レトロな事件簿

八雲 銀次郎

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14章:四人の約束

#11-17

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 寧々に指定された場所は、大学の最寄り駅の地下道だった。地下道といっても、地下駐車場やバスの停留所に向かう通路の様なもので、駅ビルに繋がっているわけではない。地下道の全体は、白い壁タイルの様な物で覆われており、全体的には明るいが、時間が時間なら、薄暗く少し不気味だったりもする。だが、出入口が繁華街のアーケード内や駅構内に直接繋がっているため、意外にも利用する人は多く見かけた。
 私は、あまり使うことがなかったためアリの巣の様に入り組んだ地下道は、歩き慣れなく、少し迷ってしまった。幸い、それを見越して早めに到着していたため、時間前には目的地にはたどり着けた…。着けたのだが、そこには、数十人もの学生の姿があった。彼らは服装が派手だったり、髪の色が様々だったりで、一目で軽音系サークルの人たちだということが分かった。
 だが、寧々の様に楽器を背負っている人は全く居ないため、彼らが本当に寧々と同じ、軽音系サークルの人たちなのかははっきりしないため、話しかけようか少し戸惑っていた。
 暫くすると、私の姿を見つけた一人の女性が、その軍団から、抜け私の方に駆け寄ってきた。
 「もしかして、彩夏ちゃん?」
 「え?あ、そうですが…。」
 「あぁ良かった。寧々から“もし見かけたら一緒に連れてきて”って言われて。時間前に会えて良かった。
 こっちにおいで、もう少しで“ハコ”の方に移動するから。」
 「あ、あの…。」
 「ん?あ、そっか、あたしはマナカ。寧々とは同じクラスでよく一緒に居るんだけど、今日はあのコ、先に現地入りしてリハーサルやってるみたいなんだけど、時間が押してるみたいで、こっちには迎えに来ないんだって…。」
 マナカ…。そういえば、初めて寧々と出会ったとき、一緒に居たのを思い出した。
 「なるほど…。それと、さっき言ってた“ハコ”って何ですか?」
 「あぁ…ライブハウスの事だよ。収容人数がそれほど多くないライブハウスは、箱の様な場所ということで、よくハコって言われるね。」
 「なるほど…。」
 「そう。それより、彩夏ちゃん。何か楽器やってたりするの?」
 「私は、ピアノを少しだけやっていて、最近は、全然触ってないんだけど…。」
 「ピアノかぁ~。となると、キーボード志望になるのか…。キーボードは稀少だから、色んなバンドから引っ張りダコになるね。
 ちなみにあたしはギター。」
 「…でも、私まだ入会するって考えてなくて…。ピアノも齧っていた程度で…。」
 「…そうなんだ…。じゃぁその考えも、今日で決まるかもね?」
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