レトロな事件簿

八雲 銀次郎

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14章:四人の約束

#6-3

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 線香花火というのは、どれだけ慎重にやっても、最期まで持たせるのは、至難の業だ。
 いくら頑張っても、途中の乱れ始めてからは、火玉の赴くままに…。
 「一本勝負な。負けたら、さっき言った通り、全員に飲み物を奢る。」
 「もちろん、真剣勝負だから、妨害行為は禁止。」
 広瀬さんと、立花さんの言葉に、私たちは頷き、各々、ロウソクの火に、花火の先端を当てた。
 勝負というのは、あまり得意ではない…。まぁ、そういう事に、慣れていない所為か、妙に緊張してしまう…。
 
 私の火玉は、丸く纏まり、いよいよ開花し始めた。パチパチと、小さな火花が散り始めた。そしてやがて、火花は、大きく咲き乱れ、これからというときだった。
 「香織ちゃ~~ん!」
 その声に思わず、変な声を上げ、驚いてしまった。それと同時に、私と彩、それと広瀬さんの花火の寿命は、尽き果ててしまった。
 「あぁ…。」
 「流石に、ノーカンかな…。」
「おい美穂…。折角良い所だったのに…。」
 三枝さんは、状況を理解できていないらしく、広瀬さんに責められ、あわあわしていた…。
 「だ、だって、普通に遊んでると思ったから…。」
 まぁ、確かに、遊びといえば、遊びなのだが、勝敗が決するときに、今の様なことは止めて欲しい…。
 「それより、何の用ですか?休憩の時間は、まだのはずですよね?」
 麻由美も珍しく苛立っているのか、少し強めの口調で、彼女に聞き返した。
 その口調に、彩と寧々と立花さんが、(怖いわね~)と言っていたのは、聞こえていないらしい。
 「え、えっと…。女将さんから、偶には長めに休憩とりなさいって言われて、それで、お言葉に甘えて…。こっちに来たら、香織ちゃんが、しゃがんでるの見えて、それで…。」
 「声をかけてしまったと?しかも、大声で…。」
 「…は、はい…。決して悪気があった訳ではなくて…。」
 暫く、麻由美の取り調べが続き、勝負どころではなくなったため、普通に楽しむことにした。
 「線香花火って、まっすぐ持つより、少し斜めにしたほうが、長持ちしやすいらしいね。昔テレビかなんかでやってた。」
 寧々がそういい、実践して見せた。確かに火玉の持ちは良い気がするが、乱れ始めたあたりで、火玉は、儚くも散ってしまった。どうやら、持ち主の根気も必要なのは、間違いなさそうだ…。
 「じゃぁ、これは知ってる?線香花火の火玉には、それぞれ、名前があるの…。」
 立花さんが自慢げに、そういった。
 「聞いたことありますね…。忘れてしまいましたが…。」
 「蕾、牡丹、松葉、柳、散菊ですね。」
 彩が答えた。
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