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3 ゴリオシーナの嘘は止まらない
「お父様、お姉様を叱らないでください。私さえ我慢すればいいのですし、今回はルーカス様とデートできて私はとても嬉しいのですから」
お父様にお説教をされている私を、ゴリオシーナは姉思いの妹を演じて庇うように言葉を紡ぐ。
私は下を向いてこの嫌な時間が過ぎ去るのを待っていた。意気地なしの私は妹に反論することもお父様の誤解を解くこともできないのだった。
お母様は心配そうに私を見つめていたけれどなにもおっしゃらなかった。そう、私の家族は皆ゴリオシーナの言うことを信じている。留学したお兄様でさえゴリオシーナにだけしかお手紙を寄こさない。
☆彡★彡☆彡
デートの前日に私の部屋にやって来たゴリオシーナはクローゼットを物色し始めた。
「ねぇ、お姉様の空色のドレスは全て私にくださいね。だって、ルーカス様の瞳の色のドレスを着ることはもうないでしょう? サイズも一緒ですし、私が代わりに着て差し上げますわ。お姉様には綺麗なドレスは似合いませんものね。あら、このピンクとオレンジのも素敵!」
嬉しそうに笑いながら綺麗な色のドレスを両手いっぱいに持っている。残ったのはクリーム色や淡い藤色、薄いグレーのドレスばかりだった。
「それはあげないわよ! やめてよ。返しなさい!」
私は宝石箱を勝手に開けるゴリオシーナにさすがに声を荒げて注意をすると、なんとゴリオシーナは泣き出したのだった。
お父様はすぐに私の部屋にいらっしゃって理由を聞いた。
「今度はいったいどうしたんだ?」
「お姉様がルーカス様の瞳のドレスをいらないからって押しつけてきたのよ。それから、この宝石箱をくれるって言ったのに気が変わって私から取り上げたの!」
「やれやれ、ジャスミンよ。それほどドレスがいらないと言うのなら、今後、お前のドレスは新調しない。宝石箱もさっさとゴリオシーナにあげなさい。一度あげた物を取り上げるなんて気持ちが卑しいだろう?」
「この宝石箱だけはあげられませんし、あげると言ったことは一度もありません!」
ゴリオシーナの欲しがっている宝石箱はお祖母様の形見だった。唯一、私を信じてくれたお祖母様は私に一番可愛い孫だとおっしゃった。
去年亡くなったばかりのお祖母様の宝石がいっぱい詰まった宝石箱は、遺言書で私の物になったけれど、ゴリオシーナは隙を見てはそれを奪い取ろうとしてくるのだった。
「お祖母様が私に残した物です! お祖母様との思い出もここにたくさん入っているのに・・・・・・お父様はお祖母様の遺言を無視なさるおつもりですか」
ここだけは譲れない私は、初めてお父様に反論したのだった。
女傑だったお祖母様にだけは頭が上がらなかったお父様は諦めの溜息をついて去っていき、ゴリオシーナは舌打ちをしながらつぶやいた。
「あのばばぁ、大嫌いだったわ!いつもお姉様の味方でさぁ。死んで良かったぁ~~。あぁ、嬉しい!」
お祖母様が大好きだった私にゴリオシーナはわざとそんな言葉を吐いて私の部屋を後にするのだった。
☆彡★彡☆彡
デートの当日。私の隣には私の空色のドレスを着てお洒落をしたゴリオシーナが座っており、ルーカス様を待っていた。
「まぁ、ルーカス様! ようこそおいでくださいました! ですが、お姉様はさきほどから腹痛でトイレを往復してまして・・・・・・どうやら昨夜のデザートを食べ過ぎたようですの。私のぶんまで食べてしまうからですわ。でも、せっかくの観劇のチケットを無駄にするのも、勿体ないです! 私が代わりに参りますわね!」
ありもしない虚偽を並べ立て、可憐に微笑んだゴリオシーナ。
ルーカス様は残念そうな顔はしたものの、
「これは今、人気の劇でプレミアム席だから確かに無駄にしては勿体ないね」
と、おっしゃったのだった。
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