殺戮人形のわたしが敵国の黒騎士様の最愛になるまでの話

バナナマヨネーズ

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第十七話 黒騎士は語る

 黒騎士は自室に着くと連れていたティアナを二人掛けのソファーに座らせて、自分は向かいの一人掛けのソファーに座った。
 座ってから何も話さずにいた黒騎士だったが、何かを思い出したかのように部屋を出て行く。
 しかし、数分もしないうちにトレーにお茶とクッキーを乗せて戻ってきたのだ。
 
「紅茶だ。砂糖はこれだ。ミルクはこっち」

 そう言いながらティアナの前にお茶とクッキーを置いた黒騎士は、ストレートの紅茶を飲む。
 ティアナが紅茶にもクッキーにも手を出さないでいると、困ったように笑う。
 
「ティアナ……。これからする話は、君にとって身に覚えのない話かもしれない。だが、聞いて欲しい」

 そう言った黒騎士は、まっすぐにティアナを見つめて言うのだ。
 
「俺は、笹垣湊ささがきみなとと言う。十年ほど前にこの世界に召喚された……」

 そう話し始めた、黒騎士改め、湊は昔を思い出すようにしながら、淡々と自分の身に起こったことを話し始めていた。
 
 十年前、湊が十七歳の時にそれは起こった。
 その日、湊は放課後に幼馴染の奈良屋杏子ならやきょうこに大切な話をすると決意し、時間を貰う約束をしていた。
 その日は、日直当番になってしまっていた湊が日誌を書き終え、担任の教師に提出した後、杏子が待つ教室に急ぎ足で戻ったのだ。
 しかし、教室には杏子の他に五人のクラスメイトが残っていたのだ。
 加奈、夏美、健輔と城永美鈴しろながみすずの四人が談笑し、少し離れた場所に渋谷龍二しぶやりゅうじという生徒が本を読んでいる姿が見えた。
 そして、窓際の席に座る杏子の姿があった。
 湊は、自分の席に置いていたリュックを持ち上げてから杏子に声を掛ける。

「待たせてごめん。行こうか」

「うん」

 杏子は、小さな声で返事をした後に立ち上がり、机に掛けていた鞄を持ち上げて湊の後について歩こうとした。
 すると、それを邪魔するかのように、加奈と夏美がその前に立ちふさがったのだ。
 その瞬間だった。
 湊たちの足元に光り輝く魔方陣が現れたのは。
 強い光を感じたのは一瞬だった。
 光が収まった後、湊が目を開けるとそこには驚くべき光景が広がっていた。
 
 広い天井、一面に広がるステンドグラスと真っ白な壁。
 先ほどまでいた教室の何十倍も広い空間に立っていたのだ。
 湊は、自分の後ろをついて歩いていたはずの杏子が無事かを確かめるために後ろを振り向く。
 しかしそこには、口を開けて天井を見ている加奈と夏美。そして、顔を青くさせる美鈴が立っていたのだ。
 おかしいと思いつつ周囲に視線を向けると、驚きの表情でへたり込む渋谷龍二と珍し気に周囲を見回している健輔がいるだけで、杏子の姿は見つからなかった。
 湊がおかしいと思い、加奈たちに杏子のことを聞こうとしたところで、低くしわがれた声が掛けられたのだ。
 
「七人の英雄たちよ。よくぞ我々の呼びかけに答えてくれた」
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