(完)旦那様、あなたの愛はどこにあるのですか?

青空一夏

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 お腹に子供がいることになっている私は、夫にべったりと付き添われていても誰も怪しまない。夜会の間じゅう、一人になることもできなかった。

「大丈夫。初めての出産は誰でも不安なものよ。でも最高の医者を手配しますからね」

 王妃殿下に縋るように視線を送っても、にっこり微笑まれてそうおっしゃるだけだ。

 『助けて!』という私の表情は、初めての懐妊で不安がる妊婦そのものに見えたのだろう。

「いいえ、王妃殿下。実はもう、それらの者はすでに手配済みです。わたしは絶対に愛する妻を死なせない」

「ジュスタンの母上は出産で亡くなったからなぁ。サッシャはあれから再婚もしなかった。愛妻家だったからな。サッシャが宰相として仕事に打ち込んでくれたからこそ、この国の繁栄があるようなものだ。ジュスタンもサッシャの跡を継ぎ、立派に仕事をこなしてくれる。しかもこの可愛い姪っ子、ロズリーヌをとても大事にしてくれて・・・・・・良かったなぁ? ロズリーヌ。歳が少し離れすぎかと思ったが、それだけ大事にしてくれれば良い」

「はい。ロズリーヌは7歳も年下ですから、可愛くて大事なわたしの唯一無二の存在です」

「そうか、そうか。子供は2人は欲しいな。両公爵家を継ぐ子どもが必要だしな。まぁ、この仲の睦まじさなら子だくさんの夫婦になるだろう」

(子だくさん? ジュスタン様が他の女性に複数の子どもを産ませるの? そんなのは嫌よ)

 思わず涙がこぼれて、その涙をジュスタン様がそっと親指で拭う。そして清潔なハンカチを私の手に持たせると、背中を撫でて私をなだめた。

「妻は懐妊してから少し涙もろくて。やはり女性は子どもがお腹にいると情緒が不安定になるようですね」

「えぇ、そうよ。身体が辛いのなら無理をしないで」

 王妃殿下が私を気遣ってくださる。

「はい。ロズリーヌ、もう帰ろう。君は休んだ方が良い」

「あ、あの伯父様(国王陛下)!」

「なんだね? ロズリーヌ」

「あの・・・・・・私・・・・・・」

 ジュスタン様が私の腰をさらにきつく抱き寄せて、「ねぇ、君のロッティを、オオカミが群れをなす森に捨てて来てもいいかな?」と、耳元で囁いた。


 ロッティは私の愛犬だ。結婚前にジュスタン様からプレゼントされた、小さなふわふわ毛の可愛い子犬。ジュスタン様だって可愛がっているはずなのに・・・・・・森に捨てるなんて嘘でしょう?


 ジュスタン様が庭園の方に視線を向ける。その先には、ギャール公爵家の侍従がロッティを抱いていたのだった。
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