レトロな事件簿

八雲 銀次郎

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14章:四人の約束

#2-9

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 掃除も粗方終わり、そろそろ、チェックインの時間が、迫ってきた。それに合わせて、私たちは、西館で、暫くの間、待機することになった。
 「香織、部屋から持って行きたいものとかないの?」
 麻由美が、鍵の束を揺らし、ジャラジャラと鳴らした。
 「ん~。本くらいしかないかな…。」
 大学に入学する時に、必要な物は、大体、運び出していた。それでも、数十冊の本と、ちょっとした小物を、私が過ごしていた部屋に、残していた。
 多分、今になっても、要らない物や、不必要な物が多いのだろうが、少し、懐かしくなり、覗いてみたい気持ちが出てきた。
 「でも、ちょっとだけ、見て置きたいかな。」
 私の言葉に、寧々が、いち早く反応した。
 「何?香織の部屋?私も見てみたい!」
 少し興奮した様に、そう言った。
 「見るのは、構わないけど、殆ど何もないよ?」
 「物より、香織が過ごした部屋を、見てみたいの!」
 彼女の、その言葉に、気圧される形で、私たちは、元私の部屋に、向かった。
 
 麻由美が部屋のカギを開け、扉が開いた。暫く、風を通していなかった所為か、少し、黴臭さが、残っていた。
 部屋の様子は、当然ながら、あの時のままだった。大学の入試の為に、朝晩勉強に没頭した、テーブル。ボーっとしたい時に、只管外を眺めた、窓とソファ。そして、窓から見える、小さな中庭の風景。
 何もかもが、あの時のままだ…。数か月振りなのだが、長い間、来ていなかった様な、とても、懐かしい気持ちになった。
 「へぇ~。ここが、香織が高校生の時に過ごした場所か…。」
 「何もないでしょ。あっても、この押し入れに、数箱、段ボールが、あるだけなんだよね…。」
 私は、押し入れの襖を開けた。私の思惑通り、例の物が、出てきた。といっても、読み古した、古本ばかりだ…。
 「懐かしい…。」
 私は、段ボール箱の前に、跪き、ページをパラパラと捲った、
 どれも、一度は、読んだことのある小説だ…。誰にも邪魔されることなく、時間が許す限り、ゆっくり、じっくりと読んでいたから、どれも、内容を鮮明に覚えている。
 「私は、漫画本くらいしか、読んだことないから、こういうのは、苦手だな…。」
 本を一冊手に取った寧々が、そう言った。その言葉に、麻由美も、うんうんと、頷いた。
 ただ、彩だけは、違った。幾つかある本の中から、一冊手に取り、その表紙を、まじまじと、見詰めていた。
 「もし気になるなら、持って行って良いよ?」
 私が、そう言うと、彩は、ハッとした様に、我に返った。
 「本当に、良いの?」
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