[完結]愛する人たちに裏切られた私は……

青空一夏

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1 謎の手紙

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 春の陽光が差し込む夫婦の寝室で、私は夫のオズワルドの腕に抱かれながら、くすくすと笑った。
 「こんなに幸せでいいのかしら? あなたといると、毎日が夢みたい」
 呟く私に、オズワルドはそっと微笑む。
 「もちろん、いいのさ。いつもレティシアは、私の腕のなかで笑っていれば良い」
 
 優しい、本当に優しすぎる夫に、私の心はいつでも陽だまりのなかにいるようで――結婚生活がこんなに満たされ楽しいものだとは思わなかった。

 貴族の結婚はほとんどが政略――愛のないものが多い。
 けれど、私たちの結婚は違った。
 幼なじみとして育ち、気づけば胸の奥に灯るような想いがあって……
 互いに惹かれ合い、心から望んで両親に願い出て、婚約し、結ばれた。

 私たちはとても幸せで満たされており、お互いに十分に満足していたのよ。
 
 「君の好きなものだろう? 私のぶんもあげるから、さぁ、お食べ」
 食事の際、オズワルドは私にさりげなく好物を取り分けてくれる。
 「あなたこそ食べて。私のもどうぞ」
 私もオズワルドの好物を勧めた。
 「いや、大丈夫。それより、君が幸せそうに食べるのを見ている方がずっと楽しいよ」
 優しく微笑むオズワルドは、いつだって、私を一番に考えてくれた。
 
 舞踏会では、誰よりも先に手を差し伸べてくれる。
 「君と踊るのが一番楽しい。どんな時も、君といるのが一番だ」
 耳元で囁く夫に、私は頬を染める。二人で過ごす甘く穏やかな日々は、まるで永遠に続くかのように思えた。

 あれから月日が流れ、私は28歳になった。
 子どもはいなかったけれど、5年前に亡くなった姉夫婦の娘――カミーユを引き取り、我が子のように育ててきた。
 今年18歳になるその少女は、今ではすっかり大人びて、振り返られるほどの美しさを持つようになっている。

 私が10歳の頃から、ずっと仕えてくれている専属侍女のマリーは、頼れる存在だ。
 7歳年上の彼女は、今も変わらず私のそばにいて、どんなことでも相談に乗ってくれる。
 夫の愛情に包まれ姪の成長を見守りながら、信頼できるマリーに支えられて、私の日々は平穏そのものであり、何不自由ない幸せに満ちていた。

 そんなある日、私は友人を招いてのお茶会を開いていた。午後の陽光が金色の輝きを帯び、ティーサロンのステンドグラスを美しく照らしている。
 私は淡いローズ色のティーカップを指先でそっと持ち、ゆっくりと唇をつけた。周囲では、華やかなドレスに身を包んだ貴婦人たちが、微笑みを交わしながら、優雅に談笑している。私と仲の良い20人程の女性たちで、定期的にお茶会で情報交換を行っていた。

 そんな穏やかな空気を破るように、マリーが静かに歩み寄り、一枚の封書を差し出した。上質な紙に封蝋はなく、差出人の名も記されていない。

「奥様、こちらが化粧室で見つかりました。朝にはなかったものです。いったい誰が置いたんでしょう? 中身を確認していただけますか?」

 私は軽く眉をひそめたものの、マリーの手からその手紙を受け取る。細くしなやかな指で封を切ると、一枚の便箋が現れた。
 その便箋には、黒々としたインクでこう記されていた。
 
 オズワルド・フォン・ルーベルト公爵には愛人がいます。ルーベルト公爵夫人の身近にいて、彼女が信頼を寄せる女性です。なんて、お気の毒なのでしょう。
 
 胸の奥が冷たいもので締め付けられるような感覚に囚われ、ティーサロンの賑やかな笑い声が遠くに聞こえる。私の顔は青ざめ、手紙は手から無意識のうちに滑り落ち、床に音もなく落ちたのだった。



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※最初の投稿文を少し修正しております。
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