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「嘘・・・・・・なんで連れて来たの? 私の侍女が屋敷で面倒を見ているはずでしょう?」
「君の侍女達は入れ替えることにしたよ。出産経験があって、子育て経験の豊富な者にする。もちろんわたしの配下の者だ」
(私はこれからどうなってしまうの?)
「ロズリーヌ。どうしたね? 今なにを言いかけておった?」
「あ、いいえ。・・・・・・なんでもありません」
「シャンパントリタン辺境伯閣下のご子息、エドガール様がご到着でございます」
知らせを持ってくる王家の侍従に、伯父様(国王陛下)は満足気に頷く。
「ほぉ、エドガール様が王都にいらっしゃるとは珍しい。よく来ましたね?」
ジュスタン様が意外な顔をした。
「エドガールは、ロズリーヌ達の結婚式にも来なかったからな。今日は、まだ独り身のあいつの身を固めさせたくてなぁ。エドガールにはまだ婚約者もおらんのだよ。強制的にこちらに来させたのは、適当なご令嬢と婚約させたいと思っておるからだ」
「なるほど、それはいいことですね。では、私達はこれで失礼しますよ。妻はさきほどから少し具合が良くないようです・・・・・・」
「え? 嫌よ。私・・・・・・」
言いかけて夫の目を見て口をつぐんだ。冷たい狂気的な色をはらんだ瞳。怖い・・・・・・この人はまともじゃないのかも・・・・・・
「気をつけて帰りなさい。ロズリーヌ、なにか必要なものがあったらなんでも言いなさい」
「はい・・・・・・伯父様(国王陛下)」
エドガールの髪は燃えるような赤で、どこにいてもすぐわかる。長い間合わないうちに、とてもスラリと背が高くなっていた。
オパールの瞳は相変わらずキラキラと輝き、長い睫が頬に影を落とす。高い鼻梁に少しだけ薄めの唇は、誇り高い戦士のように精悍に見える。
美しいだけではなく、よく鍛えられたしなやかな体つきは、さすが国境を守るシャンパトリタン辺境伯の跡継ぎ息子だ。
「やぁ、ロズリーヌ! 久しぶりだね。結婚式には行くことができずにすまなかった」
「いいんですよ。エドガール様はシャンパトリタン辺境伯の跡継ぎ。国境を守る大切なお役目があるのですから、わざわざ王都にいらっしゃる必要はありません。そろそろ、お父上の跡をお継ぎになるのでしょう? あぁ、継ぐにあたっては、国王陛下が早く結婚なさるようにおっしゃっていました。では失礼しますよ。妻は懐妊したばかりで体調が良くない」
声をかけられた私の代わりにジュスタン様が早口でそう答えると、私を後ろに隠すようにエドガールの前に立ちはだかった。
「え? 懐妊・・・・・・そう・・・・・・なのか。おめでとう、ロズリーヌ」
(お願い! エドガール・・・・・・助けて)
「さぁて、かわいいロッティも待っているから帰ろうか」
ジュスタン様のぞっとするような冷たい声に、私はびくっと肩を震わせた。
「君の侍女達は入れ替えることにしたよ。出産経験があって、子育て経験の豊富な者にする。もちろんわたしの配下の者だ」
(私はこれからどうなってしまうの?)
「ロズリーヌ。どうしたね? 今なにを言いかけておった?」
「あ、いいえ。・・・・・・なんでもありません」
「シャンパントリタン辺境伯閣下のご子息、エドガール様がご到着でございます」
知らせを持ってくる王家の侍従に、伯父様(国王陛下)は満足気に頷く。
「ほぉ、エドガール様が王都にいらっしゃるとは珍しい。よく来ましたね?」
ジュスタン様が意外な顔をした。
「エドガールは、ロズリーヌ達の結婚式にも来なかったからな。今日は、まだ独り身のあいつの身を固めさせたくてなぁ。エドガールにはまだ婚約者もおらんのだよ。強制的にこちらに来させたのは、適当なご令嬢と婚約させたいと思っておるからだ」
「なるほど、それはいいことですね。では、私達はこれで失礼しますよ。妻はさきほどから少し具合が良くないようです・・・・・・」
「え? 嫌よ。私・・・・・・」
言いかけて夫の目を見て口をつぐんだ。冷たい狂気的な色をはらんだ瞳。怖い・・・・・・この人はまともじゃないのかも・・・・・・
「気をつけて帰りなさい。ロズリーヌ、なにか必要なものがあったらなんでも言いなさい」
「はい・・・・・・伯父様(国王陛下)」
エドガールの髪は燃えるような赤で、どこにいてもすぐわかる。長い間合わないうちに、とてもスラリと背が高くなっていた。
オパールの瞳は相変わらずキラキラと輝き、長い睫が頬に影を落とす。高い鼻梁に少しだけ薄めの唇は、誇り高い戦士のように精悍に見える。
美しいだけではなく、よく鍛えられたしなやかな体つきは、さすが国境を守るシャンパトリタン辺境伯の跡継ぎ息子だ。
「やぁ、ロズリーヌ! 久しぶりだね。結婚式には行くことができずにすまなかった」
「いいんですよ。エドガール様はシャンパトリタン辺境伯の跡継ぎ。国境を守る大切なお役目があるのですから、わざわざ王都にいらっしゃる必要はありません。そろそろ、お父上の跡をお継ぎになるのでしょう? あぁ、継ぐにあたっては、国王陛下が早く結婚なさるようにおっしゃっていました。では失礼しますよ。妻は懐妊したばかりで体調が良くない」
声をかけられた私の代わりにジュスタン様が早口でそう答えると、私を後ろに隠すようにエドガールの前に立ちはだかった。
「え? 懐妊・・・・・・そう・・・・・・なのか。おめでとう、ロズリーヌ」
(お願い! エドガール・・・・・・助けて)
「さぁて、かわいいロッティも待っているから帰ろうか」
ジュスタン様のぞっとするような冷たい声に、私はびくっと肩を震わせた。
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