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やり直しの人生ー無双じゃなくても幸せ?
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私は高校生で今、教室にいる。けれど、誰も私に眼をあわせようとしない。
「おはよー」
声をかけてみても誰も見向きもしないんだ。そこまで、嫌われていたっけ?
友人の洋子に声をかけてみた。
「ねぇ、昨日のドラマさぁ、面白かったよね?見たでしょう?」
洋子は私の先を見て、加奈子に聞いている。
「昨日のドラマさぁ、見たぁーー?」
なにか、私は嫌われることをしたんだっけ?思いかえしても、特にはない。
お昼の時間になっても、それは変わらなかった。誰もなにも話しかけてくれず、お弁当をカバンから出そうとすると
どうやら忘れてきたらしい。購買部でパンを買おうとして、おばさんに言ってもなんの反応もない。
「おばさん、このサンドイッチください」
「はい、クリームパンとかつサンドね?次のお嬢ちゃんはなんだい?あぁ、コロッケパンかい」
ーー購買部のおばさんにまで無視されるなんて、そこまでのことを私はなにかしたのだろうか?」
☆
「ただいま」
自宅に帰ると母が一階の和室の部屋で泣いていた。
手をあわせて泣いているその視線の先には‥‥私の遺影。
ーーあぁ、そうか、そうだった。私、死んでいたんだったよ。忘れていたの。
道理でクラスのみんなが冷たかったわけだ。見えていないってやつね。ということは、私は幽霊なのか?
☆
「そうです。ごめんなさい。こちらの手違いで30年も早く死なせちゃった」
背後から、無駄に綺麗な声がするから振り返る。やたら、女神様っぽい男がにこやかに立っていた。
男が女装しているかんじの女神様を想像してみて!
「さ、30年‥‥ということは50歳近くまでは本来なら生きられたのね?」
「まぁ、そういうことになりますねぇーーー」
淡々と言う女神様(多分)に、私は異世界に飛ばしてくれるように頼んでみた。
「ラノベにあるようなチートな能力をもつ異世界無双なかんじの主人公、あれにしてよ」
「チートですね?どんな能力がほしいのですか?」
「そうねぇー、とりあえず、ひととおりちょうだいよ?魔法もできて、美貌も備わっていて、料理も上手で、薬草なんかで万能薬も作れちゃうとか‥‥それで、かっこいい人と最後は結ばれる。ここ、一番重要だからね!」
「はい、はい。んじゃ、そんなかんじで‥‥」
男の女神様は、呪文を唱え私は異世界転生に向けて眼を閉じた。
☆
眼を開けると、すごく豪華なお部屋でふっかふかのベッドに寝ている私がいて、そっと起きて鏡を覗くと驚くほど美形な姿がこちらを見つめている。
そして、私はここでチートな存在として生きるのだった?
ただし、男として‥‥だって、私の身体に珍しいモノがついていたから‥‥
性別、言わなかったけどさ‥‥これって詐欺じゃないの?
「どうした?アンドレ?朝飯、俺が作るよ。お前、寝てろよ?」
ベッドの隣の塊がもぞもぞと動くと、男がにっこり笑いながら私のお尻をなで回す。
「ちょ、ちょっと。待ってぇーーーーめっ、女神、女神さまぁーーー」
ポワンと女神様登場で、私は早速文句を言う。
「いろいろ変だから‥‥私は女で恋愛対象は男がいいわけ。Do you understand? ]
「オッケー、おけけ。大丈夫」
全然、不安だけど‥
「もう、なんでもいいから、チートなんていらないからさ。普通にこの世界で平凡な幸せちょーだい。優しい夫と子どもが二人。夫になる人と知り合うところからはじめてよ。20歳から30年も生きれば思い残すことなんてないわ」
私は、カラカラと笑った。
☆
さぁ、私は20歳の大学生からやり直した。恋人は同じ大学の同級生。大好きで、結婚できた時には嬉しくて号泣し、子どもができた時には夫婦して抱き合って喜んだ。
あれから30年。幸せな時間が経つのは、早い。
「お母さん。きっと治るよ。この病気は治療すれば大丈夫だから」
息子が手を握り、夫は眼に涙を溜めていた。
「女神様‥‥こんなに幸せじゃぁ、死ぬのが辛いよ‥‥思い残すことはおおありだ。失敗したよ」
私は息を引き取る前に弱々しくつぶやいた。
「失敗じゃないよ。大成功!!」女神様の底抜けに明るい声が聞こえた気がした‥‥
完
「おはよー」
声をかけてみても誰も見向きもしないんだ。そこまで、嫌われていたっけ?
友人の洋子に声をかけてみた。
「ねぇ、昨日のドラマさぁ、面白かったよね?見たでしょう?」
洋子は私の先を見て、加奈子に聞いている。
「昨日のドラマさぁ、見たぁーー?」
なにか、私は嫌われることをしたんだっけ?思いかえしても、特にはない。
お昼の時間になっても、それは変わらなかった。誰もなにも話しかけてくれず、お弁当をカバンから出そうとすると
どうやら忘れてきたらしい。購買部でパンを買おうとして、おばさんに言ってもなんの反応もない。
「おばさん、このサンドイッチください」
「はい、クリームパンとかつサンドね?次のお嬢ちゃんはなんだい?あぁ、コロッケパンかい」
ーー購買部のおばさんにまで無視されるなんて、そこまでのことを私はなにかしたのだろうか?」
☆
「ただいま」
自宅に帰ると母が一階の和室の部屋で泣いていた。
手をあわせて泣いているその視線の先には‥‥私の遺影。
ーーあぁ、そうか、そうだった。私、死んでいたんだったよ。忘れていたの。
道理でクラスのみんなが冷たかったわけだ。見えていないってやつね。ということは、私は幽霊なのか?
☆
「そうです。ごめんなさい。こちらの手違いで30年も早く死なせちゃった」
背後から、無駄に綺麗な声がするから振り返る。やたら、女神様っぽい男がにこやかに立っていた。
男が女装しているかんじの女神様を想像してみて!
「さ、30年‥‥ということは50歳近くまでは本来なら生きられたのね?」
「まぁ、そういうことになりますねぇーーー」
淡々と言う女神様(多分)に、私は異世界に飛ばしてくれるように頼んでみた。
「ラノベにあるようなチートな能力をもつ異世界無双なかんじの主人公、あれにしてよ」
「チートですね?どんな能力がほしいのですか?」
「そうねぇー、とりあえず、ひととおりちょうだいよ?魔法もできて、美貌も備わっていて、料理も上手で、薬草なんかで万能薬も作れちゃうとか‥‥それで、かっこいい人と最後は結ばれる。ここ、一番重要だからね!」
「はい、はい。んじゃ、そんなかんじで‥‥」
男の女神様は、呪文を唱え私は異世界転生に向けて眼を閉じた。
☆
眼を開けると、すごく豪華なお部屋でふっかふかのベッドに寝ている私がいて、そっと起きて鏡を覗くと驚くほど美形な姿がこちらを見つめている。
そして、私はここでチートな存在として生きるのだった?
ただし、男として‥‥だって、私の身体に珍しいモノがついていたから‥‥
性別、言わなかったけどさ‥‥これって詐欺じゃないの?
「どうした?アンドレ?朝飯、俺が作るよ。お前、寝てろよ?」
ベッドの隣の塊がもぞもぞと動くと、男がにっこり笑いながら私のお尻をなで回す。
「ちょ、ちょっと。待ってぇーーーーめっ、女神、女神さまぁーーー」
ポワンと女神様登場で、私は早速文句を言う。
「いろいろ変だから‥‥私は女で恋愛対象は男がいいわけ。Do you understand? ]
「オッケー、おけけ。大丈夫」
全然、不安だけど‥
「もう、なんでもいいから、チートなんていらないからさ。普通にこの世界で平凡な幸せちょーだい。優しい夫と子どもが二人。夫になる人と知り合うところからはじめてよ。20歳から30年も生きれば思い残すことなんてないわ」
私は、カラカラと笑った。
☆
さぁ、私は20歳の大学生からやり直した。恋人は同じ大学の同級生。大好きで、結婚できた時には嬉しくて号泣し、子どもができた時には夫婦して抱き合って喜んだ。
あれから30年。幸せな時間が経つのは、早い。
「お母さん。きっと治るよ。この病気は治療すれば大丈夫だから」
息子が手を握り、夫は眼に涙を溜めていた。
「女神様‥‥こんなに幸せじゃぁ、死ぬのが辛いよ‥‥思い残すことはおおありだ。失敗したよ」
私は息を引き取る前に弱々しくつぶやいた。
「失敗じゃないよ。大成功!!」女神様の底抜けに明るい声が聞こえた気がした‥‥
完
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ありがとうございまぁす🙇♀️