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ファイルⅢ:行方不明調査
#22
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「ヤラ…。」
日下部にヤラと呼ばれた、大男は、威圧感が凄まじい。睨んでこそは居ない物の、眼光だけで、殺されそうだった。
「懐かしの再開が、こんな形とはな。」
「リュー、知り合い?」
「昔、軍隊に居た時の。隊は違うが、訓練はよくやっていた。」
体力が回復したとはいえ、怪我が治ったわけではない。この大男相手にどれだけ、時間稼ぎできるか解らないが、今はやるしかない…。
身長は、二メートルはあるんじゃないだろうか…。
取り敢えず、一本、顔面目掛けて、回し蹴りを入れた。渾身の力を込めたつもりだったが、たやすく防がれてしまった。
軸足を離し、両足で挟む様にもう一本回し蹴りを食らわせた。
防がれはしなかったものの、効いていない。
それと、両足が離れた時点で、こちらの負けだった。ヤラが挟まれている方の腕を、振り下ろす。
そのままの勢いで、コンクリートの地面に叩きつけられた。
脳が揺れる感覚がする…。おまけに、傷口が開いたのか、目の前に、血が飛び散った。
「まさか、“竜王”と呼ばれたお前が、こんなすんなり終わるとはな…。」
身体が動かない。腕が上がらない。無理矢理動かそうとすれば、骨や筋肉が軋んだ。口の中は、錆びた鉄の様な味がする。頭や裂けた皮膚からは生暖かい液体が流れている。呼吸するので精一杯だった。
この汚いコンクリートの床で、息が途切れ途切れになっているのは、俺だけじゃない。
あの日下部竜司の班が、全滅している。
「威勢が良かった割には、意外とあっけなかったな。
あれから七年経ってるってのに、全然変わらねぇな。」
何か答えようとしたが、声が擦れて真面な言葉が出てこない。
「リュー!もう動かない方が良いって…。私は大丈夫だから…。」
いつの間にか、天木が捕まっていた。
嘘なのは知って居る。後ろで縛られている彼女の手が震えている。殴られたのか、左の頬だけ赤くなっている。早く、助けなければ…。どうやって…。
「涼子ちゃんもこういってることだし、ぐっすり眠りな。」
そう言って、やつらはここを出て行った。去り際に、仲間の一人が、指を踏み付けて行った。
何かが、ぶつかる音がした。日下部の目の前に落ちてきたのは、ペン状の細長い物だった。よく見ると、先端には金属の刃の様な物が付いている。
「誰だ。」
黒沢が、叫んだ先に居たのは、柏木だった。
「君は確か、柏木楓だったかな?」
次の瞬間、懐から取り出した、先ほどのナイフの様な物で、天木を掴んでいた手を引っ掻いた。
だが、ヤラには効かない。
「結構深めに切ったつもりだったけど。」
ヤラは、天木を黒沢に押し付ける様に、預け、血が出ている手の甲を舐めた。
血が出ると言うのは、生物にとっては、危機的な状況に面している。そう言っても過言ではない。
普通の人間なら、焦りを感じるはずだ。だが、日下部とヤラは違った。彼等はとある“衝動”に駆られる。
一瞬のうちに、頭に血が上ったのか、柏木目掛けて、拳を振り下ろした。先ほどの動きとはまるで違う。
ギリギリで、躱したが、片腕だけでは、戦闘には無理だ。
「意外とすばしっこいな。」
「私も元クサカベ班。それなりにこういう状況には、慣れてる。」
「そうか…。」
そう言って、もう一度、拳を振り下ろしたが、秋山がそれを止めた。
「アマキちゃん、証拠、持ってきたよ。」
柏木がチラつかせたのは、一枚のSDカードだった。
「当時の記者だった人から、コピーしてもらった。貴方たちが暴こうとしてた、真実。」
日下部にヤラと呼ばれた、大男は、威圧感が凄まじい。睨んでこそは居ない物の、眼光だけで、殺されそうだった。
「懐かしの再開が、こんな形とはな。」
「リュー、知り合い?」
「昔、軍隊に居た時の。隊は違うが、訓練はよくやっていた。」
体力が回復したとはいえ、怪我が治ったわけではない。この大男相手にどれだけ、時間稼ぎできるか解らないが、今はやるしかない…。
身長は、二メートルはあるんじゃないだろうか…。
取り敢えず、一本、顔面目掛けて、回し蹴りを入れた。渾身の力を込めたつもりだったが、たやすく防がれてしまった。
軸足を離し、両足で挟む様にもう一本回し蹴りを食らわせた。
防がれはしなかったものの、効いていない。
それと、両足が離れた時点で、こちらの負けだった。ヤラが挟まれている方の腕を、振り下ろす。
そのままの勢いで、コンクリートの地面に叩きつけられた。
脳が揺れる感覚がする…。おまけに、傷口が開いたのか、目の前に、血が飛び散った。
「まさか、“竜王”と呼ばれたお前が、こんなすんなり終わるとはな…。」
身体が動かない。腕が上がらない。無理矢理動かそうとすれば、骨や筋肉が軋んだ。口の中は、錆びた鉄の様な味がする。頭や裂けた皮膚からは生暖かい液体が流れている。呼吸するので精一杯だった。
この汚いコンクリートの床で、息が途切れ途切れになっているのは、俺だけじゃない。
あの日下部竜司の班が、全滅している。
「威勢が良かった割には、意外とあっけなかったな。
あれから七年経ってるってのに、全然変わらねぇな。」
何か答えようとしたが、声が擦れて真面な言葉が出てこない。
「リュー!もう動かない方が良いって…。私は大丈夫だから…。」
いつの間にか、天木が捕まっていた。
嘘なのは知って居る。後ろで縛られている彼女の手が震えている。殴られたのか、左の頬だけ赤くなっている。早く、助けなければ…。どうやって…。
「涼子ちゃんもこういってることだし、ぐっすり眠りな。」
そう言って、やつらはここを出て行った。去り際に、仲間の一人が、指を踏み付けて行った。
何かが、ぶつかる音がした。日下部の目の前に落ちてきたのは、ペン状の細長い物だった。よく見ると、先端には金属の刃の様な物が付いている。
「誰だ。」
黒沢が、叫んだ先に居たのは、柏木だった。
「君は確か、柏木楓だったかな?」
次の瞬間、懐から取り出した、先ほどのナイフの様な物で、天木を掴んでいた手を引っ掻いた。
だが、ヤラには効かない。
「結構深めに切ったつもりだったけど。」
ヤラは、天木を黒沢に押し付ける様に、預け、血が出ている手の甲を舐めた。
血が出ると言うのは、生物にとっては、危機的な状況に面している。そう言っても過言ではない。
普通の人間なら、焦りを感じるはずだ。だが、日下部とヤラは違った。彼等はとある“衝動”に駆られる。
一瞬のうちに、頭に血が上ったのか、柏木目掛けて、拳を振り下ろした。先ほどの動きとはまるで違う。
ギリギリで、躱したが、片腕だけでは、戦闘には無理だ。
「意外とすばしっこいな。」
「私も元クサカベ班。それなりにこういう状況には、慣れてる。」
「そうか…。」
そう言って、もう一度、拳を振り下ろしたが、秋山がそれを止めた。
「アマキちゃん、証拠、持ってきたよ。」
柏木がチラつかせたのは、一枚のSDカードだった。
「当時の記者だった人から、コピーしてもらった。貴方たちが暴こうとしてた、真実。」
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