政界の御曹司は人魚姫がお好き

青空一夏

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恋の予感

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雅人様はさくらとの婚約から一ヶ月後、婚約破棄をした。

「藤堂雅人は遠藤さくらとの婚約を破棄します。理由ですか?藤堂家の男から2回も婚約破棄される女性ですよ?なにか問題があるのでしょうね。しかし、俺の口からは言えないです。ただ、さくらさんとこれから結婚するかもしれない男性はお気の毒だと思います」

雅人様は週刊誌青春の独占インタビューに答えていた。その週刊誌は事実をすっぱ抜くのが得意な週刊誌だ。

雅人様の意味深な発言で、青春出版社は取材意欲を焚きつけられたようだ。

あっという間にさくらは、今までの悪行をさらされた。




「さくらさんは、小学生の頃から泳げませんでした。今でも、まともに泳ぐのは無理ですよ」

「さくらさんが、新様を助けた?嘘でしょう。あの場所は水泳の達人でないとすぐに流されてしまう。人魚姫と揶揄される海女さんしか無理だよ。ちなみに、それってさくらさんのお姉さんですよ」

「さくらさんは、虚言癖があって、職場でもトラブったことがあります」

「さくらさんは清純に見えて、人の恋人をとるのが上手なんですよ」

「さくらさんに夫を盗られた!」

「さくらさんに嘘をつかれて親友の杏さんを裏切りました」

などなど、AさんやB、C、D、Eと次々に取材に応じて証言する人たちが後を絶たない。

私に関する同情の記事も多く、すっかりさくらは悪女になっていた。

「姉の手柄を横取りした女!!ペテン師!悪女!」大きな見出しが雑誌を飾り、ワイドショーは連日放送された。





ほとぼりが冷めた頃、雅人様は私の家のテラスにやってきた。

「雅人様、わざとこうなるように仕組んだんですか?」

「あぁ、少し意地の悪い料理の仕方だったかな?君の妹は可哀想に、当分いい結婚相手はでてこないだろうな」

私は、黙って海を見つめた。月は相変わらず空の高いところにあって、波が月の光をうけて輝いていた。

「一緒にビールでも飲まないかい?」

私の好きな緑の発泡酒を一缶だけ持った雅人様が言った。

「雅人様、それってビールじゃないです。ビールもどき」

「ははは、偽物はもうたくさんだ。今度は本物の恋をしよう」

雅人様が低い艶っぽい声で言ったから私はドキリとした。

私と雅人様は一缶のビールを二人で交互に飲んだ。

「美味しいな」

「そうですね。とても、美味しいです」

私はまた空を見上げる。さっきまで遙か高いところで冴えた光を放っていた月が少しだけ近づいた気がした。



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