探偵注文所

八雲 銀次郎

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ファイルⅨ:人質事件

#8

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 人質を取ることに、意味がある。京子さんの言葉を、思い浮かべ、私なりに考えていた。
 たとえ、深い意味があろうと、人質を取ることは、犯罪であることには、変わりない…。
 人に危害を加えることが、目的ならば、こんなに大事にする必要はない…。
 だが三嶋は、人質事件という、かなり凶悪な事件を起こした。初犯とはいえ、実刑は免れない…。
 ますます、三嶋の目的が分からなくなってきた…。

 私が悩んでいると、黒色のワンボックスカーが、規制線の中に侵入し、六輪車の後方に駐車した。
 「あれ?マキさん?」
 運転席から降りてきたのは、白衣を着た、ショートヘアの女性だった。ただ、異様だったのは、手に持っていた、煙管だった。

 私が、非喫煙者だから、というわけではなく、ただ単純に、物珍しかった。
 実父どころか、祖父が使っている所も、見たことが無い…。
 「秋山君が、今手が離せないらしいから、私が代わりに来たの。」
 駆け寄って行った、京子さんに、向かってそう言った。
 私も彼女に近づこうとした、その時だった。眉間を貫く様な、匂いが鼻に飛び込んできた。
 ミントの様なその匂いは、やがて眼にまで届き、瞬きと、涙の量が一段と増えた。
 そのお陰か、今まであった、緊張と疲労からくる、眠気が、完全に吹き飛んだ。
 「あら、貴女には、ちょっとキツかったかしら?」
 煙管の女性が、私の顔を覗き、そう言ってきた。
 「あ、あの、何なんですか?この匂い…。」
 「これは、エッセンシャルオイルの、“ウィンターグリーン”の匂いよ。」
 京子さんが答えた。
 「エッセンシャルオイル?」
 今度は、煙管の女性が、語りだした。
 「いわゆる、アロマオイルよ?ウィンターグリーンっていうのは、湿布の匂いの主成分に使われてる物。どう?眼が覚めたでしょ?」
 湿布の匂い…。そう言われると、確かに湿布だ。眼にまで届く、この匂いは、眠気まで、覚ましてくれる。それは良いのだが…。
 「その匂い…結構キツいです…。」
 私のその発言に、煙管の女性が、クスクスと笑いだした。
 「私の作るアロマオイルは、疲れてる人に一番効くようにしてあるからね。ちゃんと、夜は寝た方が、自分の為よ?」
 彼女は、そう言うと、持っていた、クリアファイルを、京子さんに手渡した。
 「東京都内を中心に、銃火器の密輸を行ってる、組織やマフィア系のグループ、ピックアップしてある。後は、そっちに任せて良い?これから、楓ちゃんの、お守りしに行かなきゃならないから。」
 更に、私の方に顔を向けた。
 「榎本真紀。後は、ウチの班長から、色々聞いてね?」
 そう言い残し、足早に車にもどって行った。
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