緋色の小刀-ナイフ-

八雲 銀次郎

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廃洋館

#10

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 生駒さん宅を出た頃には、日もだいぶ傾いていた。
 改めて、礼を言い、車に乗ろうとした時だった。
 「お前さん、気を付けなさい。」
 生駒さんは、私にしか聞こえない様な声で、そう呟いた。
 「え?そうれはどういう…。」
 「そのままの意味ですよ。お気を付けて…。」
 何か、深い意味がありそうな気がしたが、ロケの時間も迫っていたことから、それ以上、言及することなく、その場を後にした…。

 「生駒さんが言っていたことは、本当なんでしょうかね…。」
 途中コンビニで買った、菓子パンを夕食代わりに、車中で食べていた時、大谷が、口を開いた。
 「ん~。私も、産まれてから、今の今まで、この市に住んでいるけど、そんな話は、聞いた事なかったね…。」
 「それを、いまから、確かめに行くんだろ?」
 寺井さんが、そう答えた。
 「そうですけど、実感がわかないんですよね…。」
 「それが、“噂”の根源だろ。それに、煙を立たせるか、それとも、消えさせるかは、俺達、の仕事だろ。」
 吸っていた煙草の煙を、窓から、外に吐きだした。
 「ん?それって…。」
 大谷が、何かに気が付いた様だった。
 「そうだ。さっきの爺さんの話が、本当なら、40年前、警察や、地元議員だけでなく、俺たちの様な、メディアの人間も、携わっている可能性が、高い。
 そうなったら、俺たちは、大先輩方に、喧嘩を売る様な、真似になっちまうかもな。」
 それは、流石に、マズい…。喧嘩を売る事自体は、正直、どうでもいいが、取材やロケ、その物が握りつぶされかねない…。そうなれば、今回のロケ費用が、全て 無駄になってしまう。
 「一応、プロデューサーには、連絡入れた方が、良いんじゃないですか?」
 私の提案に、大谷も、首を縦に振った。だが、寺井さんの答えは、違った。
 「その必要は、無いと思うぜ。あの人は、今年で、46歳だ。しかも、長年、この業界にいる、ある意味、大御所だ。あの人レベルが、この手の話を知らない筈がない。だから、今回の件は、プロデューサーに、一杯食わされている可能性が、あるな…。」
 もし、そうだとしたら、今回のロケは、プロデューサー個人の企画に近い可能性も高い…。
 何のために、例え、“知らなかった”言い張ったとしても、オンエアされることは、先ず無いに等しい。
 今回の企画その物が、無駄になる可能性が高いのに、何故、私たちを、ロケに送り出したのか…。
 そうこう考えている内に、車は、例の洋館の前に辿り着いてしまった。
 昼の時とは違い、驚ろ驚ろしく、不気味な、雰囲気を放っていた。
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