【完結】夫がよそで『家族ごっこ』していたので、別れようと思います!

青空一夏

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65(27) チャスとガスキンの処分

【レオン視点】

 俺は広場の壇上から、眼下に並べられた罪人たちを見下ろした。
 ざわついていた群衆も、俺が一歩前に出ただけで静まり返る。視線はすべて、俺に集中していた。チャスはまだ目を逸らしたままだ。アルトの作った氷の中に閉じ込められながら、顔をしかめている。

「チャス・レイフォード」
 俺が名を呼ぶと、その場の空気がぴんと張りつめた。奴はぎこちなく顔を上げたが、その目にはもう、あの傲慢な光は残っていなかった。

「お前は王より預かった騎士団の権威を私物化し、その地位を使って民を裏切り、罪なき子供たちを金で売り飛ばした」
 俺の声は、風に乗って広場の隅々にまで届く。それを遮る者はいない。息を呑むように、皆が耳を澄ませていた。

「お前の行いは、騎士である前に人として終わっている。いや、騎士の名を汚したという点で、外道の中でも最も卑劣だ」
 チャスが小さく唇を動かすが、言葉になっていない。もう言い訳など、意味を成さないのだ。

 俺はゆっくりと右手を掲げ、はっきりと宣言した。
「チャス・レイフォードに対し、王命のもと――公開処刑を命ずる!」

 言葉が落ちた瞬間、どよめきと賛同の声が広場を揺らした。誰もがその裁きを待ち望んでいたのだ。民衆の怒りも、正義も、いまここに結実した。

 チャス、これが、お前の結末だ。
 自ら積み重ねてきた罪の重さ、骨の髄まで思い知れ!

 
【エルナ視点】

 旦那様の声が広場に響いた瞬間、私は正義が勝った瞬間だと感動すらした。
 「……公開処刑を命ずる!」
 その言葉を、私は確かにこの耳で聞いた。 

 ざわめきが広場を駆け抜け、民衆たちの間に賛同の声と歓声があがった。孤児院で働いていた女性の証言にもあったように、子供たちが次々と姿を消していたのだ。真相が明らかになった今、民衆たちの怒りは凄まじかった。

 私はチャスを見つめた。あの男は、うなだれたまま微動だにしない。茫然自失とはこのことか。あれが、かつて“正義”を掲げた騎士の末路なのだと思うと、喉の奥がひりついた。しかし、子供を“カボチャ”と呼び、無垢な命を数字で数えていたあの男に、もはや同情など不要だ。

 氷が溶けた数日後、チャス騎士団長の公開処刑は滞りなく執行された。
 そして同じ場で、ガスキン子爵もまた、同罪として処刑された。

 領主として本来ならば、騎士団の不正を止める立場にありながら、それを見て見ぬふりをしていた――いいえ、利益の話を持ちかけられても断ったとはいえ、何も行動を起こさなかった。その責任はそれだけの重罪に値する。

 ガスキン子爵が所持していた音晶石には、チャス騎士団長が孤児たちを奴隷売買が合法な他国へ売り飛ばす取引への参加を、子爵に持ちかける声がはっきりと記録されていたのだから。
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