（完）イケメン侯爵嫡男様は、妹と間違えて私に告白したらしいー婚約解消ですか？嬉しいです！

1 話したこともないのに愛してるってなんでしょう？

　ここ『アラダ学園』で私は、3年生です。3年生ともなれば、卒業までわずかなので婚約者がいる女性がほとんどなのですがまだ、私に婚約者がいないのは妹がいつも奪い取ってしまうからなのでした。

　そして、妹は奪い取った私の元婚約者とうまくいくかと思えばそうではなく、ひと月もすると飽きて捨ててしまうのでした。

　それでも両親が妹を叱ろうとしないし、私もセニアを憎めないのは、あの美貌のお陰ですね。妹のセニアは、まばゆいほどの美貌の持ち主で可愛くて綺麗なのです。それに比べて私は平凡な容姿ですが、そのぶん中身を磨こうと頑張ることにしています。


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　お昼休みや放課後はいつも図書館にいる私は、この日も図書館で本を読んでいました。その本には、さまざまな怪我や病気に適切な対応ができる応急処置の方法が書いてあります。付録として介護の簡単な仕方なども掲載されていて、とても役立つ本でした。人生、なにがあるかわかりませんから、このような知識をもっておくのはいいことだと思います。

　
　そんなわけで、本を読み進めておりますと『そんな本を読んでいるとは感心だね』と声をかけられました。顔を上げると、目の前にはこの学園で女生徒の憧れの対象である、シュトン侯爵家の嫡男アール様がいらっしゃったのでした。

「あの……なにか私にご用でしょうか？」

「うん。実は君を愛しているんだ。結婚を前提に付き合ってほしい」

「……今まで話したこともないですけれど……なんでいきなり『愛している』なのでしょう？」

「なんていうかな……そう、インスピレーションだな。恋は理屈じゃないよ。そう思わない？」

「はぁ……」

　学園きってのイケメン様に、このようなことを言われてもいまひとつ説得力がないです。私は一目ぼれされるタイプではありませんからねぇ。

　ですがアール様は私のお父様にお話ししたようで、いきなり婚約の話が決まったのでした。

「でかしたぞ！　アテナがこんな快挙をしてくれるとは思わなかったが、娘のうちどちらでもいいものな。シュトン候爵夫人になるなら喜ばしいことだ！　なんといっても、男爵家から侯爵夫人になるなんて夢のようだぞ！」

　お父様は踊り出しそうな勢いでした。妹も喜んでくれたようです。

「すごいです！　これが間違いでないことを祈ってますわ！」

　妹が唇を震わせて私にハグしてきます。なんて、いい妹なのでしょう！　私はこの綺麗な妹をかわいく思い、大事にしておりました。