5 / 16
4
お腹に子供がいることになっている私は、夫にべったりと付き添われていても誰も怪しまない。夜会の間じゅう、一人になることもできなかった。
「大丈夫。初めての出産は誰でも不安なものよ。でも最高の医者を手配しますからね」
王妃殿下に縋るように視線を送っても、にっこり微笑まれてそうおっしゃるだけだ。
『助けて!』という私の表情は、初めての懐妊で不安がる妊婦そのものに見えたのだろう。
「いいえ、王妃殿下。実はもう、それらの者はすでに手配済みです。わたしは絶対に愛する妻を死なせない」
「ジュスタンの母上は出産で亡くなったからなぁ。サッシャはあれから再婚もしなかった。愛妻家だったからな。サッシャが宰相として仕事に打ち込んでくれたからこそ、この国の繁栄があるようなものだ。ジュスタンもサッシャの跡を継ぎ、立派に仕事をこなしてくれる。しかもこの可愛い姪っ子、ロズリーヌをとても大事にしてくれて・・・・・・良かったなぁ? ロズリーヌ。歳が少し離れすぎかと思ったが、それだけ大事にしてくれれば良い」
「はい。ロズリーヌは7歳も年下ですから、可愛くて大事なわたしの唯一無二の存在です」
「そうか、そうか。子供は2人は欲しいな。両公爵家を継ぐ子どもが必要だしな。まぁ、この仲の睦まじさなら子だくさんの夫婦になるだろう」
(子だくさん? ジュスタン様が他の女性に複数の子どもを産ませるの? そんなのは嫌よ)
思わず涙がこぼれて、その涙をジュスタン様がそっと親指で拭う。そして清潔なハンカチを私の手に持たせると、背中を撫でて私をなだめた。
「妻は懐妊してから少し涙もろくて。やはり女性は子どもがお腹にいると情緒が不安定になるようですね」
「えぇ、そうよ。身体が辛いのなら無理をしないで」
王妃殿下が私を気遣ってくださる。
「はい。ロズリーヌ、もう帰ろう。君は休んだ方が良い」
「あ、あの伯父様(国王陛下)!」
「なんだね? ロズリーヌ」
「あの・・・・・・私・・・・・・」
ジュスタン様が私の腰をさらにきつく抱き寄せて、「ねぇ、君のロッティを、オオカミが群れをなす森に捨てて来てもいいかな?」と、耳元で囁いた。
ロッティは私の愛犬だ。結婚前にジュスタン様からプレゼントされた、小さなふわふわ毛の可愛い子犬。ジュスタン様だって可愛がっているはずなのに・・・・・・森に捨てるなんて嘘でしょう?
ジュスタン様が庭園の方に視線を向ける。その先には、ギャール公爵家の侍従がロッティを抱いていたのだった。
「大丈夫。初めての出産は誰でも不安なものよ。でも最高の医者を手配しますからね」
王妃殿下に縋るように視線を送っても、にっこり微笑まれてそうおっしゃるだけだ。
『助けて!』という私の表情は、初めての懐妊で不安がる妊婦そのものに見えたのだろう。
「いいえ、王妃殿下。実はもう、それらの者はすでに手配済みです。わたしは絶対に愛する妻を死なせない」
「ジュスタンの母上は出産で亡くなったからなぁ。サッシャはあれから再婚もしなかった。愛妻家だったからな。サッシャが宰相として仕事に打ち込んでくれたからこそ、この国の繁栄があるようなものだ。ジュスタンもサッシャの跡を継ぎ、立派に仕事をこなしてくれる。しかもこの可愛い姪っ子、ロズリーヌをとても大事にしてくれて・・・・・・良かったなぁ? ロズリーヌ。歳が少し離れすぎかと思ったが、それだけ大事にしてくれれば良い」
「はい。ロズリーヌは7歳も年下ですから、可愛くて大事なわたしの唯一無二の存在です」
「そうか、そうか。子供は2人は欲しいな。両公爵家を継ぐ子どもが必要だしな。まぁ、この仲の睦まじさなら子だくさんの夫婦になるだろう」
(子だくさん? ジュスタン様が他の女性に複数の子どもを産ませるの? そんなのは嫌よ)
思わず涙がこぼれて、その涙をジュスタン様がそっと親指で拭う。そして清潔なハンカチを私の手に持たせると、背中を撫でて私をなだめた。
「妻は懐妊してから少し涙もろくて。やはり女性は子どもがお腹にいると情緒が不安定になるようですね」
「えぇ、そうよ。身体が辛いのなら無理をしないで」
王妃殿下が私を気遣ってくださる。
「はい。ロズリーヌ、もう帰ろう。君は休んだ方が良い」
「あ、あの伯父様(国王陛下)!」
「なんだね? ロズリーヌ」
「あの・・・・・・私・・・・・・」
ジュスタン様が私の腰をさらにきつく抱き寄せて、「ねぇ、君のロッティを、オオカミが群れをなす森に捨てて来てもいいかな?」と、耳元で囁いた。
ロッティは私の愛犬だ。結婚前にジュスタン様からプレゼントされた、小さなふわふわ毛の可愛い子犬。ジュスタン様だって可愛がっているはずなのに・・・・・・森に捨てるなんて嘘でしょう?
ジュスタン様が庭園の方に視線を向ける。その先には、ギャール公爵家の侍従がロッティを抱いていたのだった。
あなたにおすすめの小説
お飾り王妃の愛と献身
石河 翠
恋愛
エスターは、お飾りの王妃だ。初夜どころか結婚式もない、王国存続の生贄のような結婚は、父親である宰相によって調えられた。国王は身分の低い平民に溺れ、公務を放棄している。
けれどエスターは白い結婚を隠しもせずに、王の代わりに執務を続けている。彼女にとって大切なものは国であり、夫の愛情など必要としていなかったのだ。
ところがある日、暗愚だが無害だった国王の独断により、隣国への侵攻が始まる。それをきっかけに国内では革命が起き……。
国のために恋を捨て、人生を捧げてきたヒロインと、王妃を密かに愛し、彼女を手に入れるために国を変えることを決意した一途なヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は他サイトにも投稿しております。
表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:24963620)をお借りしております。
〖完結〗あんなに旦那様に愛されたかったはずなのに…
藍川みいな
恋愛
借金を肩代わりする事を条件に、スチュワート・デブリン侯爵と契約結婚をしたマリアンヌだったが、契約結婚を受け入れた本当の理由はスチュワートを愛していたからだった。
契約結婚の最後の日、スチュワートに「俺には愛する人がいる。」と告げられ、ショックを受ける。
そして契約期間が終わり、離婚するが…数ヶ月後、何故かスチュワートはマリアンヌを愛してるからやり直したいと言ってきた。
設定はゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全9話で完結になります。
死ぬまでに叶えたい十の願い
木風
恋愛
「あなたを妻として、愛することはない。おそらく、生涯抱くこともないだろう」
三年間の白い結婚——捨て置かれた王太子妃エリアーナに、側妃が『死の呪い』をかけ余命一年を宣告する。
離縁を願うも拒否され、代わりに「死ぬまでに十の願いを叶えて」と契約する——
二人きりの外出、星空、海…ささやかな願いが王太子の心をほどいていく。
お飾り王妃の死後~王の後悔~
ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。
王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。
ウィルベルト王国では周知の事実だった。
しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。
最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。
小説家になろう様にも投稿しています。
〈完結〉だってあなたは彼女が好きでしょう?
ごろごろみかん。
恋愛
「だってあなたは彼女が好きでしょう?」
その言葉に、私の婚約者は頷いて答えた。
「うん。僕は彼女を愛している。もちろん、きみのことも」
セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
嘘をありがとう
七辻ゆゆ
恋愛
「まあ、なんて図々しいのでしょう」
おっとりとしていたはずの妻は、辛辣に言った。
「要するにあなた、貴族でいるために政略結婚はする。けれど女とは別れられない、ということですのね?」
妻は言う。女と別れなくてもいい、仕事と嘘をついて会いに行ってもいい。けれど。
「必ず私のところに帰ってきて、子どもをつくり、よい夫、よい父として振る舞いなさい。神に嘘をついたのだから、覚悟を決めて、その嘘を突き通しなさいませ」