273 / 281
ファイルXV:奪還作戦
#25
しおりを挟む
折られた切先は床に落ち、道場に甲高い金属音が響いた。それと同時に出雲は膝から崩れ落ちた。
「わ、私居合術にはそんなに詳しくないけど、刀ってあんな簡単に折られて良い物なの?」
石井のその言葉に、河辺が答えた。
「簡単じゃねぇだろ…。現在の居合道は対人相手の実践は行わない。相当な手練れでも、100%事故が起きないとは言い切れないからな。
だから、試し斬りなんかでは、巻き藁なんかを使ってる。
だが、あいつがやっていたのは、居合じゃねぇ。完全に、実践向けの抜き方だ。」
「実践向け?」
「居合術は、別名抜刀術とも言われているくらいに、鞘から刀身を抜くことに技があると考えられた武術だ。だから、“斬る”というよりは、刀身を抜くことに業を使う。
だが、あいつが最初に見せたのは、刀を抜いたというよりは、鞘を“引いた”に近い。
それによって、出雲よりも数段早い段階で刀身を露わにし、太刀筋を見定め、刀の弱点を一気に斬り込み、刀に致命傷を与えた。
それだけでもかなりすげぇが、出雲が暴走したときの方が、もっとすげぇ。何せ、一度罅を入れた場所に、寸分の狂いもなく、刃先を当てて、そのまま斬りつけた。
才能や技術でどうにかなるレベルじゃねぇ…。おそらく、俺らじゃぁ想像もつかない程の鍛錬と実践を経験してきたんだろうな…。男の俺でも、惚れそうだ…。」
河辺の説明は、なんとなくだが理解はできた。だが、目の前に居る久本と言う男が、最初に会ったときとは、全く違う顔つきだった。そんな彼は、またも刃先を確認し、納刀した。
「刃毀れなし。」
そう呟くと、折れた刀の切先を持ち上げた。
「すまねぇ組長さん、鈍どころか圧し折っちまった…。これだから、ヤクザは好きじゃねぇんだ。どいつもこいつも、焦ると血が上る…。折角の名刀も簡単に台無しにしやがって…。」
「お前の親父も同じこといってたな…。懐かしい…。」
敷島は折れた切先を受け取った。
「出雲!お前が言い出したことだ、このケジメはしっかりしろよ!」
だが、出雲は刀を折られたことが、相当ショックだったのか、声も出さず頷くだけだった。
「まぁそう言うことだ。柿崎、後で他の刑事も呼んで来い、クラブ・ジョーカーのアジト捜索に手を貸す。それ以外に必要な情報があれば連絡くれ。」
「あぁ、わかった。引き上げるぞ、お前ら。」
久本は、借りた刀を元の位置に戻した。そして、こちらに向き直った時には、顔つきはここに来た時と同じに戻ってしまった。
「ヤバい…。めっちゃカッコいい…。」
石井がそう呟いた瞬間、他の3人の刑事はかなり驚いた表情をした。
「わ、私居合術にはそんなに詳しくないけど、刀ってあんな簡単に折られて良い物なの?」
石井のその言葉に、河辺が答えた。
「簡単じゃねぇだろ…。現在の居合道は対人相手の実践は行わない。相当な手練れでも、100%事故が起きないとは言い切れないからな。
だから、試し斬りなんかでは、巻き藁なんかを使ってる。
だが、あいつがやっていたのは、居合じゃねぇ。完全に、実践向けの抜き方だ。」
「実践向け?」
「居合術は、別名抜刀術とも言われているくらいに、鞘から刀身を抜くことに技があると考えられた武術だ。だから、“斬る”というよりは、刀身を抜くことに業を使う。
だが、あいつが最初に見せたのは、刀を抜いたというよりは、鞘を“引いた”に近い。
それによって、出雲よりも数段早い段階で刀身を露わにし、太刀筋を見定め、刀の弱点を一気に斬り込み、刀に致命傷を与えた。
それだけでもかなりすげぇが、出雲が暴走したときの方が、もっとすげぇ。何せ、一度罅を入れた場所に、寸分の狂いもなく、刃先を当てて、そのまま斬りつけた。
才能や技術でどうにかなるレベルじゃねぇ…。おそらく、俺らじゃぁ想像もつかない程の鍛錬と実践を経験してきたんだろうな…。男の俺でも、惚れそうだ…。」
河辺の説明は、なんとなくだが理解はできた。だが、目の前に居る久本と言う男が、最初に会ったときとは、全く違う顔つきだった。そんな彼は、またも刃先を確認し、納刀した。
「刃毀れなし。」
そう呟くと、折れた刀の切先を持ち上げた。
「すまねぇ組長さん、鈍どころか圧し折っちまった…。これだから、ヤクザは好きじゃねぇんだ。どいつもこいつも、焦ると血が上る…。折角の名刀も簡単に台無しにしやがって…。」
「お前の親父も同じこといってたな…。懐かしい…。」
敷島は折れた切先を受け取った。
「出雲!お前が言い出したことだ、このケジメはしっかりしろよ!」
だが、出雲は刀を折られたことが、相当ショックだったのか、声も出さず頷くだけだった。
「まぁそう言うことだ。柿崎、後で他の刑事も呼んで来い、クラブ・ジョーカーのアジト捜索に手を貸す。それ以外に必要な情報があれば連絡くれ。」
「あぁ、わかった。引き上げるぞ、お前ら。」
久本は、借りた刀を元の位置に戻した。そして、こちらに向き直った時には、顔つきはここに来た時と同じに戻ってしまった。
「ヤバい…。めっちゃカッコいい…。」
石井がそう呟いた瞬間、他の3人の刑事はかなり驚いた表情をした。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。
カレンと晴人はその後、どうなる?
改大和型戦艦一番艦「若狭」抜錨す
みにみ
歴史・時代
史実の第二次世界大戦が起きず、各国は技術力を誇示するための
「第二次海軍休日」崩壊後の無制限建艦競争に突入した
航空機技術も発達したが、それ以上に電子射撃装置が劇的に進化。
航空攻撃を無力化する防御陣形が確立されたことで、海戦の決定打は再び「巨大な砲」へと回帰した。
そんな中⑤計画で建造された改大和型戦艦「若狭」 彼女が歩む太平洋の航跡は
滝川家の人びと
卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。
生きるために走る者は、
傷を負いながらも、歩みを止めない。
戦国という時代の只中で、
彼らは何を失い、
走り続けたのか。
滝川一益と、その郎党。
これは、勝者の物語ではない。
生き延びた者たちの記録である。
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる