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本編
綺麗な花には棘がある
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シアンと話して少し頭の中がスッキリした。
ジェードが何故あんなことをしたのか理由はわからないが、きっと俺のことを揶揄おうとか騙そうとかそんな意図はないはずだ。
ここ数ヶ月俺が見てきたジェードは、自分も他人も嫌いで何にも興味がない振りをしているのに可哀想な子供をほっとくことができない甘い男で、ずっと俺を慈しんでくれた。
(正直、捨て犬に餌をやるくらいの感覚だとは思うけど。)
あいつを信じて、あいつの気持ちをちゃんと聞いてやろう、そう思えた。
数日ぶりに部屋から出て庭に向かうが、珍しく先客がいるようだ。紫色の落ち着いた色のドレスを身に纏った少女というには少し大人びた妙齢の女性。
(うわ…めんどくせ)
この城で俺に好意的な人間はほぼ皆無と言っていい。見目も悪くスキルも使えない役立たずの穀潰し、概ね俺の共通認識はそんなものである。もう慣れたから今更なんとも思わないが。
めんどくさいことになる前に部屋に戻ろうと、踵を返す俺の背に甲高い声がかかる。無視して歩き続けると、駆けてきた女性が俺の手を掴んだ。自分で掴んだくせに、まるで汚れ物を触ったかのように弾かれる。
「本当に見窄らしいわね、何故ジェード様はこんな子供に構うのかしら」
「……」
やっぱり現実は、こんなもんか。
ジェードやシアンさんが特別優しいだけで大体世界は持たざる者に厳しい。
「ジェード様に少し優しくされているからって調子に乗るんじゃないわよ。アンタなんて同情で施しを与えられているだけ、本当は会話するのも烏滸がましい卑しい存在なのよ。」
(絵に描いたような貴族令嬢だな、これ言い返したら不敬とか言って百倍になって返ってくるんだよな)
女の甲高い声が庭に響く、大半を右から左に聞き流していると気になることを喚き始めた。
「あんなにお優しいジェード様が変わってしまったのはアンタのせいなんでしょ!守るものができたからって、こんな子供のために……」
「え」
「アンタさえいなければっ」
令嬢の言葉に思考がフリーズした俺に、白い手が振りかぶられる。
あ、打たれる
認識し衝撃を待ったが、それが訪れることはなかった。
「ヒステリックなババアの声は聞くに耐えねぇなぁ」
細くてハスキーな耳に残る綺麗な声
「クソビッチが被害妄想で喚き散らす様はいつ見ても滑稽で笑える」
が、とんでもない暴言を吐いた。
(……女?いや、背が高いし声も低い、……男か?どっちかわかんないけど、そんなことより)
銀色の絹糸のような長髪、アメジストのように上品に光る紫眼、真っ白な肌に小さな唇の紅が浮かぶ。すらっと伸びた長い手足に、全てのパーツが完璧に配置された小さな頭がちょこんと乗っている。
(こんな美しい人間、見たことない)
酷い暴言を吐かれたにも関わらず、令嬢も見惚れて頭がフリーズしているのだろう、言葉が出てこない。
「なあ、俺嫌いなんだよ。頭お花畑で馬鹿みたいにキャンキャンさわぐ雌犬も、諦めたふりして可哀想な自分に浸ってる駄犬も。くだらねぇ、どっちも殺してやりたくなる。」
鋭い言葉が胸に刺さる、侮蔑の眼差しに背筋がヒヤッとする感覚。この人は本当に俺たちを殺せるんだろう、殺意に満ちた憎悪を感じる。
「………………俺は……駄犬じゃねぇ」
冷や汗をかきながらなんとか言葉を発する。言い返されたことに驚いたのか、綺麗な眉がピクッと動く。
「ふ~ん、まあ確かにただの馬鹿犬ではないか、…………ちゃんと牙を隠し持ってる」
美人はニヤッと美しい顔を歪めて意地悪に笑った、それでも少しも醜くならないのは何故なのか。
声を顰めて俺の耳元で囁く。
「ここぞと言う時まで隠しておけよ、……お前の価値はお前が示すんだ」
美人は令嬢を引きずるように庭を離れ、喚く女の声が遠ざかる。
あの人は……
「ユウっ!」
「え、ジェード?」
ジェードが遠くから駆けてくるのが見える。
「揉めてるのが見えて、何があった?怪我はしてないか?」
「大丈夫、なんか口の悪い美人が助けてくれた、多分?」
「多分ってどう言うことだ?」
「……」
あの人は気づいてる、けどそれを誰かに言うつもりはないのだろう。
(諦めたフリして可哀想な自分に浸った駄犬か)
「自分の価値を示す…」
美人の言葉は美しい薔薇のように脳裏に鮮やかに残り、その棘がチクリと胸に刺さった
ジェードが何故あんなことをしたのか理由はわからないが、きっと俺のことを揶揄おうとか騙そうとかそんな意図はないはずだ。
ここ数ヶ月俺が見てきたジェードは、自分も他人も嫌いで何にも興味がない振りをしているのに可哀想な子供をほっとくことができない甘い男で、ずっと俺を慈しんでくれた。
(正直、捨て犬に餌をやるくらいの感覚だとは思うけど。)
あいつを信じて、あいつの気持ちをちゃんと聞いてやろう、そう思えた。
数日ぶりに部屋から出て庭に向かうが、珍しく先客がいるようだ。紫色の落ち着いた色のドレスを身に纏った少女というには少し大人びた妙齢の女性。
(うわ…めんどくせ)
この城で俺に好意的な人間はほぼ皆無と言っていい。見目も悪くスキルも使えない役立たずの穀潰し、概ね俺の共通認識はそんなものである。もう慣れたから今更なんとも思わないが。
めんどくさいことになる前に部屋に戻ろうと、踵を返す俺の背に甲高い声がかかる。無視して歩き続けると、駆けてきた女性が俺の手を掴んだ。自分で掴んだくせに、まるで汚れ物を触ったかのように弾かれる。
「本当に見窄らしいわね、何故ジェード様はこんな子供に構うのかしら」
「……」
やっぱり現実は、こんなもんか。
ジェードやシアンさんが特別優しいだけで大体世界は持たざる者に厳しい。
「ジェード様に少し優しくされているからって調子に乗るんじゃないわよ。アンタなんて同情で施しを与えられているだけ、本当は会話するのも烏滸がましい卑しい存在なのよ。」
(絵に描いたような貴族令嬢だな、これ言い返したら不敬とか言って百倍になって返ってくるんだよな)
女の甲高い声が庭に響く、大半を右から左に聞き流していると気になることを喚き始めた。
「あんなにお優しいジェード様が変わってしまったのはアンタのせいなんでしょ!守るものができたからって、こんな子供のために……」
「え」
「アンタさえいなければっ」
令嬢の言葉に思考がフリーズした俺に、白い手が振りかぶられる。
あ、打たれる
認識し衝撃を待ったが、それが訪れることはなかった。
「ヒステリックなババアの声は聞くに耐えねぇなぁ」
細くてハスキーな耳に残る綺麗な声
「クソビッチが被害妄想で喚き散らす様はいつ見ても滑稽で笑える」
が、とんでもない暴言を吐いた。
(……女?いや、背が高いし声も低い、……男か?どっちかわかんないけど、そんなことより)
銀色の絹糸のような長髪、アメジストのように上品に光る紫眼、真っ白な肌に小さな唇の紅が浮かぶ。すらっと伸びた長い手足に、全てのパーツが完璧に配置された小さな頭がちょこんと乗っている。
(こんな美しい人間、見たことない)
酷い暴言を吐かれたにも関わらず、令嬢も見惚れて頭がフリーズしているのだろう、言葉が出てこない。
「なあ、俺嫌いなんだよ。頭お花畑で馬鹿みたいにキャンキャンさわぐ雌犬も、諦めたふりして可哀想な自分に浸ってる駄犬も。くだらねぇ、どっちも殺してやりたくなる。」
鋭い言葉が胸に刺さる、侮蔑の眼差しに背筋がヒヤッとする感覚。この人は本当に俺たちを殺せるんだろう、殺意に満ちた憎悪を感じる。
「………………俺は……駄犬じゃねぇ」
冷や汗をかきながらなんとか言葉を発する。言い返されたことに驚いたのか、綺麗な眉がピクッと動く。
「ふ~ん、まあ確かにただの馬鹿犬ではないか、…………ちゃんと牙を隠し持ってる」
美人はニヤッと美しい顔を歪めて意地悪に笑った、それでも少しも醜くならないのは何故なのか。
声を顰めて俺の耳元で囁く。
「ここぞと言う時まで隠しておけよ、……お前の価値はお前が示すんだ」
美人は令嬢を引きずるように庭を離れ、喚く女の声が遠ざかる。
あの人は……
「ユウっ!」
「え、ジェード?」
ジェードが遠くから駆けてくるのが見える。
「揉めてるのが見えて、何があった?怪我はしてないか?」
「大丈夫、なんか口の悪い美人が助けてくれた、多分?」
「多分ってどう言うことだ?」
「……」
あの人は気づいてる、けどそれを誰かに言うつもりはないのだろう。
(諦めたフリして可哀想な自分に浸った駄犬か)
「自分の価値を示す…」
美人の言葉は美しい薔薇のように脳裏に鮮やかに残り、その棘がチクリと胸に刺さった
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