(完)愛人を持とうとする夫

青空一夏

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「胡蝶や。そなたは、あの男を甘やかしすぎたのです! なんですか? あれは」

「・・・・・・あそこまで勘違いする方とは思わなかったのです・・・・・・」

至急、医者が呼ばれて私は診察を受けました。

「極度のストレスで、お腹のややがびっくりしたのでしょう。お白湯でも、ゆっくりとお飲みになって横になってください。そのうち、治まると思いますので・・・・・・」

医者が、私を落ち着かせるように優しくおっしゃいました。

私を、眠り続けて、お兄様の声で目が覚めたようです。

「かわいそうに。だから、このことには反対だったんだ。お前は、男の容貌に惚れすぎる・・・・・・男の価値は風貌よりも心だというのに・・・・・・良い勉強になっただろう・・・・・・」

優しく私の髪を撫でているお兄様の手は夢なのか、現実かが定かではありません・・・・・・

お兄様は、私の実のお兄様ではありませんでした。叔父上(父上の弟)の息子なのです。叔父上が、10年前に戦死してからは叔母さまとお兄様は、この屋敷に住むようになりました。

熊のように大きく、日に焼けて荒削りのお顔立ちは、お世辞にも美男子とは言えませんでした。けれど、この戦国の世にあっては、その腕力の強さは頼もしく、槍の使い手として超一流と名高かったのです。

「まったく、お姉様(胡蝶の母親)。これは、許してはおけませんね? この胡蝶がくるしんでいた時にあざ笑っていたというその小娘はどこの家の者でしょうか? 胡蝶を橘の本家の跡継ぎ娘と知っての狼藉なのですか? 愚かな・・・・・・」

叔母様(お兄様のお母様)は、声を震わせて怒っていらっしゃいました。

私は、瞼を開けて、すぐ側にお座りになっていた叔母様の手を握りしめました。

「叔母様。私のせいなのです。あの方を大事にしすぎて・・・・・・あの方は、すっかりこの橘の当主と思いこんでおりまして・・・・・・」


「はぁ? あの信虎様がいらっしゃった時には私達も同席いたしましょう。橘のご当主様(胡蝶の父親)は、いつお戻りですか? え? 一刻(1時間)ほど遅くなるのですね。まぁ、あの者がこれほど、うつけ者とは思いませんでしたが・・・・・・・・」

叔母様の言葉に母上様が眉尻を下げた。

「あの名門の徳山の血が流れているのに・・・・・・というよりは、それだからこそなのでしょうか・・・・・・明日はあのおなごも一緒に呼ぶとしましょう。」
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