(完)旦那様、あなたの愛はどこにあるのですか?

青空一夏

文字の大きさ
4 / 16

3

(サッシャ・ギャール前公爵視点)

 わたしは妻を崇拝していた。幼なじみだったアネモーネは、シルバーグレーの髪と瞳のとても美しい女性だった。わたしを愛し尽くしてくれた妻は、この世界のなによりも大事で愛おしくて・・・・・・アネモーネと結婚できて神に心から感謝した。

 彼女が懐妊した時は、天にも昇る気持ちだった。だが、彼女はどんどん衰弱していく。

 最初は子供の誕生を二人で心待ちにしていたが、途中からは彼女に堕ろすように懇願した。

「このままだと君が死んでしまうよ。お願いだからこの子供を諦めて・・・・・・わたしの為に生きてくれ」

「・・・・・・この子は堕ろさない、絶対に! だって、愛するあなたの子供なのよ? これは私達の愛の結晶なの。お願い。そんな哀しいことは言わないで」

 アネモーネは日に日に弱っていく。痩せ細っていっても、お腹の子どもだけは絶対に守って・・・・・・最期の力を振り絞って産んだ子供は、彼女の髪と瞳を受け継いだ男の子だ。

「お願い。この子を愛して。私は絶対に元気になるから」
 元気になると約束したのに。わたしとこれからも生きたい、とアネモーネは望んでいたのに・・・・・・それから数日後に亡くなった。



 わたしはもちろん、妻の忘れ形見を愛した。ただ、わたしはこの子には同じ思いをさせたくないと思う。だから・・・・・・




(ジュスタン・ギャール公爵視点)

 わたしの父上は母上をとても愛していた。そして母上に生き写しのわたしも、息子として慈しんでくれた。父上の後悔は私へと受け継がれ・・・・・・それはギャール公爵家の使用人までが知るところになる。

「出産は女性の命を奪う過酷なものだ。だから、本当に愛する女性を妻にしたのなら、決して子供は産ませるな」

 この言葉を幼い頃から呪文のように聞かされて育つ。家令や侍女達にも、父上は涙ながらに母上の思い出を語りながら話す。

「お前達の女主人、このギャール公爵夫人となる女性に出産をさせてはならない! 二度とこの悲劇が起こらない為に!」 


 わたしの母上は使用人達に優しく、慕う者が多かった。彼らもまたお互いが言い合う。

「大事な当主夫人に出産などという危険なことをさせてはならない!」と。


 ゆえに、わたしの最愛ロズリーヌに出産など危険なことをさせるつもりはない。いつまでも美しく綺麗なまま、わたしと長く人生を歩むのだ。

 これがわたしの愛だから。絶対にロズリーヌに死んでほしくない。愛しているんだ・・・・・・心から・・・・・・


感想 104

あなたにおすすめの小説

お飾り王妃の愛と献身

石河 翠
恋愛
エスターは、お飾りの王妃だ。初夜どころか結婚式もない、王国存続の生贄のような結婚は、父親である宰相によって調えられた。国王は身分の低い平民に溺れ、公務を放棄している。 けれどエスターは白い結婚を隠しもせずに、王の代わりに執務を続けている。彼女にとって大切なものは国であり、夫の愛情など必要としていなかったのだ。 ところがある日、暗愚だが無害だった国王の独断により、隣国への侵攻が始まる。それをきっかけに国内では革命が起き……。 国のために恋を捨て、人生を捧げてきたヒロインと、王妃を密かに愛し、彼女を手に入れるために国を変えることを決意した一途なヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は他サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:24963620)をお借りしております。

〖完結〗あんなに旦那様に愛されたかったはずなのに…

藍川みいな
恋愛
借金を肩代わりする事を条件に、スチュワート・デブリン侯爵と契約結婚をしたマリアンヌだったが、契約結婚を受け入れた本当の理由はスチュワートを愛していたからだった。 契約結婚の最後の日、スチュワートに「俺には愛する人がいる。」と告げられ、ショックを受ける。 そして契約期間が終わり、離婚するが…数ヶ月後、何故かスチュワートはマリアンヌを愛してるからやり直したいと言ってきた。 設定はゆるゆるの、架空の世界のお話です。 全9話で完結になります。

死ぬまでに叶えたい十の願い

木風
恋愛
「あなたを妻として、愛することはない。おそらく、生涯抱くこともないだろう」 三年間の白い結婚——捨て置かれた王太子妃エリアーナに、側妃が『死の呪い』をかけ余命一年を宣告する。 離縁を願うも拒否され、代わりに「死ぬまでに十の願いを叶えて」と契約する—— 二人きりの外出、星空、海…ささやかな願いが王太子の心をほどいていく。

お飾り王妃の死後~王の後悔~

ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。 王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。 ウィルベルト王国では周知の事実だった。 しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。 最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。 小説家になろう様にも投稿しています。

〈完結〉だってあなたは彼女が好きでしょう?

ごろごろみかん。
恋愛
「だってあなたは彼女が好きでしょう?」 その言葉に、私の婚約者は頷いて答えた。 「うん。僕は彼女を愛している。もちろん、きみのことも」

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

完結 若い愛人がいる?それは良かったです。

音爽(ネソウ)
恋愛
妻が余命宣告を受けた、愛人を抱える夫は小躍りするのだが……

嘘をありがとう

七辻ゆゆ
恋愛
「まあ、なんて図々しいのでしょう」 おっとりとしていたはずの妻は、辛辣に言った。 「要するにあなた、貴族でいるために政略結婚はする。けれど女とは別れられない、ということですのね?」 妻は言う。女と別れなくてもいい、仕事と嘘をついて会いに行ってもいい。けれど。 「必ず私のところに帰ってきて、子どもをつくり、よい夫、よい父として振る舞いなさい。神に嘘をついたのだから、覚悟を決めて、その嘘を突き通しなさいませ」