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第五話
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ミハエルの言葉にその場にいた全員が凍り付いた。
まさか、シユニナがそんな物を叩きつけて留学に行ったなどと知る由もなかったのだ。
しかし、そんなこと言い訳には出来なかった。
「悪いが、本当に今度にしてくれないか!」
「何故だ?」
「そ…それは……」
シュミットが言葉を詰まらせていると、その原因だともいえるシユニナが兄の隣に立っていた。
「お兄様……。ごめんなさい。でも、私が―――」
シユニナが私が説明すると言おうとしたがそれを最後まで言うことが出来なかった。
大輪のバラを放り捨てたミハエルが、シユニナを抱きしめていたからだ。
「ああ、シユニナ。会いたかった。どうして何も言わずに行ってしまったんだ。それに、俺には居場所を伝えるななんていうから、シュミットが絶対に口を割らなかった。その所為で、四年もシユンに会えなかった……。ああ、俺のシユン。お帰り」
そう言って、普段の氷のような無表情が嘘のような笑みを浮かべたミハエル。
その光景は地獄のようだった。
長身の美青年が童顔のムキムキのマッチョの青年を蕩けるような笑みで抱きしめているのだから。
何が起こっているのか誰も理解できなかった。
ただ、当事者であるシユニナは、盛大なパニックを起こしていた。
(なななななな!!! なんで?! どうして、ミーシャが? というか、だだだ抱きしめ~。いやいや、それよりもなんで私だって分かるの?! 面影があるかもだけど、初見でそれは無理があるわ!! ああ、でも、四年ぶりのミーシャ……。すきぃって、だめだめ!!)
脳内で一人きゃーきゃーと黄色い声を上げているシユニナだったが、ミハエルの想像以上の行動に完全に思考が停止していた。
シユニナの顎をくいっと指先で上向かせたミハエルは、熱っぽい視線でシユニナを見つめていた。
そして、蕩けるような甘い笑みを浮かべた後、シユニナの頬に柔らかくキスをしたのだ。
完全に思考停止していたシユニナは、されるがままに頬、鼻の頭、瞼、額とキスの雨にさらされていた。
そんなシユニナに変わって、シュミットが間に割り込んで、盛大な突っ込みを入れる。
「ちょーーーーい!! 待て待て待て!! お……お前はぁ!! というか、シユニナが分かるのか?!」
「当然だ。お前は何を言っている?」
何を当たり前のことを? といった様子で、喚くシュミットを呆れたように見たミハエル。
そんなミハエルの態度に納得のいかないシュミットは、勢いよくシユニナの両肩を背後から掴んで、ミハエルに向かい合わせて叫んでいた。
「だってそうだろう?! 留学に行く前のシユンがここまで成長(?)するだなんて誰が思う?!」
そう言って、シユニナをずいっと前に突き出す。
その時、ムチムチの胸板がシャツのボタンを二つほど飛ばしてしまう。
シユニナの厚い胸板がさらされるが早いか、ミハエルは瞬時に自身の上着を脱ぎ捨て、胸板が露わになったシユニナに着せていた。
そして、慌てるようにこう言ったのだ。
「お、お前! なんてことをするんだ。シユニナの肌が俺以外の者の目に晒されてしまったじゃないか!!」
「な……なっ!!」
シュミットは驚く。
シユニナの肌が自分以外に目に触れたといったそばから鼻血を噴き出すその姿に、シュミットは慌てて訳の分からない突っ込みを入れていた。
「鼻血ーーーーーーー!!」
ミハエルが鼻血を噴き出す横で、シユニナは自分の行動が間違っていなかったことに安堵していた。
そう、これはシユニナが大好きな人のために起こした行動だったのだ。
留学するきっかけになった、ミハエルの女の子が苦手発言。
留学中、シユニナは考えていた。女の身では、大好きなミハエルの傍に居ることは出来ない。
婚約は解消したとしてもどうにか彼の傍に居る方法はないかと。
そんな事を考えている時だった。
剣の師匠である魔剣士が、レアアイテムが手に入ってと話しているのを聞いたシユニナは、そのレアアイテムの効果を知って覚悟を決めたのだ。
そのレアアイテムは、身に着けた者の性別を逆転させるという非常に意味が分からないアイテムだった。
しかも、一度そのアイテムを身に付けてしまうと、よほどのことがない限り外れないという効果もあり、魔剣士はそのレアアイテムを封印しようか迷っていたのだ。
そんな中、自分の求めていた物を見つけてしまったシユニナは、レアアイテムに飛びついていたのだ。
必死に止める魔剣士を説得して、シユニナはレアアイテムの効果で男の身を手に入れたのだ。
男の身なら、結婚は出来ずとも大好きなミハエルに嫌われることもなく傍に居られると思うようになったシユニナは、自信をつけて行く。
それと比例するように体はムキムキのマッチョに成長していったのだ。
まさか、シユニナがそんな物を叩きつけて留学に行ったなどと知る由もなかったのだ。
しかし、そんなこと言い訳には出来なかった。
「悪いが、本当に今度にしてくれないか!」
「何故だ?」
「そ…それは……」
シュミットが言葉を詰まらせていると、その原因だともいえるシユニナが兄の隣に立っていた。
「お兄様……。ごめんなさい。でも、私が―――」
シユニナが私が説明すると言おうとしたがそれを最後まで言うことが出来なかった。
大輪のバラを放り捨てたミハエルが、シユニナを抱きしめていたからだ。
「ああ、シユニナ。会いたかった。どうして何も言わずに行ってしまったんだ。それに、俺には居場所を伝えるななんていうから、シュミットが絶対に口を割らなかった。その所為で、四年もシユンに会えなかった……。ああ、俺のシユン。お帰り」
そう言って、普段の氷のような無表情が嘘のような笑みを浮かべたミハエル。
その光景は地獄のようだった。
長身の美青年が童顔のムキムキのマッチョの青年を蕩けるような笑みで抱きしめているのだから。
何が起こっているのか誰も理解できなかった。
ただ、当事者であるシユニナは、盛大なパニックを起こしていた。
(なななななな!!! なんで?! どうして、ミーシャが? というか、だだだ抱きしめ~。いやいや、それよりもなんで私だって分かるの?! 面影があるかもだけど、初見でそれは無理があるわ!! ああ、でも、四年ぶりのミーシャ……。すきぃって、だめだめ!!)
脳内で一人きゃーきゃーと黄色い声を上げているシユニナだったが、ミハエルの想像以上の行動に完全に思考が停止していた。
シユニナの顎をくいっと指先で上向かせたミハエルは、熱っぽい視線でシユニナを見つめていた。
そして、蕩けるような甘い笑みを浮かべた後、シユニナの頬に柔らかくキスをしたのだ。
完全に思考停止していたシユニナは、されるがままに頬、鼻の頭、瞼、額とキスの雨にさらされていた。
そんなシユニナに変わって、シュミットが間に割り込んで、盛大な突っ込みを入れる。
「ちょーーーーい!! 待て待て待て!! お……お前はぁ!! というか、シユニナが分かるのか?!」
「当然だ。お前は何を言っている?」
何を当たり前のことを? といった様子で、喚くシュミットを呆れたように見たミハエル。
そんなミハエルの態度に納得のいかないシュミットは、勢いよくシユニナの両肩を背後から掴んで、ミハエルに向かい合わせて叫んでいた。
「だってそうだろう?! 留学に行く前のシユンがここまで成長(?)するだなんて誰が思う?!」
そう言って、シユニナをずいっと前に突き出す。
その時、ムチムチの胸板がシャツのボタンを二つほど飛ばしてしまう。
シユニナの厚い胸板がさらされるが早いか、ミハエルは瞬時に自身の上着を脱ぎ捨て、胸板が露わになったシユニナに着せていた。
そして、慌てるようにこう言ったのだ。
「お、お前! なんてことをするんだ。シユニナの肌が俺以外の者の目に晒されてしまったじゃないか!!」
「な……なっ!!」
シュミットは驚く。
シユニナの肌が自分以外に目に触れたといったそばから鼻血を噴き出すその姿に、シュミットは慌てて訳の分からない突っ込みを入れていた。
「鼻血ーーーーーーー!!」
ミハエルが鼻血を噴き出す横で、シユニナは自分の行動が間違っていなかったことに安堵していた。
そう、これはシユニナが大好きな人のために起こした行動だったのだ。
留学するきっかけになった、ミハエルの女の子が苦手発言。
留学中、シユニナは考えていた。女の身では、大好きなミハエルの傍に居ることは出来ない。
婚約は解消したとしてもどうにか彼の傍に居る方法はないかと。
そんな事を考えている時だった。
剣の師匠である魔剣士が、レアアイテムが手に入ってと話しているのを聞いたシユニナは、そのレアアイテムの効果を知って覚悟を決めたのだ。
そのレアアイテムは、身に着けた者の性別を逆転させるという非常に意味が分からないアイテムだった。
しかも、一度そのアイテムを身に付けてしまうと、よほどのことがない限り外れないという効果もあり、魔剣士はそのレアアイテムを封印しようか迷っていたのだ。
そんな中、自分の求めていた物を見つけてしまったシユニナは、レアアイテムに飛びついていたのだ。
必死に止める魔剣士を説得して、シユニナはレアアイテムの効果で男の身を手に入れたのだ。
男の身なら、結婚は出来ずとも大好きなミハエルに嫌われることもなく傍に居られると思うようになったシユニナは、自信をつけて行く。
それと比例するように体はムキムキのマッチョに成長していったのだ。
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