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4章:調べ
4 買足Ⅳ
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華宵園は十八時には店を閉める。が、今日は急な雷雨の関係もあって、十五分前には店先の灯りを消した。九条さんが髪を乾かしている間、彰さんが棚を完成させてしまった。
私も何もしない訳にはいかないので、食器や、月島さんの料理を運ぶのを手伝った。流石元料理人、手際よく次々と完成させていく。元ドイツの料理人とは言う物の、できない和・洋・中作れない物はないらしい。
「手際良いね。こういう経験あるの?」
私の動きを見ていた月島さんがそう訊ねてきた。
「高校生の時に、旅館でバイトしていたことがあるので、多分そのおかげですね。」
「なるほどね…。じゃぁ、もうちょっと無理しても大丈夫そうだね。」
静岡に行ったときや、この間の顔合わせの時も、月島さんと話す機会はあまりなかったが、この人は多分Sと言われる性格なのだろうか…。
「あまり、ウチのバイトを虐めないでくれるかな?」
髪を乾かし終えた九条さんが台所に入ってきた。トートバッグから様々な洋酒を取り出す。
「そう言えば、二代目は?」
九条さんが居間にいる彰さんに訊ねた。
「麻雀。」
「また?飽きないね…。」
新庄さんの反応に、彰さんも呆れた様に頷いた。
三人は、どうやら定期的にこんな感じで、集まって、呑んだりしているらしい。新庄さんも初めて知ったと言っていた。私は当然未成年だから、呑むわけにはいかない。幸いな事に、新庄さんも下戸らしく、仲間外れにならずに済んだ。
色々な話を聞いた。三人ともドイツで知り合った事。新庄さんの愚痴。彰さんの不思議な話等々。この一、二時間彼等の話は聞いていて、それぞれの特徴や性格が何となく分かってきた。月島さんは他人をイジるのが上手く、決して傷つく様な事は言わない。彰さんはどちらかと言うと、イジられ役みたいな感じで、月島さんや新庄さんから答えに困る様な話を振られていた。それを九条さんが咎める様な感じだった。
私から話を広げることはなかったが、楽しい時間だった。上京してくるまでは、学校とバイト以外、外で食事をする経験が数える程度しかない。しかも、こんな大勢でとなると、もしかしたら初めてかもしれない…。
気付けば二十時を過ぎていた。雨はすっかり上がっていた。棚は翌日、九条さんが運んでくれることになった。
「今日はありがとうございました。御馳走にまでなってしまって。」
「香織ちゃんも呑めればもっと楽しめるんだけどなぁ。」
「そればっかりは、どうにもならんだろ。」
月島さんと彰さんが答えた。二人はもう暫く呑んでいくらしい。九条さんは私同様、明日も大学があるので、新庄さんと三人で家路に着いた。新庄さんは電車で帰宅するべく、駅の前で別れた。
「こういうの初めてでした。」
「楽しかったかい?」
「はい。誘って頂いて、ありがとうございます。」
「そいつは良かった。じゃぁ、また明日ね。」
そう言って、彼とも別れた。少々名残惜しかったが、私も家路に着いた。ふと、スマホを見ると非通知の着信が入っていた。何となく、私には誰だかわかっていた。だから、掛け直す気には成らなかった。
傍観者も同罪…。本当にそうだと思う。自分の保身だけ気にして、関わらない方が良いと思っている、それはそれで正解だと思っている。でも、手を伸ばせば届く距離にいるのに、見て見ぬふりで、自分たちは明るい世界にいるのは、自分たちも同じラインに立っていることを覚悟しておかなければならない。
私の様な者ができる前に…。
私も何もしない訳にはいかないので、食器や、月島さんの料理を運ぶのを手伝った。流石元料理人、手際よく次々と完成させていく。元ドイツの料理人とは言う物の、できない和・洋・中作れない物はないらしい。
「手際良いね。こういう経験あるの?」
私の動きを見ていた月島さんがそう訊ねてきた。
「高校生の時に、旅館でバイトしていたことがあるので、多分そのおかげですね。」
「なるほどね…。じゃぁ、もうちょっと無理しても大丈夫そうだね。」
静岡に行ったときや、この間の顔合わせの時も、月島さんと話す機会はあまりなかったが、この人は多分Sと言われる性格なのだろうか…。
「あまり、ウチのバイトを虐めないでくれるかな?」
髪を乾かし終えた九条さんが台所に入ってきた。トートバッグから様々な洋酒を取り出す。
「そう言えば、二代目は?」
九条さんが居間にいる彰さんに訊ねた。
「麻雀。」
「また?飽きないね…。」
新庄さんの反応に、彰さんも呆れた様に頷いた。
三人は、どうやら定期的にこんな感じで、集まって、呑んだりしているらしい。新庄さんも初めて知ったと言っていた。私は当然未成年だから、呑むわけにはいかない。幸いな事に、新庄さんも下戸らしく、仲間外れにならずに済んだ。
色々な話を聞いた。三人ともドイツで知り合った事。新庄さんの愚痴。彰さんの不思議な話等々。この一、二時間彼等の話は聞いていて、それぞれの特徴や性格が何となく分かってきた。月島さんは他人をイジるのが上手く、決して傷つく様な事は言わない。彰さんはどちらかと言うと、イジられ役みたいな感じで、月島さんや新庄さんから答えに困る様な話を振られていた。それを九条さんが咎める様な感じだった。
私から話を広げることはなかったが、楽しい時間だった。上京してくるまでは、学校とバイト以外、外で食事をする経験が数える程度しかない。しかも、こんな大勢でとなると、もしかしたら初めてかもしれない…。
気付けば二十時を過ぎていた。雨はすっかり上がっていた。棚は翌日、九条さんが運んでくれることになった。
「今日はありがとうございました。御馳走にまでなってしまって。」
「香織ちゃんも呑めればもっと楽しめるんだけどなぁ。」
「そればっかりは、どうにもならんだろ。」
月島さんと彰さんが答えた。二人はもう暫く呑んでいくらしい。九条さんは私同様、明日も大学があるので、新庄さんと三人で家路に着いた。新庄さんは電車で帰宅するべく、駅の前で別れた。
「こういうの初めてでした。」
「楽しかったかい?」
「はい。誘って頂いて、ありがとうございます。」
「そいつは良かった。じゃぁ、また明日ね。」
そう言って、彼とも別れた。少々名残惜しかったが、私も家路に着いた。ふと、スマホを見ると非通知の着信が入っていた。何となく、私には誰だかわかっていた。だから、掛け直す気には成らなかった。
傍観者も同罪…。本当にそうだと思う。自分の保身だけ気にして、関わらない方が良いと思っている、それはそれで正解だと思っている。でも、手を伸ばせば届く距離にいるのに、見て見ぬふりで、自分たちは明るい世界にいるのは、自分たちも同じラインに立っていることを覚悟しておかなければならない。
私の様な者ができる前に…。
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