(完結)婚約破棄から始まる真実の愛

青空一夏

文字の大きさ
21 / 34

ディーを抱っこした私はノーラン様の腕に抱き上げられる

 アリッサは、ノーランの言葉に逆上してディーを投げつけるような素振りを見せた。ディーは、見知らぬアリッサに抱かれて、怖いのだろうか。小さな体を震わせて、悲しそうな目で私を見つめている。小さな声で、助けてと言っているように鳴くディーに私の胸は締め付けられた。

 ディーは、私にとっては子供のような存在だ。ノラはカルロス王国に置いてきたが、ディーはいつだって私の側にいたがるから一緒に連れてきたのだ。

「ねぇ、この子犬のか弱さなら、床に投げつければ一瞬で死ぬと思わない?」

 私の顔を嬉しそうに見ながら天使の無邪気さで微笑むアリッサに、ノーラン様がゆっくりと剣の刃をアリッサの首もとに近づけた。

「やってみろ。お前の命もここで一緒に散らしてやろう!」

「ばっ、バカじゃないの? たかが、子犬一匹で騒がないでよ! じ、冗談よ。ほんの冗談のつもりだったのよ? ほら、こんな犬なんて返すわよ。よく見たら全然、可愛くないじゃない!」

 私に、ディーを乱暴に押しつけると、アリッサはノーランを睨み付けた。

 この緊迫した気まずい空気を和らげたのはトリスタン王(宰相のふりをしています)だった。

「ははは、余興はこれぐらいにして、部屋に案内してもらえませんかな? この子犬は、とても珍しい品種ですから体も弱く世話も大変なのですよ。すぐに、お腹を壊し吐いたり下痢をしたりします。一日中、吐き続けて体調を崩すと、つきっきりで飼い主が世話をしなければならない。とても、神経質な犬なので、主人として認識した者からしか餌を食べないのですよ。それでも、よろしければ・・・・・・」

「あぁ、そんな面倒くさい犬ならいらないですぅ。吐いたり下痢をするなんて最悪だわぁ。部屋が臭くなるなんてまっぴら」

「そうでしょうなぁ。かわいいお姫様には、下呂は似合わないでしょうな」

 宰相のディビット様(秘書のふりをしています)は、にこやかにそう言うと、侍女から細長い包みを二つ受け取りアリッサに差し出した。

「これを、アリッサ王女様とそのお母様に差し上げようと持ってきました。どうぞ、お受け取りください」

 アリッサとお母様は途端に顔をほころばせた。この人達は、なんでも欲しがる。その物欲に限界はなさそうだ。


 私は、ブロンディ王国の将来を憂いて、お婆様の守ってきたものが崩れ去ることを悲しんだ。この国の未来はない。このアリッサが女王になる限り・・・・・・小さなため息が私から漏れた。


 ノーラン様はそんな私に、にっこりと笑いかけ囁いた。

「貴女のものだったはずの全てのものは、私が必ず貴女の元に戻してあげよう。バイオレット王女よ」

 私は最後の言葉にはっとした。ノーラン様は愛おしげに私を見つめると、さっと抱き上げ声を張り上げた。

「我が妃が、旅の疲れで歩けないようだ。寛ぎたいので失礼する」

 ブロンディ王国の侍女達が案内する来賓用の隣の城にディーを抱っこした私は、ノーラン様に抱きかかえられたまま移動するのだった。

感想 127

あなたにおすすめの小説

【完結】気付けばいつも傍に貴方がいる

kana
恋愛
ベルティアーナ・ウォール公爵令嬢はレフタルド王国のラシード第一王子の婚約者候補だった。 いつも令嬢を隣に侍らす王子から『声も聞きたくない、顔も見たくない』と拒絶されるが、これ幸いと大喜びで婚約者候補を辞退した。 実はこれは二回目の人生だ。 回帰前のベルティアーナは第一王子の婚約者で、大人しく控えめ。常に貼り付けた笑みを浮かべて人の言いなりだった。 彼女は王太子になった第一王子の妃になってからも、弟のウィルダー以外の誰からも気にかけてもらえることなく公務と執務をするだけの都合のいいお飾りの妃だった。 そして白い結婚のまま約一年後に自ら命を絶った。 その理由と原因を知った人物が自分の命と引き換えにやり直しを望んだ結果、ベルティアーナの置かれていた環境が変わりることで彼女の性格までいい意味で変わることに⋯⋯ そんな彼女は家族全員で海を隔てた他国に移住する。 ※ 投稿する前に確認していますが誤字脱字の多い作者ですがよろしくお願いいたします。 ※ 設定ゆるゆるです。

婚約する前から、貴方に恋人がいる事は存じておりました

Kouei
恋愛
とある夜会での出来事。 月明りに照らされた庭園で、女性が男性に抱きつき愛を囁いています。 ところが相手の男性は、私リュシュエンヌ・トルディの婚約者オスカー・ノルマンディ伯爵令息でした。 けれど私、お二人が恋人同士という事は婚約する前から存じておりましたの。 ですからオスカー様にその女性を第二夫人として迎えるようにお薦め致しました。 愛する方と過ごすことがオスカー様の幸せ。 オスカー様の幸せが私の幸せですもの。 ※この作品は、他投稿サイトにも公開しています。

裏切りの先にあるもの

マツユキ
恋愛
侯爵令嬢のセシルには幼い頃に王家が決めた婚約者がいた。 結婚式の日取りも決まり数か月後の挙式を楽しみにしていたセシル。ある日姉の部屋を訪ねると婚約者であるはずの人が姉と口づけをかわしている所に遭遇する。傷つくセシルだったが新たな出会いがセシルを幸せへと導いていく。

二度目の人生は離脱を目指します

橋本彩里(Ayari)
恋愛
エレナは一度死に戻り、二度目の人生を生きることになった。 一度目は親友のマリアンヌにあらゆるものを奪われ、はめられた人生。 今回は関わらずにいこうと、マリアンヌとの初めての顔合わせで倒れたのを機に病弱と偽り王都から身を遠ざけることにする。 人生二度目だから自身が快適に過ごすために、マリアンヌと距離を取りながらあちこちに顔を出していたら、なぜかマリアンヌの取り巻き男性、死に戻り前は髪色で呼んでいた五人、特に黒いのがしつこっ、……男たちが懐いてきて。 一度目の人生は何が起っていたのか。 今度こそ平穏にいきたいエレナだがいつの間にか渦中に巻き込まれ――。

《完結》悪女と噂されたわたくしのざまぁ

ヴァンドール
恋愛
悪女と噂のわたくしとの結婚なら、どれほど軽んじても問題はないと思っていた旦那様。 ところが……。

【完結】私を裏切った最愛の婚約者の幸せを願って身を引く事にしました。

Rohdea
恋愛
和平の為に、長年争いを繰り返していた国の王子と愛のない政略結婚する事になった王女シャロン。 休戦中とはいえ、かつて敵国同士だった王子と王女。 てっきり酷い扱いを受けるとばかり思っていたのに婚約者となった王子、エミリオは予想とは違いシャロンを温かく迎えてくれた。 互いを大切に想いどんどん仲を深めていく二人。 仲睦まじい二人の様子に誰もがこのまま、平和が訪れると信じていた。 しかし、そんなシャロンに待っていたのは祖国の裏切りと、愛する婚約者、エミリオの裏切りだった─── ※初投稿作『私を裏切った前世の婚約者と再会しました。』 の、主人公達の前世の物語となります。 こちらの話の中で語られていた二人の前世を掘り下げた話となります。 ❋注意❋ 二人の迎える結末に変更はありません。ご了承ください。

私が嫌いなら婚約破棄したらどうなんですか?

きららののん
恋愛
優しきおっとりでマイペースな令嬢は、太陽のように熱い王太子の側にいることを幸せに思っていた。 しかし、悪役令嬢に刃のような言葉を浴びせられ、自信の無くした令嬢は……

毒を飲んだ令嬢は、二度目の人生で誠実な恋を選ぶ

ゆぷしろん
恋愛
幼いころからずっと隣にいて、いつか結ばれるのだと信じていた幼馴染エドガー。 けれど学園へ入ってから彼は少しずつ変わり、創立記念パーティーの夜、レティシアは彼が別の令嬢と口づけを交わす姿を目撃してしまう。やがて告げられたのは、「君が拒んだからだ」という身勝手な別れの言葉だった。結婚前に口づけや身体を許さなかったことさえ責められ、婚約は解消。噂に傷つき、生きる気力を失ったレティシアは、黒い森の魔女から毒を受け取り、自ら命を絶とうとする。 けれど次に目を覚ましたとき、彼女は幼いころへと戻っていた。 もう二度と、幼馴染に人生を預けない。そう決意したレティシアは、将来エドガーと結ばれる流れを少しずつ変えていく。そして二度目の人生で、前世で傷ついた自分に唯一優しい言葉をかけてくれた伯爵令息ルシアンと、今度こそ最初から出会い直す。穏やかで誠実な彼は、決して急かさず、傷ついた彼女の心を静かにほどいていく。 これは、恋に傷つき死を選んだ令嬢が、もう一度与えられた春の中で、自分の気持ちと向き合いながら、本当に大切にしてくれる人を選び直して幸せになるまでのやり直し恋愛譚。 「今度こそ、私は自分で選ぶ」 毒を飲んだ令嬢は、二度目の人生でようやく知る。幸せとは、誰かに選ばれることではなく、自分を大切にしてくれる人を、自分の意志で選び取ることなのだと。