揺れる気持ち

紫花

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第1章【優羽side】

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「きゃーーー!!!」



落ちてく中で、誰かに腕を引っ張られ抱きしめられる。






熱くて、硬い腕の中。



「捕まれ!!」



抱きしめ合ったまま、私たちは海の中に叩き込まれた。









「っは!たすけてっ!!」


「ちょ、落ち着け!そんな深くないから!」



そして強く抱き締められる。






「そのまま俺に捕まってて?」





そう言って初めて目が合った、男の人と。


あまりにも整った顔に思わず赤面。声が出ず、下を向いたままコクリと頷く。






「ん。」






そう言って両手で水を掻き分け、足の着く所までやって来た。



「っはぁ、怪我ない?大丈夫?」



「はいっ、·····ありがとうございます、」



「いや、俺の方こそ脅かすつもり無かったんだけど、ごめんね?」



「いえ、私がっ、!!」





歩き出した瞬間ズキンと痛み、バランスを崩す────。





「セーフ」





倒れ込む前に両腕で支えてもらった。



近くなる顔と顔。




「わっ!あ!ごめんなさい」




鼻と鼻がくっつきそうな距離。




「···············」



そのまま無言で砂浜に私を降ろす。


そしてTシャツを脱ぎ始める男の人。





「きゃっ」





思わず両手で目を隠す。





「あ、ごめん。でもこれ着て?」


「えっ!あ!大丈夫です!寒くな·····わっ!」





自分の服を絞ろうと下を向いた瞬間、下着が透けている事に気付いた。




は、恥ずかしすぎるっ!!


身体を隠しながらTシャツを貰い、着る。





「ぬ、濡れてる·····」


「ははっ、サイズ合ってないね」





そう言って目を細めて笑う男の人。




「あ、名前なんて言うの?俺は伊吹」


「わっ、私は、優羽、」


「じゃあ優羽ちゃんの家どこ?送ってくよ」


「やっ!悪いから大丈夫です!!こんな事に巻き込んだ上に送ってもらうなんて·····!それに、私っ··········」


「それに私?」




そう言って私の顔を覗いてくる伊吹くん。





「···············」






「それに何?もしかして、ほんとに死ぬつもりだった?」






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