探偵注文所

八雲 銀次郎

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ファイルⅪ:先手必勝

#13-1

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 彼と出会ったのは、私がまだ大学生だった頃、通学途中の、地下鉄のホーム内だった。最近よく同じ時間帯に鉢合わせる、学ランを来た彼だった。顔も、うろ覚えで、分かるのは、彼のシルエットだけだった。
嫌でも覚えた理由は、彼の電車の待ち方にあった。彼は、小説を読むが如く、雑誌を食い入る様に読んでいた。それも、偏ったジャンルではなく、変則的な、ジャンルだ。ファッション雑誌は勿論。カー雑誌。グルメ雑誌。時には、年齢に似つかわしくない、ギャンブル雑誌など、様々だった。
 最初こそ、気には留めていなかったものの、遭遇する機会が増えれば、当然、次第と興味が湧いてくる。それが、当時の私の、毎朝の、密かな楽しみだった。
 数多くある、本や冊子の中で、“雑誌”と言う、物が好きなのは、結構珍しい…。
 それ程、“雑誌”が好きなのか…。一度、そう訊ねようとしたが、無理だった。
 そして彼は、ある日を境に、同じ時間帯の電車に乗ることは、無くなってしまった。
 顔立ちは、良かったものの、見るからに中学生だったし、家庭の事情や、部活の朝練等で、登校時間が変わったり、利用する路線が変わったりがあると、独りで、勝手に見切りをつけた。
 更に月日は流れ、丸2年が経った、ある日、彼は動物雑誌を、片手に、私の前で、次の列車を、待っていた。当時私は、大学を当の昔に卒業し、財務省で、働き始めていた。
 少し、大人びているが、顔立ちや、シルエットなどは、全然変わっていない。唯一変わっていたのは、首からチェーンで、ネックレスの様にかけていた、二つあった筈のリングが1個無くなっていたことだ。
 「お姉さん、まだこの路線使っていたんですか?」
 暫く見詰めていたら、彼の方から話しかけて来てくれた。
 「ふぇ?」
 あまりにも唐突だった為、思わず、素っ頓狂な声を出してしまった。 
 それより、彼が私の事を、覚えていたことに驚きだった…。
 「ま、まぁ、大学と就職先、殆ど同じ方面ですから…。と、と、と言うより、貴方の方こそ、私の事、覚えていたんですか?」
 変に上ずりながらも、彼の問いに何とか答え、更に、質問を投げかけた。
 「その黒髪ロング、なかなか忘れませんよ。前は、毎朝綺麗な髪だなって、思っていました。」
 そう言いつつも、雑誌から目を逸らすことなかった。
 中学生にしては、かなり口の利き方は丁寧だ。それより、女性の覚え方が、何とも、癖がありそうだ…。
 「ふ、ふ~ん…。それと、前から聞きたかった事、聞いて良い…ですか?」
 「どうぞ?」
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