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第二部
第三章 ちょっと待て、どこがゴリラだ!ゴリラ成分ZEROだろうが!! 4
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クリストフの姉が冷静そのものな様子で、冷めたティーポットを持って出ていくのを呆然とした様子で見送った後に絶叫した。
「こんちくしょうが!!!ちょっと待て、どこがゴリラだ!ゴリラ成分ZEROだろうが!!」
そう叫んだ後、這いつくばっていたシエテの襟首を掴んで身を起こさせてから、ガクガクと揺すった。
揺すられているシエテは、全く興味がないと言った様子だった。
そこに、先程出ていったばかりのクリストフの姉が淹れ直したお茶と、何故かカップを一つ持って現れた。
そして、無表情でシーナの隣に腰掛けてから空いていたカップに暖かいお茶を注いだ。
続いて、新しく持ってきたカップに自分用のお茶を注ぎ自然に飲み始めた。
お茶を注いでもらったシーナは、ニコリと微笑んでクリストフの姉にお礼を言った。
「えっと、ありがとうございます」
「別に……。それよりも、名前。教えて欲しい。私、フェルエルタ・レイゼイ。クリフの姉」
「フェルエルタさんですね。私はシーナです」
お互いに見つめ合っていると、シエテがシーナを横から抱きしめて言った。
「フェルエルタ。顔が怖い。シーたんが怖がるから、少しは表情筋を緩めて欲しい」
そう言われたフェルエルタは、心外だという表情をしたつもりだった。しかし、その表情筋は一切動いてはいなかった。
フェルエルタは、シエテを無視してシーナの小さな両手を握って言った。
「シーちゃん。私のことは、お姉ちゃんって呼んでくれると嬉しい(更にいうと出来ればフェッタねーねと呼んで欲しい)」
「お姉ちゃん?」
「うん(可愛い……)」
そう言って、フェルエルタは嬉しそうな表情を本人はしたつもりだが、3人には無表情にシーナの両手をニギニギした様にしか見えなかった。
こうして多少の誤解はあったが、シーナはクリストフとフェルエルタという年の近い知り合いができたのだった。
それからは、時間を作って主にフェルエルタに会いに行くようになった。
最初は、無表情で分かりにくかったが、一緒に過ごすうちに彼女の性格や思っていることが分かるようになり、いつしか年上の友達と呼べる存在になっていった。
それに伴い、クリストフとも仲良くなり友達と呼べるような間柄となっていった。
ただし、親しくなるにつれてレイゼイ姉弟は、シーナの理解を超えるような言動をするようになっていった。
フェルエルタの場合、いつもシーナを抱っこしたがったのだ。ぎゅっと抱きしめられたり、椅子があるのにフェルエルタの膝に座らせられたりと、とにかくスキンシップが激しかった。
しかし、それとは反対に口数は極端に少なかった。
シーナは、2つ年上のフェルエルタからのスキンシップは嫌ではなかったので、時には困った表情をしながら受け入れていた。
フェルエルタは、シエテ程ではないが女性にしては長身で、癖のない真っ直ぐで長い黒髪と涼し気な青い瞳が凛々しい美人だった。
長い手足に、ホッソリとした腰回り。豊かな胸の女性らしい体つきに、小柄で胸もささやかなシーナは憧れの眼差しを向けていた。
フェルエルタは、シーナから羨望の眼差しを向けられているとは気がついていないようで、青く澄んだ大きな瞳に見つめられると(シーちゃん、可愛い。お人形さんみたいで。それに、甘い匂いにスベスベなほっぺ。ずっと抱っこしていたい)と、心のなかで呟きシーナをぎゅっと抱きしめてスリスリとした。
シエテは、無表情でそんな行動を取るフェルエルタの心情を的確に理解していた。
そしてこっそりと呟いたのだった。
「むっつりめ」
無表情で、口数も少ないフェルエルタに比べてクリストフは分かりやすかった。
シーナが遊びに来るたびに、だらしない表情をしていたのだ。
そして、事あるごとにシーナに言ったのだ。
「今日も可愛いね。結婚しよう」
「シーナちゃん、大好き。結婚しよう」
「今度は、俺が遊びに行くから結婚しよう」
そう、会話の語尾が、五割ほどの確率で「結婚しよう」だったのだ。
最初は困惑していたシーナだったが、シエテから「気にしなくていいぞシーたん。あれはアイツの変わった語尾だから。ほら、です、ますみたいなやつだ。それの残念なくらいに酷い退化を果たした語尾だから」と。素直なシーナは、余りにも会話の最後に「結婚しよう」と連呼するクリストフを見て、そうなのかと納得してしまったのだ。
それからは、その言葉を聞き流すようになってしまったのは仕方のないことだと言えよう。
そんなクリストフは、シーナを大好きすぎる姿はドン引きするほどだったが、街では乙女たちにキャーキャー言われるような男だった。
シエテより体格もよく、身長もあった。
15歳にしては、バランス良く筋肉のついた鍛えられた体つきもあってか、黒髪と少しつり上がった青い目が彼を魅力的な男に見せていた。ただし、黙っていればという話だが。
基本的に、姉と一緒で口数はそれほど多くない方だった。
ただ、親しくなったシエテが普段あまり喋らないことから、シエテと居るときはクリストフは話し役となっていたことからなのか、シエテとシーナの前では饒舌になるといった傾向があった。
親しくなった四人は、街では「眼福すぎる一団。あの、麗しい空気を壊してはならない」という暗黙の了解が出来上がっていたので、よっぽどのことがない限り四人でいるときは間に誰かが割って入ってくることはなかった。
シーナとシエテが二人のときは、「眼福で尊すぎて見ているだけで幸せ」ということで、街の人達がその様子をニマニマと見守るだけだったのは言うまでもない。
「こんちくしょうが!!!ちょっと待て、どこがゴリラだ!ゴリラ成分ZEROだろうが!!」
そう叫んだ後、這いつくばっていたシエテの襟首を掴んで身を起こさせてから、ガクガクと揺すった。
揺すられているシエテは、全く興味がないと言った様子だった。
そこに、先程出ていったばかりのクリストフの姉が淹れ直したお茶と、何故かカップを一つ持って現れた。
そして、無表情でシーナの隣に腰掛けてから空いていたカップに暖かいお茶を注いだ。
続いて、新しく持ってきたカップに自分用のお茶を注ぎ自然に飲み始めた。
お茶を注いでもらったシーナは、ニコリと微笑んでクリストフの姉にお礼を言った。
「えっと、ありがとうございます」
「別に……。それよりも、名前。教えて欲しい。私、フェルエルタ・レイゼイ。クリフの姉」
「フェルエルタさんですね。私はシーナです」
お互いに見つめ合っていると、シエテがシーナを横から抱きしめて言った。
「フェルエルタ。顔が怖い。シーたんが怖がるから、少しは表情筋を緩めて欲しい」
そう言われたフェルエルタは、心外だという表情をしたつもりだった。しかし、その表情筋は一切動いてはいなかった。
フェルエルタは、シエテを無視してシーナの小さな両手を握って言った。
「シーちゃん。私のことは、お姉ちゃんって呼んでくれると嬉しい(更にいうと出来ればフェッタねーねと呼んで欲しい)」
「お姉ちゃん?」
「うん(可愛い……)」
そう言って、フェルエルタは嬉しそうな表情を本人はしたつもりだが、3人には無表情にシーナの両手をニギニギした様にしか見えなかった。
こうして多少の誤解はあったが、シーナはクリストフとフェルエルタという年の近い知り合いができたのだった。
それからは、時間を作って主にフェルエルタに会いに行くようになった。
最初は、無表情で分かりにくかったが、一緒に過ごすうちに彼女の性格や思っていることが分かるようになり、いつしか年上の友達と呼べる存在になっていった。
それに伴い、クリストフとも仲良くなり友達と呼べるような間柄となっていった。
ただし、親しくなるにつれてレイゼイ姉弟は、シーナの理解を超えるような言動をするようになっていった。
フェルエルタの場合、いつもシーナを抱っこしたがったのだ。ぎゅっと抱きしめられたり、椅子があるのにフェルエルタの膝に座らせられたりと、とにかくスキンシップが激しかった。
しかし、それとは反対に口数は極端に少なかった。
シーナは、2つ年上のフェルエルタからのスキンシップは嫌ではなかったので、時には困った表情をしながら受け入れていた。
フェルエルタは、シエテ程ではないが女性にしては長身で、癖のない真っ直ぐで長い黒髪と涼し気な青い瞳が凛々しい美人だった。
長い手足に、ホッソリとした腰回り。豊かな胸の女性らしい体つきに、小柄で胸もささやかなシーナは憧れの眼差しを向けていた。
フェルエルタは、シーナから羨望の眼差しを向けられているとは気がついていないようで、青く澄んだ大きな瞳に見つめられると(シーちゃん、可愛い。お人形さんみたいで。それに、甘い匂いにスベスベなほっぺ。ずっと抱っこしていたい)と、心のなかで呟きシーナをぎゅっと抱きしめてスリスリとした。
シエテは、無表情でそんな行動を取るフェルエルタの心情を的確に理解していた。
そしてこっそりと呟いたのだった。
「むっつりめ」
無表情で、口数も少ないフェルエルタに比べてクリストフは分かりやすかった。
シーナが遊びに来るたびに、だらしない表情をしていたのだ。
そして、事あるごとにシーナに言ったのだ。
「今日も可愛いね。結婚しよう」
「シーナちゃん、大好き。結婚しよう」
「今度は、俺が遊びに行くから結婚しよう」
そう、会話の語尾が、五割ほどの確率で「結婚しよう」だったのだ。
最初は困惑していたシーナだったが、シエテから「気にしなくていいぞシーたん。あれはアイツの変わった語尾だから。ほら、です、ますみたいなやつだ。それの残念なくらいに酷い退化を果たした語尾だから」と。素直なシーナは、余りにも会話の最後に「結婚しよう」と連呼するクリストフを見て、そうなのかと納得してしまったのだ。
それからは、その言葉を聞き流すようになってしまったのは仕方のないことだと言えよう。
そんなクリストフは、シーナを大好きすぎる姿はドン引きするほどだったが、街では乙女たちにキャーキャー言われるような男だった。
シエテより体格もよく、身長もあった。
15歳にしては、バランス良く筋肉のついた鍛えられた体つきもあってか、黒髪と少しつり上がった青い目が彼を魅力的な男に見せていた。ただし、黙っていればという話だが。
基本的に、姉と一緒で口数はそれほど多くない方だった。
ただ、親しくなったシエテが普段あまり喋らないことから、シエテと居るときはクリストフは話し役となっていたことからなのか、シエテとシーナの前では饒舌になるといった傾向があった。
親しくなった四人は、街では「眼福すぎる一団。あの、麗しい空気を壊してはならない」という暗黙の了解が出来上がっていたので、よっぽどのことがない限り四人でいるときは間に誰かが割って入ってくることはなかった。
シーナとシエテが二人のときは、「眼福で尊すぎて見ているだけで幸せ」ということで、街の人達がその様子をニマニマと見守るだけだったのは言うまでもない。
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