レトロな事件簿

八雲 銀次郎

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14章:四人の約束

#1-1 出発

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 現在の時刻は、10時半。寧々たちと待ち合わせたのは、11時。時間までは、たっぷりとあるのだが、一足先に、駅ビル内をぶらぶらすることにした。
 待つのは、嫌いではない。のんびりと、誰にも邪魔されない、こういう時間は、寧ろ、好きだったりする。書店で、面白そうな、小説を探したり、普段あまり行かない、チェーン店の喫茶店に行ったりするのも、悪くはない。
 今回も、特に何か目当ての物がるわけでもなかったが、雑貨屋に立ち寄った。
 最近の流行の物や、日用的にも使えそうなグッズなど、様々な小物が、商品棚に並んでいる。
 その中でも、キャラクター物の、雑貨もあった。その中の一つを手に取り、眺めた。猫のぬいぐるみの様な、パスケースだ。こういうの、今井さんが、好きそうだと、思い、棚に戻した、時だった。
 「あれ?」
 聞き慣れた男性の声が、聞こえた。私は、その声の方に、視線を送った。
 「あ、やっぱりそうだ。」
 そこには、この雑貨屋さんの、風景には、余りにも似つかわしくない、和装を身にまとった、彰さんだった。
 「彰さん!どうして、こんな所に?」
 「フツーのマグカップが欲しくてね…。」
 華宵園には、勿論マグカップも置いてあるだろう。だが、それは、全てアンティーク品で、かなりの値段が付けられていたりする。
 だから、私のような、学生には、簡単に、“買おう”とは、ならない。
 その点、雑貨屋に置いてある、食器類は、大体、千円前後。マグカップくらいなら、数百円で買えるだろう…。
 「日用的に使うなら、安い方が良いだろうし、“飲み物”以外の使い方もできそうだから、ちょっと、見に来たんだよ。」
 そう言うと、彼は、さっき私が、戻したばかりの、猫のパスケースを、手に取った。
 「こういうの、好きなの?」
 「私じゃ無くて、今井さんが、好きそうだなぁ、と思いまして。」
 「嗚呼、確かに、好きそうだな…。」
 納得した様に、そう答えると、猫の前足を指先で握ったり、尻尾の部分を、指で、振らせた。真剣な面持ちで…。そして。
 「……可愛いな、これ……。」
 そう呟いた瞬間、流石に私も、吹き出しそうになった。
 「彰さんも、そう言うの、好きなんですか?」
 「嫌いではないよ。と言うよりは、昔から、動物が、好きでね?昔、近所に住んでいた、お姉さん家の猫と、よく遊んだものだよ…。」
 懐かしそうに、そう答えると、パスケースを棚に戻し、私が方に掛けていた、ボストンバッグを指さした。
 「これから、何処か、行くのかい?」
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