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ファイルⅢ:行方不明調査
#14
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「何か知ってるの?」
柏木が、彼らの前にしゃがみ込み、訊ねた。
「いや、さっきも警察が色々聞きに来たんで、もしやと思いまして…。」
「確かに昨日、ひと悶着やってましたが、リューさんが来てくれて、その場を収めてもらいやした。」
「ひと悶着?」
京子が、聞き返す。今更だが、この人たちは日下部たちを暴行した犯人ではない…。
「大したことはねぇんですが、変なスーツ着た連中に、因縁付けられまして…。
なんでも、キャバ嬢の居場所教えろだとかなんとか…。」
「それで、知らねぇって言ったんですが、急に殴られて…。」
揉めていた所を、日下部たちに止められた…。まぁ、彼らの日常と言えば日常なのかもしれない…。
だが、そうなると、辻褄が合わない。彼らの話からして、相手はそれほど喧嘩に強いわけではなさそうだ。それなのに、日下部たちが、気を失う程の怪我を負った。
「あれ?」
考え直すと、不自然な事に気が付いた…。
「クドーさんも気が付いた?」
「はい。時間軸が可笑しくないですか?
もし、揉めている所を通報されたのなら、日下部さん達より、警察の方が速い。なのに、警察にはそんな通報入っていません。」
「そうなると、ホームズに直接通報したことになる。しかも、事件が起きる前に…。」
警察に通報があったのは、日下部たちが倒れていた時だ。それまでに、誰も目撃者がいないのか?こんな白昼堂々と、他人が気を失う程の暴行…。それは不可能に近い…。
「場所を移動させられている?」
そう呟いたとき、工藤刑事の電話が鳴った。前園からだった。
「はい、工藤で…。」
『日下部竜司が病院から消えた。お前も、一旦病院に戻れ。』
「消えたって、動けたんですか?」
『それを調べてこいと言ってるんだ。また連絡する。』
柏木に声を掛けられるまで、茫然としていた。
「全部聞こえてた、アミちゃんと一緒に行って来て。こっちは、アッキー居ないと、ダメだから。」
「でも、あの怪我で動けたんですかね…。だとしたら、どこに?」
「どこに行ったかまでは、分からないけど、リュー君はそんな簡単にやられはしない…。」
最後に『絶対』と付け足した。念を押している様に聞こえるが、言い聞かせている様にも聞こえる。
「では、行ってきます。」
柏木がこくりと頷く。
工藤刑事が去った後も、更に彼らに聞き込む。
「その因縁?つけて来た人達の名前とか、解ったりする?」
「連中の名前は、分かりませんが、キャバ嬢の名前なら、確か、『みやび』とか言ってたな…。それで、リューさんが、顔色変わったのは覚えてるな…。」
「源氏名ね…。流石に、本名までは知らないよね…。」
諦めかけ、踵を返した。『みやび』その名前に聞き覚えはない。結局、振出…。
「振出…。」
いや、どこかで見た。何かに書いてあった…。どこだっけ…。こんな時、天木なら忘れないであろう…。
「天木…。みやび…。日下部…。振出…。」
思い出した…。あの娘の名前だ…。日下部が初めて調査していた、あの少女行方不明の時の少女の名前だ。
「そう言えば…。」
ソファで横になっていた、男性の一人が声を上げた。
「あの男たち、スーツの胸の所に、バッチしてました。昔の金融会社のロゴマークに似てたな…。名前は確か…。」
「黒沢金融…。」
「そう!姉さん、それです!」
繋がってしまった…。この事件、七年前の時から、始まっていた…。
いや、正確には終わっていなかっただけ…。
『カエデさん!聞こえますか!』
美歌からの連絡だった。とても焦っている様子だ。こちらも慌てて、応答する。
「どうしたの?」
『大変です!ツチヤさんとリューさん、アマキさんと通信が途絶えました!』
「は?」
思わず、素の声が出てしまった。
『コージ君とリョータ君にも連絡取れません。アマキさんは、双子の名前聞いた途端に…。』
「双子?」
『リューさんの初めての調査事件の被害者、“青木雅美”ちゃんには、そっくりな双子の妹が居たんですよ。』
「その娘の名前は?」
『“青木涼子”、ここまで来れば、偶然じゃないですよね?』
柏木が、彼らの前にしゃがみ込み、訊ねた。
「いや、さっきも警察が色々聞きに来たんで、もしやと思いまして…。」
「確かに昨日、ひと悶着やってましたが、リューさんが来てくれて、その場を収めてもらいやした。」
「ひと悶着?」
京子が、聞き返す。今更だが、この人たちは日下部たちを暴行した犯人ではない…。
「大したことはねぇんですが、変なスーツ着た連中に、因縁付けられまして…。
なんでも、キャバ嬢の居場所教えろだとかなんとか…。」
「それで、知らねぇって言ったんですが、急に殴られて…。」
揉めていた所を、日下部たちに止められた…。まぁ、彼らの日常と言えば日常なのかもしれない…。
だが、そうなると、辻褄が合わない。彼らの話からして、相手はそれほど喧嘩に強いわけではなさそうだ。それなのに、日下部たちが、気を失う程の怪我を負った。
「あれ?」
考え直すと、不自然な事に気が付いた…。
「クドーさんも気が付いた?」
「はい。時間軸が可笑しくないですか?
もし、揉めている所を通報されたのなら、日下部さん達より、警察の方が速い。なのに、警察にはそんな通報入っていません。」
「そうなると、ホームズに直接通報したことになる。しかも、事件が起きる前に…。」
警察に通報があったのは、日下部たちが倒れていた時だ。それまでに、誰も目撃者がいないのか?こんな白昼堂々と、他人が気を失う程の暴行…。それは不可能に近い…。
「場所を移動させられている?」
そう呟いたとき、工藤刑事の電話が鳴った。前園からだった。
「はい、工藤で…。」
『日下部竜司が病院から消えた。お前も、一旦病院に戻れ。』
「消えたって、動けたんですか?」
『それを調べてこいと言ってるんだ。また連絡する。』
柏木に声を掛けられるまで、茫然としていた。
「全部聞こえてた、アミちゃんと一緒に行って来て。こっちは、アッキー居ないと、ダメだから。」
「でも、あの怪我で動けたんですかね…。だとしたら、どこに?」
「どこに行ったかまでは、分からないけど、リュー君はそんな簡単にやられはしない…。」
最後に『絶対』と付け足した。念を押している様に聞こえるが、言い聞かせている様にも聞こえる。
「では、行ってきます。」
柏木がこくりと頷く。
工藤刑事が去った後も、更に彼らに聞き込む。
「その因縁?つけて来た人達の名前とか、解ったりする?」
「連中の名前は、分かりませんが、キャバ嬢の名前なら、確か、『みやび』とか言ってたな…。それで、リューさんが、顔色変わったのは覚えてるな…。」
「源氏名ね…。流石に、本名までは知らないよね…。」
諦めかけ、踵を返した。『みやび』その名前に聞き覚えはない。結局、振出…。
「振出…。」
いや、どこかで見た。何かに書いてあった…。どこだっけ…。こんな時、天木なら忘れないであろう…。
「天木…。みやび…。日下部…。振出…。」
思い出した…。あの娘の名前だ…。日下部が初めて調査していた、あの少女行方不明の時の少女の名前だ。
「そう言えば…。」
ソファで横になっていた、男性の一人が声を上げた。
「あの男たち、スーツの胸の所に、バッチしてました。昔の金融会社のロゴマークに似てたな…。名前は確か…。」
「黒沢金融…。」
「そう!姉さん、それです!」
繋がってしまった…。この事件、七年前の時から、始まっていた…。
いや、正確には終わっていなかっただけ…。
『カエデさん!聞こえますか!』
美歌からの連絡だった。とても焦っている様子だ。こちらも慌てて、応答する。
「どうしたの?」
『大変です!ツチヤさんとリューさん、アマキさんと通信が途絶えました!』
「は?」
思わず、素の声が出てしまった。
『コージ君とリョータ君にも連絡取れません。アマキさんは、双子の名前聞いた途端に…。』
「双子?」
『リューさんの初めての調査事件の被害者、“青木雅美”ちゃんには、そっくりな双子の妹が居たんですよ。』
「その娘の名前は?」
『“青木涼子”、ここまで来れば、偶然じゃないですよね?』
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