82 / 113
番外編
【IF】ざまぁ、滅亡END 1
しおりを挟む
イシュミールは、不衛生な塔の最上階に幽閉されてどのくらいの時が過ぎたのかも分からなくなっていた。
大切に思っていた妹に、居場所と愛する人を奪われた。
愛する人が、自分に気がついてくれない惨めさ。
自分を大切にしてくれた人を巻き込んで死なせてしまったことへの罪悪感。
閉鎖空間でイシュミールは、いつもそんな事を考えていた。
いつしかその無垢なる心は、黒く澱んでいった。
次第に意識も薄れていった。
そんな中、イシュミールに呼びかける声が聞こえたのだ。
最初は聞き取ることも出来ないほど小さな声だったが、イシュミールの心が黒く澱んでいくほどその声は明瞭なものとなっていった。
ある日、その声がはっきりとした言葉としてイシュミールの耳に届いたのだ。
【ねぇ、悔しくはないの?復讐したくないの?こんなにされて、まだいい子でいるの?】
そんな声が聞こえてきたのだ。
イシュミールは、すでに何も考えられなくなっていた頭で、言われるままに考えた。
こんな辛いことから、楽になる方法をだ。
【ねぇ、もう楽におなりよ?心のままに生きるっていうのはとても気持ちのいいものなんだよ?】
(心のままに生きる?)
【そうそう、とっても気持ちいいよ?何にも縛られない自由な心!!】
(自由な心?)
【ああ、そうさ。自由に生きることは誰にでも与えられた権利なんだ!!さぁ、求めるんだ!!自由を、自分にこんな酷いことをした奴らに復讐するんだ!!】
(自由、権利?求める?わたしに酷いことをした人?)
イシュミールは、謎の声に言われるまま考える。自由とは何か、酷いこととは何かを。
次第に、イシュミールの心から黒い思いがドロドロと溢れそうになっていた。
しかし、イシュミールはその心が溢れてしまうことに恐怖を覚えていた。
もし、この思いが溢れたら大変なことになるとなんとなく分かってしまったのだ。
だから、最後の力でそのドロドロをしまおうと必死になったのだ。
しかし、そんなイシュミールを嘲笑うかのように、謎の声は言ったのだ。
【どうしてそんなに頑張るのかな?だって、みんな君を裏切ったんだよ?】
(裏切る?みんな?)
【そうさ、妹も。愛していた王子も。家族も、みんなみんな!!】
(王子……。カイン様……、会いたい。貴方に会いたい……)
謎の声の言葉から、イシュミールはカインのことを考えて、会いたくなったのだ。
イシュミールは、カインのことを信じたかった。
何か理由があるのだと。
しかし、そんなイシュミールを嘲笑うかのように謎の声は言ったのだ。
【おかしいな?何か理由があるなら、何故王子はこないんだ?それって、君はもう彼に捨てられてるっとことだよ?ふふふ、あはははは!!】
謎の声の言葉に、イシュミールの疲弊した心は音を立てて砕けるのが分かった。
信じたかったのに、何故会いに来てくれないのかと、イシュミールも何度もその事を考えてしまっていたのだ。
考えたくなかったことを、謎の声に言われてしまったイシュミールの心は限界を超えてバラバラに砕けていた。
その言葉の凶器が致命傷となったのだ。イシュミールの命の火は急激に細くなり、風が吹けば消えてしまうほどになっていたのだ。
それを知ってか、謎の声はさらに続けて言ったのだ。
【あはははは!!あの王子様は、君じゃなく、君を裏切った妹を選んだんだよ!!今頃、二人でよろしくやってるよ。君の惨めな姿を笑いながらね!!】
その言葉が、刃となりイシュミールの消えそうだった命の火を吹き消したのだった。
事切れたイシュミールの体は、何処からともなく現れた謎の黒い影に取り込まれていき、その場には何も残らなかった。
イシュミールを取り込んだ黒い影は、狂ったように大声で笑った。
【あはははは!!精霊眼が手に入った!!これで、ここを抜け出せる!!苦しかった、苦しかった!!】
そう言った後、その黒い影は、易易と空に飛んでいったのだ。
窓を越える際、「パチンッ」と金属が爆ぜるような音がしたが、黒い影は気にすることもなく空に消えていったのだった。
大切に思っていた妹に、居場所と愛する人を奪われた。
愛する人が、自分に気がついてくれない惨めさ。
自分を大切にしてくれた人を巻き込んで死なせてしまったことへの罪悪感。
閉鎖空間でイシュミールは、いつもそんな事を考えていた。
いつしかその無垢なる心は、黒く澱んでいった。
次第に意識も薄れていった。
そんな中、イシュミールに呼びかける声が聞こえたのだ。
最初は聞き取ることも出来ないほど小さな声だったが、イシュミールの心が黒く澱んでいくほどその声は明瞭なものとなっていった。
ある日、その声がはっきりとした言葉としてイシュミールの耳に届いたのだ。
【ねぇ、悔しくはないの?復讐したくないの?こんなにされて、まだいい子でいるの?】
そんな声が聞こえてきたのだ。
イシュミールは、すでに何も考えられなくなっていた頭で、言われるままに考えた。
こんな辛いことから、楽になる方法をだ。
【ねぇ、もう楽におなりよ?心のままに生きるっていうのはとても気持ちのいいものなんだよ?】
(心のままに生きる?)
【そうそう、とっても気持ちいいよ?何にも縛られない自由な心!!】
(自由な心?)
【ああ、そうさ。自由に生きることは誰にでも与えられた権利なんだ!!さぁ、求めるんだ!!自由を、自分にこんな酷いことをした奴らに復讐するんだ!!】
(自由、権利?求める?わたしに酷いことをした人?)
イシュミールは、謎の声に言われるまま考える。自由とは何か、酷いこととは何かを。
次第に、イシュミールの心から黒い思いがドロドロと溢れそうになっていた。
しかし、イシュミールはその心が溢れてしまうことに恐怖を覚えていた。
もし、この思いが溢れたら大変なことになるとなんとなく分かってしまったのだ。
だから、最後の力でそのドロドロをしまおうと必死になったのだ。
しかし、そんなイシュミールを嘲笑うかのように、謎の声は言ったのだ。
【どうしてそんなに頑張るのかな?だって、みんな君を裏切ったんだよ?】
(裏切る?みんな?)
【そうさ、妹も。愛していた王子も。家族も、みんなみんな!!】
(王子……。カイン様……、会いたい。貴方に会いたい……)
謎の声の言葉から、イシュミールはカインのことを考えて、会いたくなったのだ。
イシュミールは、カインのことを信じたかった。
何か理由があるのだと。
しかし、そんなイシュミールを嘲笑うかのように謎の声は言ったのだ。
【おかしいな?何か理由があるなら、何故王子はこないんだ?それって、君はもう彼に捨てられてるっとことだよ?ふふふ、あはははは!!】
謎の声の言葉に、イシュミールの疲弊した心は音を立てて砕けるのが分かった。
信じたかったのに、何故会いに来てくれないのかと、イシュミールも何度もその事を考えてしまっていたのだ。
考えたくなかったことを、謎の声に言われてしまったイシュミールの心は限界を超えてバラバラに砕けていた。
その言葉の凶器が致命傷となったのだ。イシュミールの命の火は急激に細くなり、風が吹けば消えてしまうほどになっていたのだ。
それを知ってか、謎の声はさらに続けて言ったのだ。
【あはははは!!あの王子様は、君じゃなく、君を裏切った妹を選んだんだよ!!今頃、二人でよろしくやってるよ。君の惨めな姿を笑いながらね!!】
その言葉が、刃となりイシュミールの消えそうだった命の火を吹き消したのだった。
事切れたイシュミールの体は、何処からともなく現れた謎の黒い影に取り込まれていき、その場には何も残らなかった。
イシュミールを取り込んだ黒い影は、狂ったように大声で笑った。
【あはははは!!精霊眼が手に入った!!これで、ここを抜け出せる!!苦しかった、苦しかった!!】
そう言った後、その黒い影は、易易と空に飛んでいったのだ。
窓を越える際、「パチンッ」と金属が爆ぜるような音がしたが、黒い影は気にすることもなく空に消えていったのだった。
17
あなたにおすすめの小説
【完結】転生したので悪役令嬢かと思ったらヒロインの妹でした
果実果音
恋愛
まあ、ラノベとかでよくある話、転生ですね。
そういう類のものは結構読んでたから嬉しいなーと思ったけど、
あれあれ??私ってもしかしても物語にあまり関係の無いというか、全くないモブでは??だって、一度もこんな子出てこなかったもの。
じゃあ、気楽にいきますか。
*『小説家になろう』様でも公開を始めましたが、修正してから公開しているため、こちらよりも遅いです。また、こちらでも、『小説家になろう』様の方で完結しましたら修正していこうと考えています。
牢で死ぬはずだった公爵令嬢
鈴元 香奈
恋愛
婚約していた王子に裏切られ無実の罪で牢に入れられてしまった公爵令嬢リーゼは、牢番に助け出されて見知らぬ男に託された。
表紙女性イラストはしろ様(SKIMA)、背景はくらうど職人様(イラストAC)、馬上の人物はシルエットACさんよりお借りしています。
小説家になろうさんにも投稿しています。
幼い頃、義母に酸で顔を焼かれた公爵令嬢は、それでも愛してくれた王太子が冤罪で追放されたので、ついていくことにしました。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
設定はゆるくなっています、気になる方は最初から読まないでください。
ウィンターレン公爵家令嬢ジェミーは、幼い頃に義母のアイラに酸で顔を焼かれてしまった。何とか命は助かったものの、とても社交界にデビューできるような顔ではなかった。だが不屈の精神力と仮面をつける事で、社交界にデビューを果たした。そんなジェミーを、心優しく人の本質を見抜ける王太子レオナルドが見初めた。王太子はジェミーを婚約者に選び、幸せな家庭を築くかに思われたが、王位を狙う邪悪な弟に冤罪を着せられ追放刑にされてしまった。
悪役令嬢は処刑されないように家出しました。
克全
恋愛
「アルファポリス」と「小説家になろう」にも投稿しています。
サンディランズ公爵家令嬢ルシアは毎夜悪夢にうなされた。婚約者のダニエル王太子に裏切られて処刑される夢。実の兄ディビッドが聖女マルティナを愛するあまり、歓心を買うために自分を処刑する夢。兄の友人である次期左将軍マルティンや次期右将軍ディエゴまでが、聖女マルティナを巡って私を陥れて処刑する。どれほど努力し、どれほど正直に生き、どれほど関係を断とうとしても処刑されるのだ。
【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!
ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。
※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。
地味で器量の悪い公爵令嬢は政略結婚を拒んでいたのだが
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
心優しいエヴァンズ公爵家の長女アマーリエは自ら王太子との婚約を辞退した。幼馴染でもある王太子の「ブスの癖に図々しく何時までも婚約者の座にいるんじゃない、絶世の美女である妹に婚約者の座を譲れ」という雄弁な視線に耐えられなかったのだ。それにアマーリエにも自覚があった。自分が社交界で悪口陰口を言われるほどブスであることを。だから王太子との婚約を辞退してからは、壁の花に徹していた。エヴァンズ公爵家てもつながりが欲しい貴族家からの政略結婚の申し込みも断り続けていた。このまま静かに領地に籠って暮らしていこうと思っていた。それなのに、常勝無敗、騎士の中の騎士と称えられる王弟で大将軍でもあるアラステアから結婚を申し込まれたのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる