探偵注文所

八雲 銀次郎

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ファイルⅢ:行方不明調査

#13

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 山道を車で走る事数十分。舗装された道路はなくなり、砂利道に変わった。
 土屋が運転するミニバンが、その悪路を切って進む。
 追っているカラスの群れが、次第に多くなっている。
 「流石に多いと、喧しいな…。」
 「カラスに地形調査させるって、漫画の世界ですか。」
 しばらく走ると、小さな小屋に辿り着いた。
 小屋と言っても、ほとんどが朽ち果て、原形もはやない。車を降り、小屋の周りを一周する。特に変わった所は一つもない。
 中には、古い農作業用の道具が置かれている。だが、一つだけ、不自然なところがあった。
 床の一部だけ、草が生えていない。丸く形取られた様に、地面が露わになっている。
 円の直径は六十センチほど。この様子だと、最近まで、置かれていた様だが、今はない。
 この大きさの物は、幾つか思い当たるが、近くに落ちていた、錆びた鉄の粉で分かった。
 「ドラム缶だ。コージ、昨日調査した崖の付近で、ドラム缶は見なかったか?」
 「登るので、精一杯だったので、覚えてないです。」
 「じゃぁ、ここから一番近い場所は?」
 「位置的に、この斜面の下ですね。」
 「案内してくれ。」

 ある少女が、行方不明になってから、もう五年が経過していた。当時中学に通っていた、その娘は、お昼の時間に、忽然と姿を消した。
 当時警察も総出で探したが、見つからなかった。
 その子の事について、天木たちは調べていた。
 そして、日下部がホームズに入って、最初の調査案件。あのコインは、その調査の唯一の手掛かり、五年も持っていたとは思わなかった。
 当時、天木は事件の事は知って居たが、違う捜査の最中だった。そのお陰で、当時手伝うことはできなかった。
 あの事件の調査中、リューは今回同様に、怪我をし、一時は生死を彷徨った。
 似すぎている。今まで、色々な事件の捜査や依頼を請け負ったが、ここまで似たよう状況になるのは、初めてだ。
 『アマキちゃん、やっぱり駄目だった。当時の事覚えている人はほとんど、居なかった。』
 明日香からの連絡だった。彼女には、当時のその子が通っていた中学を当たって貰っていた。
 まぁ、五年も経過すれば、当然か…。
 「そうだよね…。」
 『でも、分かった事は、幾つかある。その子、虐待されて居たんじゃないかって、噂があったらしいよ。親は否定していたみたいだけど…。』
 「虐待?」
 そんなこと、報告書には書かれていなかった。今でも覚えているという事は、当然リューも知って居たはず。
 噂とは言え、そんな大事なことを書かないはずがない。
 『それと、その子、双子の妹が居たみたいよ。名前は…。』

 昼前とは言え、夏に近付くこの時期は、既に、気温が三十度を超えていた。
 日下部たちが倒れていた現場近くに、柏木たちは居た。
 彼らは暴力団絡みの事件に向かった。その事件の内容は、宮間も知らなかった。
 その聞き込みの為、他の刑事たちも、規制線の中や、周りをうろちょろしている。
 「この近くの暴力団と言えば、あそこしかないよね。」
 「怖いですが、行くしかないですよね…。」
 柏木の質問に京子が怯えた様に、答える。見つめる先のビルには、“緑流会”の文字が見える。いくら刑事とは言え、暴力団の事務所に乗り込むとなると、気が気でない。
 ビルの二階に進み、ドアの前で、先行していた秋山が止まった。
 「少々お待ちを。」
 そう言い、躊躇うことなくドアを開け、中に入って行った。単独で…。
 それと同時に、ドアの向こうからは、怒号や何かが割れる音、倒れる音が響き渡った。
 「ちょ、秋山さん!」
 「危ないから!」
 柏木に腕を掴まれ、止められる。その間に静かになった…。
 ゆっくりとドアが開き、秋山が顔を覗かせる。
 「安全になりましたので、お入りください。」
 言われた通り、中に入ると、見た目が怖い男性が三名、正座していた。棚や机、花瓶などが散乱しており、その中に二人ほど、伸びている…。
 正座している男性たちも、顔に痣や傷ができている。
 一方、秋山の方は、右腕に、掠り傷を作った程度で、至って平気そうだ。
 「すいやせん、まさかリューさんの御仲間とは露知らず…。」
 その間に、鈴夏が、倒れている二人を引っ張り出し、ソファに横にさせる。
 「ごめんね、話聞きに来ただけだから。」
 柏木が申し訳なさゼロの顔で、謝罪する。
 「察してはおります。リューさんの話でございますよね。」

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