(完結)妹の身代わりの私

青空一夏

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1 旦那様に嫌われている私

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カシアス・ロン公爵様との結婚式の直後、ベールの下の私を見た公爵様は、怒りの声をあげた。

「なぜ、貴女が来たのかな? 私は妹さんを妻に望んだのだが・・・・・・」

頭を包帯でぐるぐるにまかれた公爵様の表情はよくわからないが、明らかに不快そうな口調だった。

こんなに、包帯だらけでもカシアス様の視力は普通だったようで、私と妹の区別はつくようだ。

「申し訳ございません。妹のオークリンは、体調がおもわしくなくて・・・・・・」

「そうか・・・・・・ならば、なにか滋養のあるものを使用人に持たせよう」

カシアス様は、近くにいた侍女に果物やミルクなどを、妹のオークリンに届けるように指示をしていた。

「ディオール、貴女が妻になっても愛するつもりはないが、妹のふりをしてまでも、公爵夫人になりたかったのだろう? ならば、しばらくはここにいてかまわないが、なんとも卑しい心根だな! 妹は、少しも体調が悪いように見えなかったぞ?・・・・・・貴女が毒でも盛ったのではないか?」

驚くようなことを、おっしゃるので私は呆気にとられてしまった。

「毒?・・・・・・おっしゃる意味がよくわかりませんが、ここにいて、公爵夫人として頑張りたいとは思っております」

その日は初夜ではあったが、『愛するつもりがない』の言葉通りにカシアス様は私の部屋を訪れることはなかった。




*:゚+。.☆.+*✩⡱:゚



翌朝、私は侍女長のマーサを呼んで、なにかできないかを模索しはじめた。

屋敷の管理はもちろんだけれど、カシアス様は野菜をお好きではないと聞いて、食べられるように工夫をすることにした。

「ロン公爵様のあの包帯は、日光を避ける為です。陽射しが当たると皮膚が痒くなるようでして・・・・・・偏食だらけで、お野菜を全く召し上がらないからだと、いつも申し上げてはいるのですが・・・・・・」マーサは私に愚痴るようにいうので、何とかしようと思ったのだ。

確かに、ビタミン不足は、皮膚のトラブルを起こしやすいものね。

まずは、野菜をジュースにするのが、手っ取り早いかしら。リンゴを多く混ぜればいいかもしれない。クレソンとセロリは少なめにして、パイナップルは多めにすると飲みやすいと思う。

早速、作って、その日の夜にカシアス様にお出しした。

カシアス様は、なんの疑いも持たずにお飲みになった。

これのコツは、少しづつ慣れさせることだ。最初は、パイナップルジュースに少しだけ野菜を混ぜる。その量を、ちょっとずつ増やしていく。

10日目には、クレソンを本来の割合まで入れた野菜ジュースをなんなくお飲みになっていた。

「なんだろう? 最近、体調が驚くほどいい!」

カシアス様の言葉に、私はにっこりと笑って答えた。

「良かったですね! カシアス様!」

カシアス様は、それには答えずそっぽを向いていた。

私は、とても嫌われているようだ。

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