聞いてもただほほ笑まれるだけで、答えを得ることはなかった。
そして、目覚めた時に見た切り黒騎士に会いこともなく、一か月もの時間を黒騎士の屋敷で過ごすこととなったのだった。
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