272 / 281
ファイルXV:奪還作戦
#24
しおりを挟む
「ポン刀は本来、打ち合うものじゃない。だから、俺が刀を抜くときは、できるだけ、柔らかく、斬りやすいところを狙う。
ただ、ここまでボロボロだったら、あまり意味がない…。今回はあえて打ち合わせようと試みたが、やはり駄目だったか…。」
久本は一度納めたばかりの刀を、再度抜き出し、刀身を眺めていた。
「…刃毀れなし。腕は、鈍っていなかったな…。」
血振りをし、ゆっくりと納刀するその姿はまるで”侍”のそれだった。
その場に居た人間なら、その立ち振る舞いに、見惚れるなという方が難しいだろう…。何せ、出雲や柿崎はおろか、石井までもが、最後の鍔と鞘が当たる音までに、耳を澄ませていた。
「…はっはっは!」
敷島が豪快に笑った。
「やはり、久本。血は争えないな!」
「やっぱり、“久本一峰”の息子か…。顔も声もそっくりで、最初見たときは驚いた…。」
柿崎まで笑っていた。
「久本一峰?」
石井と林田が首を傾げた。
「あぁ、知らないのも無理はないか…。久本一峰は、居合道の達人だ。
一度刀を抜けば、百人斬り倒すまで、鞘には納まらないという噂もあって、『百斬一峰』や『百斬納刀』なんて、異名もあった。」
「でも、そんな人の事、私聞いたことない。」
「お嬢ちゃんの様に、若い刑事なら聞いたことがないのも無理はねぇ。一峰は、今から15年程前に、持病の悪化で亡くなっちまった。」
「息子が一人居るってのは、聞いたことがあったが、まさかここで会えるとはな…。」
「ということだ。出雲、諦めろ。」
だが、出雲の耳にはその言葉は、届いていなかった。
無理もない。組長の。それも、かなりの名刀を、名も無きボロボロの刀に斬り込まれ、罅を入れられた。彼も、達人の域に達しているわけではないが、かなりの手練れだ。それなのに、ぽっと出の若い男に、ねじ伏せられるなど、理解できなかった。
普段は、参謀として金条組を知恵で支えている出雲だが、やはり彼もヤクザ…。頭に血が上れば、理性を忘れる…。
「うぉぉぉぉぉおおお」
周りが気が付いたときには、出雲は背後から、久本に斬りかかっていた。
「馬鹿が…。」
敷島がそう呟いたときには、出雲の刀は、甲高い金属音を立てて、久本の刀に止められていた。
「納めて下さい。」
久本の言葉は、出雲には届かず、ただただ力任せに、切り伏せようとしていた。
「…仕方ない…。」
よく斬れる刀は、宙に舞った木の葉さえも、当たれば斬ってしまう程と言われている。だが、久本が手にしている刀は、お世辞にもよく斬れそうだとは言えない。
そんな、素人が見ても“鈍刀”は、透き通るほど、綺麗な出雲の刀の罅の部分に、斬れ込みを入れ、まるで、豆腐を切るような滑らかな動きで、刀身を圧し折った。
ただ、ここまでボロボロだったら、あまり意味がない…。今回はあえて打ち合わせようと試みたが、やはり駄目だったか…。」
久本は一度納めたばかりの刀を、再度抜き出し、刀身を眺めていた。
「…刃毀れなし。腕は、鈍っていなかったな…。」
血振りをし、ゆっくりと納刀するその姿はまるで”侍”のそれだった。
その場に居た人間なら、その立ち振る舞いに、見惚れるなという方が難しいだろう…。何せ、出雲や柿崎はおろか、石井までもが、最後の鍔と鞘が当たる音までに、耳を澄ませていた。
「…はっはっは!」
敷島が豪快に笑った。
「やはり、久本。血は争えないな!」
「やっぱり、“久本一峰”の息子か…。顔も声もそっくりで、最初見たときは驚いた…。」
柿崎まで笑っていた。
「久本一峰?」
石井と林田が首を傾げた。
「あぁ、知らないのも無理はないか…。久本一峰は、居合道の達人だ。
一度刀を抜けば、百人斬り倒すまで、鞘には納まらないという噂もあって、『百斬一峰』や『百斬納刀』なんて、異名もあった。」
「でも、そんな人の事、私聞いたことない。」
「お嬢ちゃんの様に、若い刑事なら聞いたことがないのも無理はねぇ。一峰は、今から15年程前に、持病の悪化で亡くなっちまった。」
「息子が一人居るってのは、聞いたことがあったが、まさかここで会えるとはな…。」
「ということだ。出雲、諦めろ。」
だが、出雲の耳にはその言葉は、届いていなかった。
無理もない。組長の。それも、かなりの名刀を、名も無きボロボロの刀に斬り込まれ、罅を入れられた。彼も、達人の域に達しているわけではないが、かなりの手練れだ。それなのに、ぽっと出の若い男に、ねじ伏せられるなど、理解できなかった。
普段は、参謀として金条組を知恵で支えている出雲だが、やはり彼もヤクザ…。頭に血が上れば、理性を忘れる…。
「うぉぉぉぉぉおおお」
周りが気が付いたときには、出雲は背後から、久本に斬りかかっていた。
「馬鹿が…。」
敷島がそう呟いたときには、出雲の刀は、甲高い金属音を立てて、久本の刀に止められていた。
「納めて下さい。」
久本の言葉は、出雲には届かず、ただただ力任せに、切り伏せようとしていた。
「…仕方ない…。」
よく斬れる刀は、宙に舞った木の葉さえも、当たれば斬ってしまう程と言われている。だが、久本が手にしている刀は、お世辞にもよく斬れそうだとは言えない。
そんな、素人が見ても“鈍刀”は、透き通るほど、綺麗な出雲の刀の罅の部分に、斬れ込みを入れ、まるで、豆腐を切るような滑らかな動きで、刀身を圧し折った。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。
カレンと晴人はその後、どうなる?
月弥総合病院
御月様(旧名 僕君☽☽︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
改大和型戦艦一番艦「若狭」抜錨す
みにみ
歴史・時代
史実の第二次世界大戦が起きず、各国は技術力を誇示するための
「第二次海軍休日」崩壊後の無制限建艦競争に突入した
航空機技術も発達したが、それ以上に電子射撃装置が劇的に進化。
航空攻撃を無力化する防御陣形が確立されたことで、海戦の決定打は再び「巨大な砲」へと回帰した。
そんな中⑤計画で建造された改大和型戦艦「若狭」 彼女が歩む太平洋の航跡は
滝川家の人びと
卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。
生きるために走る者は、
傷を負いながらも、歩みを止めない。
戦国という時代の只中で、
彼らは何を失い、
走り続けたのか。
滝川一益と、その郎党。
これは、勝者の物語ではない。
生き延びた者たちの記録である。
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる