(完)従姉妹に「財産目当と爵位狙いめ! 私の居場所を取るな」と泣かれましたが、お金ならあるし爵位に興味はありません

青空一夏

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7 恥をかかせようとするブロンシュ(お魚の食べ方編)

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 私には何人もの家庭教師の先生がついていた。マナーにダンスや語学・歴史・地理は当たり前、絵を描くことやピアノにヴァイオリンはお父様から学ぶ。さらに、社交術や集団の中でどう振る舞えばいいのかまで習得済みだった。




 スペラニア人の先生の名前はベレンガディア・ノディエ先生だ。スペラニア国の王族だというから驚きだ。午前中の授業はベレンガディア先生のスペラニア語とシアニア語の授業だった。シアニア語は教えるのがシアニア人でないことが驚きだったけれど、ベレンガディア先生のお母様がシアニア人だったというお話しを聞いて納得した。実際、ベレンガディア先生のシアニア語は、シアニア人そのものだったのだ。

 ブロンシュはこれらの授業で、私が全く恥をかかなかったことにいらだっているようだ。けれど、お昼の時間になって途端に上機嫌になった。
「アリゼ。お待ちかねのランチの時間よ。一緒に食べましょう。この学園はランチでも、ちゃんとした食事が楽しめるのよ」
 ブロンシュがにニヤニヤと笑いながら誘ってきたので、おとなしくついていくと意地悪そうな女の子達に早速囲まれた。じろじろと人が食べる様子を見るなんて、とても下品だわ。

「今日はニジマスのムニエルよ。さぁ、アリゼ。食べましょう」
 
(学園の食堂でこんなものが出てくるなんて驚きだわ。もっと簡単なサンドイッチやパスタだと思っていたのに)

「えぇ、では。いただきます」

(ふーーん。頭がついたままのお魚ね。こんなの簡単だわ)

 私はまず魚専用のフィッシュナイフを手に取った。ブロンシュはわざわざ私の手に、肉用ナイフを渡そうとするがそれは無視する。

 まずは骨の位置を意識して、頭のすぐ後ろのあたりに切り込みを入れた。このとき骨を切るのではなく、中骨にナイフがあたる深さまで切り込みを入れる。

 次は、ヒレの付け根の小骨の位置を意識しながら、背中に切り込みを入れた。ナイフの先をヒレのつけ根の骨にあてながら背ビレにそって、背身の際(キワ)に切り込みを入れる。皮を切るようなつもりで頭から尾のところまで切り込みを入れるのだ。

 それから腹の側も、尻ヒレの付け根の小骨の位置を意識して切り込みを入れた。ナイフの先はヒレのつけ根の骨を避けるようにしながら、腹身の際(キワ)に切り込みを入れる。皮を切るようなつもりで尾の方から頭の付け根のあたりまで切り込みを入れるのがコツだ。

 尾の付け根にナイフを差し入れ、刃を右に向けて魚の皮を縦方向に切った。ナイフは背骨の上をなでるような感じで、これまでに切り込みを入れた左半身をはがす。切り取った左半身は皿の手前に置いた。

 尾に近い箇所で背骨の下にナイフを差し入れ、尾の近くで刃を立てて皮を切り、次に刃を左に向けて尾から頭の方向に向かって、骨にそってナイフを滑らせ骨をはがす。頭の近くまで来たら刃を立てて皮を切る。これで完全に「頭-骨-尾」という状態になった。

 この時、骨を折りたたみながらはがすといい。剥がした骨は皿の奥にまとめて置く。次に刃を上に向けて、頭から尾の方向に向かって背ビレの下あたりにそってナイフを滑らせ、背骨の小骨をはがしてゆく。同じようにして、腹側も尻ビレにつながる小骨や胸の骨も剥がして取ってしまう。取り終えた背ビレと背ビレの小骨は皿の奥に置き、手前に置いていた半身をもとの位置にもどした。

 これで、骨とヒレが全て取り除かれた状態になった。フォークで押さえながら、左端からナイフで一口サイズに切って食べていく。

「うん、美味しい」
 私はにっこりと微笑む。王立貴族学園だけあって、新鮮な食材が使われていた。ここでのランチは、なかなか楽しめそうだ。

「アリゼ! 違うわよ。この魚は頭を全部切り落としてから、先に上の身を食べて骨は手で取るのよ」
 ブロンシュがなにを思ったか、でたらめなマナーを私に教えようとする。

「ブロンシュのマナーの先生は国出身なのかしら?」
 私が皮肉めいた口調で言うと、後ろの少し離れた席で食事をしていた高位貴族の令嬢達がクスクスと笑った。

 笑われたブロンシュが私に文句を言う。
「アリゼは貧乏人の子なんでしょう? だったら、それらしくしなさいよ」

「なぜ貧乏人の子だと思うの? かもしれないのに?」
 私はブロンシュに向かってきっぱりと言い放つ。

 それを聞いた令嬢達は、急に静かになった。きっと、どちらについた方が得かを探っているところだわ。






「アリゼさん。学園長が呼んでいますよ。あなたの後見人を名乗る方が会いにきていらっしゃいます。シアニア王国のスティール侯爵閣下です」
 ベレンガディア先生が私を食堂まで迎えに来て、おっしゃった言葉がその広い食堂内に響き渡る。

 高位貴族の令嬢が真っ先に口を開いた。
「アリゼ様。ティータイムの時間は私達と過ごしましょう」
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