探偵注文所

八雲 銀次郎

文字の大きさ
上 下
96 / 281
ファイルⅥ:詐欺捜査

#11

しおりを挟む
 真田さんの通っている高校にやってきた。勉強だけでなく、部活動も盛んらしく、入り口の脇に、活躍を示す看板が幾つもあった。
 担任の教師は、柔道部の顧問だったらしく、柔道着のまま、応接室に出向いてくれた。
 適当に理由を説明し、真田さんの素行を伺う事にした。
 「真田さんは、とても良い子ですよ。成績は、個人情報の為言えませんが、至って普通の女子生徒ですよ。」
 聞くところ、それ程悪い印象がある生徒でもないらしい。性格はとても穏やかで、誰とでも仲良くできるらしい。
 「ここ最近、何か変わった事はありませんでしたか?」
 「特にそのようなことは…。」
 そう呟きながら、顎に手を置き、考えこんでいる様だ。
 「何かあるんですか?」
 美歌が訊ねた。
 「いえ、大したことは無いんですが、彼女、今年に入って、ボランティア活動やり始めたんですよね…。」
 「ボランティアですか?」
 ボランティア活動をしている高校生は、それ程珍しくはないが、内容にもよる。
 実際、俺はそう言うのに疎いが、遊びたい盛りの花の高校生が、そんなイベントに参加したがるものだろうか…。
 「えぇ。近所の児童養護施設に月に何度か、顔を見せてるらしいです。」
 児童養護施設…。世の中は最近、幼児虐待やネグレクトなどに敏感になってきた。そのため、そのような施設は、ここ数年で更に増えてきている。
 俺は、物心がついた頃には、既に名前も国籍も戸籍もなかった為、そんな施設に入る事も出来なかった。
 だからと言って、羨ましいとは思わない。俺は幸い、親の名前も顔も、声も知らない為、虐待の様な、精神的な苦痛を与えられたことはない。
 それより、もっと辛い環境で育ってきたが、幼かった俺にとって、それが俺の世界だったから、酷いとは思わなかった。
 「真田さん、部活とかやっていないんですか?」
 「高校入ってからは、やっていないみたいだね。中学生の頃は、吹奏楽やってたみたいだけど…。」
 日本の部活にも疎いが、吹奏楽部と言えば、サッカー部や野球部に並ぶ、花形の部活だと聞いた。
 それほど人気のある部活を辞めてしまったのだから、それなりの理由があるはずだ。
 「あの子は本当に優しくて。正義感も強いから、生徒だけでなく、他の教師からも、結構人気があるんですよ。
 かくいう私も、色々と助けられることが多くて…。」
 「なるほど、分かりました、では最後に一つだけ…。」

 その後、俺たちは例の児童養護施設に向かった。場所は、学校から一キロ程離れた場所だった。
 近くには公園、警察署、小・中学校ととても治安が良さそうだ…。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

【完結】私がいなくなれば、あなたにも わかるでしょう

nao
恋愛 / 完結 24h.ポイント:14,310pt お気に入り:934

青春再見

青春 / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:1

しがらみ

青春 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

義妹たちの為ならば!

青春 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

沢田くんはおしゃべり2

青春 / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:31

幼馴染がそんなに良いなら、婚約解消いたしましょうか?

恋愛 / 完結 24h.ポイント:19,459pt お気に入り:3,529

貴方達から離れたら思った以上に幸せです!

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:201,584pt お気に入り:12,081

処理中です...