探偵注文所

八雲 銀次郎

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ファイルⅢ:行方不明調査

#9

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 拠点に着いた頃には、日が沈み始めていた。この日、他の地点でも隊長が一人、戦死したらしく、二人の名前が、読み上げられた。だが、その隊に所属していた、仲間の名前は呼ばれることは、なかった。
 あたりは暗くなり、シャワールームで、汗と血を洗い流した。アキラがシャワー室を出ると、リュウが一人、焚火をしていた。どうやら、米を炊いている様だった。彼とチームを組んだのは、今日が初めてだったが、共に生き残ってしまった。彼女は近くにあったレンガを手に取り彼の元に歩み寄った。彼の隣にレンガを置き、その上に座った。
 「いーれーて。」
 彼は無言のままだった。無口なのは知っていたが、完全に無視されると、癪だ。だから、頬っぺたを抓ってやった。すると、少し驚いた様な顔で、こちらを見つめていた。それが可笑しくなり、アキラが笑い転げた。
 「構って欲しいなら、他の女子の所行けよ…。」
 彼が不機嫌そうに言った。戦場の時とは違い、口調が幾らか、柔らかい。
 「ごめんごめん!コーヒー持って来てあげるから!」
 そう言い、彼女はテントの方へ行った。お湯を分けて貰い、コーヒーの粉を溶かした。 インスタントではあるが、このメーカーの物は格別だった。彼の元に向かうと、手の平を見つめていた。覗き込むと、小さいボタンが三つあった。
 「何?それ。」
 「アーサー、シン、アレックスが生きていた証。」
 彼らは、あの爆破した装甲車で、一緒に戦地に向かった、同期。どうやら、迷彩服の袖口のボタンらしい。よく見ると、ボタンの穴に、それぞれ、三人の髪の毛が巻き付けられている。それを、脇に置いていた、水筒に入れた。どうやら、水筒の中には、沢山そのボタンが入っているらしい。
 「そんなの集めて、どうするの?」
 「…分からない…。でも、生き延びた者の、使命だと思う。」
 米が炊けたのか、飯盒を取り出した。しかし、蓋を開けて出てきたのは、ただのお湯だった。余る様だったら、幾らか貰おうと目論んでいた、彼女だったが、失敗に終わった。
 そのお湯に、一切れのジャーキーを千切って入れ、また火に掛けた。
 「ねぇ、何作ってるの?」
 「スープ。」
 「私も飲んで良い?」
 「図々しい奴だな…。」
 「いいじゃん。」
 彼の腕を掴み、左右に揺すった。彼が持っていた、コーヒーカップも左右に揺れる。彼は鬱陶しがる様に、了承した。
 「リュウ君!ありがとうね!」
 他で焚火をしていた女子グループが、叫んだ。彼は無言のまま、右手を挙げた。
 「何かあったの?」
 「別に。」
 
 彼からもらったスープは、それほど美味しい物ではなかったが、腹は満たされた。コーヒーカップを洗い、テントの戻る途中、先程の女子たちが、何やら盛り上がっている。
 こちらに気付くと、更に話が大きくなる。そのうちの一人が、こちらに近付いてきた。
 「アキラも、リュウ君狙いなの?」
 「は?」
 「またまた~。隠さなくても良いって。」
 「狙いって何?何の話?」
 二人ともポカンとした顔で、見詰め合った。
話を聞いたところ、彼は、食料品や支給品を分け与えているらしい。それだけでなく、夜間の見張りも、こっそり変わってくれているらしく、この拠点内の女子達には人気らしい。
 アキラは最近、配属されたばかりで、そんなこと、初耳だった。
 「菩薩みたいな人ね。」
 「そうそう。寡黙であまりしゃべらないけど、訓練では常にトップだし、戦わせれば強い。文句なしよ。」
 「さっきも、ご飯分けてくれてね。」
 さっきも?あれ?支給される食糧は、纏めて一週間分。足りなければ、月に二度、支給される保存食を、うまく切り崩して、食べるのがここの常識。
そういえば、彼の近くには、食器が一切なかった。さらに、スープに使った食材は、全て、保存食だった。
「分けてくれたって、どのくらい?その間、彼は何食べてるの?」
嫌な予感がした。
「あの量だと、一日分かな?同じような量、他のグループにも分けてたね。大体、いつもは、スープ作ってるみたいよ。」
ここに戻ってきて、結構な時間が経っている。てっきり、彼も食べたと思っていた。そして、あの一切れのジャーキー。アキラが食べたいと、言った直後、残りも全て投入していた。クラッカーや水、スープの粉も全て足していた。そして、その食料達が届くのは、明後日。普段から分けているとなると、明日一日、足りない。
 「そう言えば、彼、コーヒーだけ飲めないみたいで、保存食で唯一、コーヒーの粉だけ分けてくれるんだよね。」
 
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