(本編)カトレーネ・トマス前々公爵夫人の事件簿

青空一夏

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これから楽しいゲームが始まる(担任のカーター視点)

 私は、こんな平民が通う貧乏くさい学校の教師には、うんざりだった。私は貴族のお抱え家庭教師になりたかったのに・・・・・・。なぜなら、私の父はルゼ男爵だったからだ。四男の私が家督を継ぐことはまずない。学者になるほど優秀でもない私は子供相手の教師の職を選んだ。食いっぱぐれがなくて、騎士と違い命の危険もない。おまけに、子供が相手だから、言いたいことも遠慮せずに言える。いい職業だと思った。

 貴族の子供は13歳まではお抱えの家庭教師から教育を受ける。それから、騎士養成学校か学者養成学校か、普通の貴族学校に通う。大体が、貴族学校に通うが、平民も入れる実力主義の学者養成学校を選ぶ者もいた。私はその学者養成学校の卒業生だった。その私が、なんで、こんなところで勤務していなければならないんだ!  

 確かに、学生時代からちょっとしたことでトラブルに巻き込まれることは多かった。卒業時の私の評価欄は "トラブルメーカー” と書いてあった。これは、明らかな不当な評価だ! 抗議をしたが、無駄だった。

 その評価のせいなのか? どこの貴族の家に家庭教師の面接に行っても断られた。仕方なく、この平民用の学校で働いているが、給料は安くて話にならない。これじゃぁ、私が好きな女が買えない。そう、私は女を買ってその女に子供用の体操着を着せるのが大好きだ。

 あぁ、ここは、貧乏くさい学校で早く辞めたいけれど、女生徒の体操着姿は目の保養になるな。そんなことを、思っていた時に転入生のメイソンが入ってきた。

 子供のくせに、いやに落ち着いていて、成績は常に一番だ。こんな天才は気にくわない! こいつは、きっと学者養成学校に入って、きっとそこでもトップクラスを保持して・・・・・・私などが、けっしてなれなかった王家のお抱え学者にもなるかもしれない・・・・・・。

 たかが、平民の分際で、そんな可能性を秘めたメイソンを見るのは忌々しかった。ところが、とても喜ばしい事件が起きた。

「メイソン君が怪しいと思います。昨日はメイソン君だけ、体育の時間に教室に戻ったでしょう? あれから時計が見当たらないもん! いくら、勉強ができたって、どうせ使用人の子だろ? こんな時計を買ってもらえるわけがない! 羨ましくて盗んだのだろう? 白状しろよ!」 

 私のクラスの金持ちの、時計屋の息子のジェイコブが腕時計をメイソンに盗まれたと騒ぎ出したのだ。
ジェイコブは私にこっそり耳打ちした。

「僕の味方をしてくれれば、きっと先生にもいいことがありますよ」

 ふん! 子供のくせに大人のように悪知恵が働く。私は、大声でメイソンを責めた。もともと、気にくわなかったから、思いっきり虐めてやろう。

「メイソン君! あんなに優秀な君が泥棒だったなんて、先生はとても残念だよ。あぁ、もしかしたらあの優秀な成績も嘘かもしれないね? 泥棒だから、カンニングだって平気でしそうだ! 明日、保護者を連れてきなさい。家庭での躾がなっていないんだ!」

 私は、この優秀な子が泣くのが見たい。けれど、・・・・・・彼は、冷めた眼差しで私を見つめているだけだ。涙ひとつこぼさないじゃないか! くそっ! この定規で叩いてやろうかな? 

 そこへ、隣のクラスのジョナサンがやって来た。やはり、この子供も、私を同じような眼差しで見て無視しやがった。

「メイソン! 帰ろうぜ。もう馬車が迎えに来てるよ。僕も一緒に乗せてもらおう。トマス公爵家の馬車のクッションって最高に柔らかいよな!」

 ジョナサンが不思議なことを言っているが、その時の私はその意味がわからなかった。

「僕も、ダリア男爵の伯父さんとお父様を連れて来ますよ。伯父さんには男の子供がいないから、ゆくゆくは僕がそこのマリーと結婚して継ぐんです! メイソンなんて生意気な奴は、この町には住めなくなればいいな。 僕が今までは一番の成績だったし、クラスで一番かっこいい男だったのに・・・・・・」

 ジェイコブの気持ちが私にはよくわかった。そうか、そういうことなら、もっと味方してやらないといけないな。このジェイコブの伯父上に気に入られたら、マリーって娘の家庭教師になれるかもしれない。こんな学校の教師の給料よりも、ずっといいはずだ。

「おーい、メイソン! できれば、明日は家族の方を全員連れてこいよーー。先生が教育のなんたるかを教えてやると言っておきなさぁーーい」

 私は、上機嫌でメイソンの後ろ姿に声をかけたのだった。
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