レトロな事件簿

八雲 銀次郎

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14章:四人の約束

#4-7

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 香織をなだめて居たら、時間に何時の間にか時間になっていたらしく、三枝さんのスマホのアラームが鳴った。
 それを、三枝さんは、寝惚けた表情で、スマホの画面を触り、音を止め、置き上がった。
 「はぁ~。お早う…。」
 大きな欠伸をしながら、目元を擦り、そう言った。
 「お早う、美穂ちゃん。何で香織ちゃんに、抱きついて寝ていたの?」
 女性スタッフの問いに、三枝さんは、眠そうな、顔で答えた。
 「ん~。良い匂いだったから?」
 「匂い?」
 「分かんないけど、香織ちゃんの匂い嗅いだら、何か落ち着いたんだよね…。」
 布団を畳みながら、三枝さんは、続けた。
 「それに、私一人っ子だったから、妹が居たら、香織ちゃんとか、お嬢みたいな子だったのかなぁとか思うときが、偶にあるんだよね。香織ちゃんの境遇は、噂程度には聞いていたけど、まさかここまでとは思わなくて…。」
 三枝さんは、押し入れの襖を開けた。
 「こんなに静かで、それなりに広いこの部屋より、この押し入れの中の方が落ち着くって、どういう事なんだろうって、考えたとき、どうしても、嫌な事しか、思いつかなかった。」
 押し入れの中に、自分の布団を仕舞うと、未だに蹲っている、香織の傍にしゃがみ込み、背中を摩った。
 「だから私は、そんな香織ちゃんを、甘やかそうと、思いました。アンタが何と言おうと、私は、とことん甘やかすから、覚悟してね?」
 三枝さんは、そう言うと、部屋を出て行った。
 

 「それから、次第にその“甘やかし”が行き過ぎて、大分過激になって、今ではさっきの、“充電”みたいな儀式に変わっちゃったんだよね…。」
 「はぁ…。」
 寧々の間の抜けた、返事が聞こえた。
 「美穂ちゃんにとっては、香織ちゃんは、今でも妹みたいな存在らしくて、上京してからも、ほぼ毎日、気に掛けてるのよ…。」
 女性スタッフが、そう付け加えた。
 「妹…。」
 彩の呟きが聞こえた。
 「そう。人によって、兄弟や姉妹の概念や、思いは、それぞれだと思うけど、美穂ちゃんは、一方的な物が、強かったみたいね…。」


 三枝さんの奇襲から、何とか立ち直った頃には、もう完全に日が暮れており、真っ暗な空には、最近欠け始めた月と、星が瞬いていた。
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