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1 お姉様が好きだった私
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私と姉はとても仲良しだ。綺麗で賢い姉は私をとても可愛がってくれた。自慢の姉は私の大事な宝だ。
ある日、姉は私の部屋に来て泣き始めた。
「私ね、上級学園に進学したいの。そこに行かせてとお母様に頼んだらお金がないから、無理だって言うのよ」
「え、そんな・・・・・・うちにはそんなにお金がないの?」
勉強が姉ほど好きではない私だが貴族学園には今年から入学する。それと入れ違いにお姉様は卒業。花嫁修業として上位貴族の屋敷に侍女として仕えて、適当な男性と結婚するしかないのだ。
アーバスノット男爵家は一代限りの爵位。貧乏で婚約者などはいないし、やっと貴族学園までは行かせてもらうことができる貴族とは名ばかりの侍女にしかなれない家柄だった。
「クララとアメリの貴族学園に行くお金と嫁入りの際にもたす二人の持参金だけでやっとなの。もともと上級学園は上位貴族か裕福な方達しか入学できないものよ」
お母様はそう言ってため息をついた。
「だったら、私が貴族学園に行くのを諦めるわ。だって私、それほどお勉強が好きでもないし・・・・・・お嫁に行くって言ってもお姉様のように美人じゃないから結婚に憧れていないし、私の分の持参金もお姉様に使ってちょうだい」
「ほんとに! ありがとう! あなたには一生、感謝するわ」
「うん! 自慢のお姉ちゃんだもん。頑張って!」
お母様もお父様も私には申し訳なさそうにお礼を言ったけれど、そんなにたいしたことじゃない。貴族学園なんか行かなくても大丈夫。私はエジャートン侯爵家の侍女見習いとして奉公に出た。
貴族学園を出ればすぐに侍女になれるけれど、出ていないと見習いとして雇われるらしい。それでも別に良いと思っていた。身体を動かして働くのは嫌いじゃないし。
奉公先のエジャートン侯爵家では、下女と侍女の中間ぐらいの扱いで水仕事が多かった。冬場の水仕事は手がアカ切れて痛かったし、侍女達からは「勉強が嫌いな子は掃除しかできない。貴族学園にも行かないなんて・・・・・・あり得ないわよ」とバカにされた。
貧乏でも貴族学園に行くのは当たり前で侍女として暮す低位貴族の女性のなかには、働いてからお給金を貯めて通った人もいると聞いた。
私は姉に学費を譲ったとは言えず「勉強が好きじゃなかったから」と言っていたので、かなりあからさまに軽蔑されたのだった。
それでも、お姉様から毎月届く手紙は楽しみだった。勉強が楽しいとか校舎が立派で高位貴族の友人がたくさんできたとか、盛りだくさんの華やかな世界を書き綴ってくれるそれは私の生き甲斐にもなっていた。
けれど、半年もすると手紙の頻度がめっきり少なくなっていき、私から手紙を出しても返事もくれなくなっていた。
それから3年ぶりの休暇に自宅に戻るとお姉様はどこか冷たくて心が痛んだ。両親もあまり私には話しかけなくて居心地の悪さに戸惑った。
でも、その理由はまもなく他人の口から明らかにされた。
「おめでとう! 君のお姉様はハワード伯爵家に嫁ぐらしいね! あそこは親戚筋なんだよ」
ある日、エジャートン侯爵家の嫡男のヘンリー様が教えてくれたのだ。
「え? そんなこと初めて聞きました」
「まさか? そうなのかい? そう言えばアーバスノット家では娘が一人しかいないって話になってるみたいだな。君って勘当されたからここで働いているのかい? なにをやらかしたの?」
理解不能なことを言われて呆然とする私だ。私、いないことにされているの?
ある日、姉は私の部屋に来て泣き始めた。
「私ね、上級学園に進学したいの。そこに行かせてとお母様に頼んだらお金がないから、無理だって言うのよ」
「え、そんな・・・・・・うちにはそんなにお金がないの?」
勉強が姉ほど好きではない私だが貴族学園には今年から入学する。それと入れ違いにお姉様は卒業。花嫁修業として上位貴族の屋敷に侍女として仕えて、適当な男性と結婚するしかないのだ。
アーバスノット男爵家は一代限りの爵位。貧乏で婚約者などはいないし、やっと貴族学園までは行かせてもらうことができる貴族とは名ばかりの侍女にしかなれない家柄だった。
「クララとアメリの貴族学園に行くお金と嫁入りの際にもたす二人の持参金だけでやっとなの。もともと上級学園は上位貴族か裕福な方達しか入学できないものよ」
お母様はそう言ってため息をついた。
「だったら、私が貴族学園に行くのを諦めるわ。だって私、それほどお勉強が好きでもないし・・・・・・お嫁に行くって言ってもお姉様のように美人じゃないから結婚に憧れていないし、私の分の持参金もお姉様に使ってちょうだい」
「ほんとに! ありがとう! あなたには一生、感謝するわ」
「うん! 自慢のお姉ちゃんだもん。頑張って!」
お母様もお父様も私には申し訳なさそうにお礼を言ったけれど、そんなにたいしたことじゃない。貴族学園なんか行かなくても大丈夫。私はエジャートン侯爵家の侍女見習いとして奉公に出た。
貴族学園を出ればすぐに侍女になれるけれど、出ていないと見習いとして雇われるらしい。それでも別に良いと思っていた。身体を動かして働くのは嫌いじゃないし。
奉公先のエジャートン侯爵家では、下女と侍女の中間ぐらいの扱いで水仕事が多かった。冬場の水仕事は手がアカ切れて痛かったし、侍女達からは「勉強が嫌いな子は掃除しかできない。貴族学園にも行かないなんて・・・・・・あり得ないわよ」とバカにされた。
貧乏でも貴族学園に行くのは当たり前で侍女として暮す低位貴族の女性のなかには、働いてからお給金を貯めて通った人もいると聞いた。
私は姉に学費を譲ったとは言えず「勉強が好きじゃなかったから」と言っていたので、かなりあからさまに軽蔑されたのだった。
それでも、お姉様から毎月届く手紙は楽しみだった。勉強が楽しいとか校舎が立派で高位貴族の友人がたくさんできたとか、盛りだくさんの華やかな世界を書き綴ってくれるそれは私の生き甲斐にもなっていた。
けれど、半年もすると手紙の頻度がめっきり少なくなっていき、私から手紙を出しても返事もくれなくなっていた。
それから3年ぶりの休暇に自宅に戻るとお姉様はどこか冷たくて心が痛んだ。両親もあまり私には話しかけなくて居心地の悪さに戸惑った。
でも、その理由はまもなく他人の口から明らかにされた。
「おめでとう! 君のお姉様はハワード伯爵家に嫁ぐらしいね! あそこは親戚筋なんだよ」
ある日、エジャートン侯爵家の嫡男のヘンリー様が教えてくれたのだ。
「え? そんなこと初めて聞きました」
「まさか? そうなのかい? そう言えばアーバスノット家では娘が一人しかいないって話になってるみたいだな。君って勘当されたからここで働いているのかい? なにをやらかしたの?」
理解不能なことを言われて呆然とする私だ。私、いないことにされているの?
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