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ジョシュアの思い
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マディソン・プラム伯爵令嬢を初めて見たのは、プラム家の薔薇の庭園のなかだった。
素晴らしく艶やかな銀髪にエメラルドの瞳の宝石のような少女だった。
勉強が苦手だと泣いていたのが愛らしくてかわいくて、綺麗でまるで薔薇の妖精のようだった。
絵を描くことが好きだと、ふわりと微笑みを浮かべて話す少女に初めて恋をした。
婚約者のリリィは気心が知れていて友人のような関係だったから、こんな甘い気持ちが自分にもあるなどとは思わなかった。
☆
それからは、舞踏会で見かける度にあの美しいマディソン・プラム伯爵令嬢を目で追った。
いつも、傍らには、社交界きっての美男子のデイビッド・ストロベン伯爵がいた。
二人は間違いなく絶世の美男美女で、お似合いだった。
わたしには、リリィ・チェリーという婚約者もいて、おまけに眼鏡をかけた地味な容姿の本の虫だ。
叶わない恋だから、この気持ちは死ぬまで心の 奥底にしまい込もう。
けっして、外にはだすまい‥‥あんな薔薇の天使のような女性が自分を愛してくれるはずはないのだから‥‥
☆
「ごめんなさい、ジョシュア、あなたとの婚約は破棄させていただくわ」
「なぜだい?」
「第二王子から婚約してくれと言われたのよ。断れないわ。私とあなたは、そもそも、恋人というよりは友人みたいな関係だったし‥‥」
「‥‥そうだね」
わたしは、リリィの言葉に素直に同意した。
そう、わたしとリリィの間には燃えるような恋も甘く切ない気持ちのかけらもないのだから‥‥
☆
ある日、わたしは、プラム伯爵夫人から王宮で呼び止められた。
「ジョシュア様、もう次の婚約者はお決まりですか?決まっていないのなら、私の娘のマディソンを候補にお加えいただけませんでしょうか?」
「え?マディソン・プラム伯爵令嬢ならば、引く手あまたでしょう?婚約破棄されたばかりのわたしではマディソンが可哀想だ」
プラム伯爵夫人は、ふわりと微笑むと首を横に振った。
「ジョシュア様と結婚できたら、マディソンは嬉しくて気絶するでしょう」
意味不明なことを言って、夫人は去って行った。
☆
それからは、なぜかトントン拍子に話がすすみ、あっという間にマディソンは妻になっていた。
けれど、彼女はいつも悲しげな顔をしているように見えた。
やはり、デイビッド・ストロベン伯爵と結婚したかったのだろう。
いつも、彼女はディビットと一緒だし、仲睦まじく夫婦のようにさえ見える。
わたしが、いくら妻を愛していたって、この恋は叶わない。
愛しい女を妻にしながら、その大事な女が不幸な顔ばかりしているのなら、わたしは身をひいたほうがいいのかもしれない。
愛する女が幸せに笑ってくれるためならばわたしはなんでもするだろう。
☆
リリィに相談したら、ひどい男のふりをすればいいと言う。
「ジョシュアは私と仲睦まじくしていればいいわ。マディソン様を大事にしていないと世間にも彼女にも思わせたら、彼女はバーレー侯爵家を出て行けるわ。本当に愛している男性のところに行けると思うわ」
「普通に離婚したんじゃダメなのか?」
「あら、そんなことをしたら、マディソン様に落ち度があったのかも、って言われるわ。社交界って、そういうものよ。
ジョシュアがひどい夫だったって思わせないと、マディソン様が離婚された女って言われてしまうのよ?」
「そうか‥‥わたしが悪者になればいいのか‥‥かまわないよ‥‥それでマディソンが幸せになるなら」
「ふふふー。じゃぁ、せいぜい、私達、仲良くしないとね!王家の方達と第二王子様には私から言っておくわ。マディソン様のために、ひと芝居うつってね!」
☆
わたしは、舞踏会にも妻をエスコートせず、努めて冷たい声をだし、マディソンに無関心を装った。
マディソンは喜々としてデイビッド・ストロベン伯爵のところに行くかと思えば、なかなか出て行く気配も無く、ますます悲しげな顔をするようになった。
どうしたことだ?
早く、好きな男のもとに行けばいい‥‥こんなに美しくて薔薇のような妻をもって手も触れられないわたしは気が狂いそうなのだから‥‥
素晴らしく艶やかな銀髪にエメラルドの瞳の宝石のような少女だった。
勉強が苦手だと泣いていたのが愛らしくてかわいくて、綺麗でまるで薔薇の妖精のようだった。
絵を描くことが好きだと、ふわりと微笑みを浮かべて話す少女に初めて恋をした。
婚約者のリリィは気心が知れていて友人のような関係だったから、こんな甘い気持ちが自分にもあるなどとは思わなかった。
☆
それからは、舞踏会で見かける度にあの美しいマディソン・プラム伯爵令嬢を目で追った。
いつも、傍らには、社交界きっての美男子のデイビッド・ストロベン伯爵がいた。
二人は間違いなく絶世の美男美女で、お似合いだった。
わたしには、リリィ・チェリーという婚約者もいて、おまけに眼鏡をかけた地味な容姿の本の虫だ。
叶わない恋だから、この気持ちは死ぬまで心の 奥底にしまい込もう。
けっして、外にはだすまい‥‥あんな薔薇の天使のような女性が自分を愛してくれるはずはないのだから‥‥
☆
「ごめんなさい、ジョシュア、あなたとの婚約は破棄させていただくわ」
「なぜだい?」
「第二王子から婚約してくれと言われたのよ。断れないわ。私とあなたは、そもそも、恋人というよりは友人みたいな関係だったし‥‥」
「‥‥そうだね」
わたしは、リリィの言葉に素直に同意した。
そう、わたしとリリィの間には燃えるような恋も甘く切ない気持ちのかけらもないのだから‥‥
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ある日、わたしは、プラム伯爵夫人から王宮で呼び止められた。
「ジョシュア様、もう次の婚約者はお決まりですか?決まっていないのなら、私の娘のマディソンを候補にお加えいただけませんでしょうか?」
「え?マディソン・プラム伯爵令嬢ならば、引く手あまたでしょう?婚約破棄されたばかりのわたしではマディソンが可哀想だ」
プラム伯爵夫人は、ふわりと微笑むと首を横に振った。
「ジョシュア様と結婚できたら、マディソンは嬉しくて気絶するでしょう」
意味不明なことを言って、夫人は去って行った。
☆
それからは、なぜかトントン拍子に話がすすみ、あっという間にマディソンは妻になっていた。
けれど、彼女はいつも悲しげな顔をしているように見えた。
やはり、デイビッド・ストロベン伯爵と結婚したかったのだろう。
いつも、彼女はディビットと一緒だし、仲睦まじく夫婦のようにさえ見える。
わたしが、いくら妻を愛していたって、この恋は叶わない。
愛しい女を妻にしながら、その大事な女が不幸な顔ばかりしているのなら、わたしは身をひいたほうがいいのかもしれない。
愛する女が幸せに笑ってくれるためならばわたしはなんでもするだろう。
☆
リリィに相談したら、ひどい男のふりをすればいいと言う。
「ジョシュアは私と仲睦まじくしていればいいわ。マディソン様を大事にしていないと世間にも彼女にも思わせたら、彼女はバーレー侯爵家を出て行けるわ。本当に愛している男性のところに行けると思うわ」
「普通に離婚したんじゃダメなのか?」
「あら、そんなことをしたら、マディソン様に落ち度があったのかも、って言われるわ。社交界って、そういうものよ。
ジョシュアがひどい夫だったって思わせないと、マディソン様が離婚された女って言われてしまうのよ?」
「そうか‥‥わたしが悪者になればいいのか‥‥かまわないよ‥‥それでマディソンが幸せになるなら」
「ふふふー。じゃぁ、せいぜい、私達、仲良くしないとね!王家の方達と第二王子様には私から言っておくわ。マディソン様のために、ひと芝居うつってね!」
☆
わたしは、舞踏会にも妻をエスコートせず、努めて冷たい声をだし、マディソンに無関心を装った。
マディソンは喜々としてデイビッド・ストロベン伯爵のところに行くかと思えば、なかなか出て行く気配も無く、ますます悲しげな顔をするようになった。
どうしたことだ?
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