探偵注文所

八雲 銀次郎

文字の大きさ
83 / 281
ファイルⅤ:探し物

#10

しおりを挟む
 どんどん近づき、一台は、アパートの入り口の前に停め、ヘルメット外し、相場さんの部屋に向かった。
 もう一台は私と男を遮る様に停車させた。バイクの車種で、亮太だと分かった。
 「班長、助けに来ました。」
 彼はそう言うと、ヘルメットを取り、バイクから降りた。
 男は多少怯んではいたものの、目つきや顔色は先ほどと、殆ど変わらない。
 「い、痛い目見たくなきゃ、何もしないでくれ!」
 男は震えた声で、そう叫んだ。
 「そう言う訳にはいかない。少しでも罪が軽い方が良いだろ?」
 亮太も譲らない。こういう事態に、陥ったときは、まずは武装解除を促す。言葉で不可能なら、やむを得ず、実力行使で。それが、ホームズのやり方だった。実力行使は、それなりの戦闘技術が無いと、選べない。
 だから、基本はこういう事を見越した上で、人員の選抜をやらなければならない。
 「う、うるせぇ!」
 何を血迷ったのか、男はナイフを突き立てたまま、亮太に襲い掛かった。
 しかし、ナイフは気付くと、男の手を離れ、宙を舞った。
 亮太の回し蹴りが、手中にあったナイフだけを当て、弾き飛ばしていた。
 実の所、彼が来た時点で、この勝負、あの男の負けだ。浅野亮太。プロファイラーでありながら、日下部を除き、ホームズ一、喧嘩が強い。
 実際、カシワギ班が出来る前は、日下部班の副班長をやっていた。
 男は、それでも怯まず、今度は拳を握っていた。何が男を駆り立てているのか…。

 すると、鼻に何か付く様な匂いがした。ほうじ茶の様な、独特な香ばしい香り…。
 「リョータ君、ガンジャ!」
 「了解!」
 そう叫ぶと、男に強烈なボディブローを入れた。男はスイッチが切れた様に、大人しくなり、倒れ込んだ。
 ガンジャ…大麻の隠語。
 ナイフや暴行での障害なら、私たちのさじ加減で、どうにでもできるが、薬物の乱用となれば、実刑は間逃れない。そのため、錯乱している状態で、取り押さえが困難と判断した場合、行動不能にさせるのが、ウチのやり方だ。
 「いつまで座ってるんですか…。」
 亮太が手を差し出してきた。取り敢えず礼を言い、立ち上がった。
 すると、部屋の方から、相場さんとは違う悲鳴が聞こえた。
 「どうやら、向こうも終わったみたいですね…。」
 
 工藤刑事が来るまでは、さほど時間は掛からなかった。警察が現場検証もろもろしている間、相場さんは一応と言う事で、病院に搬送されていった。
 私たちは、軽い事情聴取をそれぞれされた。
 
 川村は、4月の中頃に隣に移り住み、常に相場さんの行動を、観察していたらしい。
 アパートの入り口に近づかずに、彼女の部屋に侵入で来たのは、そう言う事だった。
 「しかし、不思議なんですよね…。あの川村って女、交渉中に急に耳押さえて悲鳴上げだしたんですよね…。」
 彼女がパトカーに乗せられるとき、こっそりと匂いを嗅いだが、薬物らしい匂いはしなかった。目つきは、完全に精神がやられていた人のそれだった。
 抑えていた方の耳には、盗聴器の音声を聞くためのイヤホンをしていたらしい。
 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。 カレンと晴人はその後、どうなる?

改大和型戦艦一番艦「若狭」抜錨す

みにみ
歴史・時代
史実の第二次世界大戦が起きず、各国は技術力を誇示するための 「第二次海軍休日」崩壊後の無制限建艦競争に突入した 航空機技術も発達したが、それ以上に電子射撃装置が劇的に進化。 航空攻撃を無力化する防御陣形が確立されたことで、海戦の決定打は再び「巨大な砲」へと回帰した。 そんな中⑤計画で建造された改大和型戦艦「若狭」 彼女が歩む太平洋の航跡は

滝川家の人びと

卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。 生きるために走る者は、 傷を負いながらも、歩みを止めない。 戦国という時代の只中で、 彼らは何を失い、 走り続けたのか。 滝川一益と、その郎党。 これは、勝者の物語ではない。 生き延びた者たちの記録である。

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

25年目の真実

yuzu
ミステリー
結婚して25年。娘1人、夫婦2人の3人家族で幸せ……の筈だった。 明かされた真実に戸惑いながらも、愛を取り戻す夫婦の話。

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

処理中です...