勘違い令嬢の行動力が異常な件~愛しの貴方が男が好きだというのなら男にだってなってみせます~

バナナマヨネーズ

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第四話

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 シュミットが号泣しながら気絶するのを見たシユニナは、慌てて兄に駆け寄っていた。
 兄を抱きとめたシユニナは、しょんぼりとしながら口を開く。
 
「お兄様……。心配かけてごめんなさい……」

「シユン……」

「お兄様……」

 意識のないシュミットを軽々お姫様抱っこしたシユニナは、そのまま兄を寝室に運んだ。
 そんな姿を見てしまったカイドとカレンは、同情したように同時に口を開く。
 
「シュミット様……」

「最愛のシユニナ様にお姫様抱っこ……」


 その後、シュミットが目を覚ました後、シユニナは改まって事の次第を説明していた。
 
「えっと……。私がこうなったのは偶然? 留学して一年くらいは、普通に勉強だけして過ごしていたんだけど。ちょっとした出会いがあって、剣術を習うことになったの。それで、私に剣術を教えてくれた人が、魔剣士って呼ばれる人で、たまたまその人が持っていたレアアイテムに触ったら……。えへへ、こうなっていました」

 そう言ったシユニナは、にこりと可愛らしい笑みを浮かべながら、ムキムキの腕に力こぶを作ったのだ。
 身長は同年代の子息よりも少し低いくらいだったが、体の厚みが段違いだった。
 胸部は、シャツがはち切れんばかりに盛り上がっているが、ウエストは細く、理想の逆三角形をしていた。
 キラキラと輝く金の髪。宝石のように輝くエメラルドグリーンの瞳。そして、童顔で可愛らしい顔をしたマッチョ。
 それが今のシユニナの姿だった。
 
「シユニナ……。元にはもう戻れないのか?」

 アガート伯爵がそう問いかけると、シユニナは少し困った表情をした後に、申し訳なさそうに言った。
 
「ごめんなさい。お父様……。でも、私は今の強い私が好きです!! 大丈夫です。将来のことはちゃんと考えています」

「いや、そうか……。シユニナが謝ることなんて何もない」

「ええ。姿が分かっても私たちの娘……。息子? に変わりはないもの。シユニナ。お帰りなさい」

「お母様。はい。ただいま戻りました」

「シユン。ごめんな。お兄ちゃん、すごく驚いてしまって……。ああ、もう大丈夫だ。ムキムキのマッチョになっても、シユンは俺の可愛い妹だ!!」

「お兄様……。でも、今は正しくは弟……」

「いや、俺の可愛いシユンは、い・も・う・と!! 妹だから!!」

 念を押すようにそう言ったシュミットがおかしくてシユニナは、昔と変わらないほわっとした笑顔を見せる。
 その笑顔を見た、全員が姿は変わっても間違いなく目の前のムキムキのマッチョの青年がシユニナなのだと確信するのだ。
 
 しかし、一つだけ問題があった。
 
「ああ、そのだな。シユニナの性別が男になってしまったことはいいとして、こん―――」

 その問題をアガート伯爵が口にしようとした時だった。
 慌てた様子の使用人が扉の外で声を上げる。
 
「た、大変です!! 旦那様!!」

 あまりにも慌てた使用人の声にアガート伯爵は、急いで扉を開けていた。
 
「どうした? 何かあったのか?」

「大変なんです!! 今、執事長様が時間を稼いでいますが、もう時間が―――」

 使用人が時間がないと言いかけたが、それを最後まで口にすることは出来なかった。
 その代わり、アガート伯爵は、何が起こったのかをその目で理解した。
 
「あっ……。ミ…ミハエル君……。ど、どうしてここに?」

 アガート伯爵は、震える声でそう口にしていた。
 そう、使用人が慌てて報告に来た理由は、まさに今、アガート伯爵の目の前にいる男が原因だった。
 
 シユニナの婚約者である、ミハエル・シュニッツッァ侯爵令息。
 彼は、大きな薔薇の花束を抱えて、しかしその表情は普段の無表情の比ではないほど氷のように冷たいものだった。
 
「どうしてだなんて……。何も言わずに留学してしまった婚約者が帰ってきたと聞いたので、駆け付けただけですが?」

 それが何か? と冷たい声音でいうミハエル。
 自分よりも背の高いミハエルに見下ろされたアガート伯爵は、一歩後退ってしまう。
 そんなアガート伯爵の危機に、シュミットが素早く助けに入る。
 
「ああ、我が親友殿」

「シュミット。悪いが通してもらえないか?」

「親友殿。悪いが、シユニナは長旅で疲れているから会うのはまた今度で―――」

 また今度にしてくれと、シュミットが言い終わる前にミハエルは、冷たい声音で周囲を氷漬けにする。
 
「何も言わずに、婚約解消の書類にサインがされたものを送りつけられた俺が、婚約者に会いに来ただけだ。通してくれるよな? 親友殿?」

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