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勇者様がなぜ嫌がらせをするんだ?(レイラ準男爵の母親side)
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私は、レイラ準男爵の母親のペイズリーという。我が家は準男爵家にしては、羽振りがいい方だった。嫁は良い家柄から貰いたかったが、準男爵など高位貴族には相手にされない。しかし、そこへ朗報が入った。
カリブ伯爵家の当主夫妻が亡くなって、負債を抱え込んだ美貌の令嬢のグレイスだけが残されたらしい。それを聞きつけた私は、すぐに手を打った。その借金の証文を全部買い付けて、それにさらに多くの利息を上乗せしてグレイスに請求したのだ。
もともとの負債の額などたいしたことはなかったが、私が上乗せした利息で、グレイスがレイラ準男爵家に嫁に来る選択肢しか選べないように仕向けた。あそこの嫡男が行方不明で本当に良かった。
ところが、せっかく貰った嫁はなかなか子供を産まない。この準男爵家に名門のカリブ伯爵家の血をいれたかった私は怒りに身を震わせた。こんな役立たずってあるかい! 嫁は子供を産むから大事にされるんだ。産めない嫁は嫁じゃぁない。
どうしたものかと思い悩んでいたら、息子のアイザックが首尾良く愛人を連れて帰ってきた。お腹に子供を宿しているという。なんて、めでたいんだろう。私は、嬉しくて涙が出てきた。リリィという愛人は、私ととても気が合ったし、愛嬌のあるふっくらした頬がかわいらしかった。グレイスは美しすぎて高位貴族の気品に溢れていて私は本当は嫌いだったのだ。私は平民だから高位貴族にはコンプレックスがあるのかもしれない。
グレイスを雑用女に落として、食事もろくにやらないでいたら鶏ガラみたいに痩せ細って楽しかった。綺麗な金髪も灰色にしてやった。子供が産まれて嬉しくて、そしてグレイスはどんどん邪魔な存在になっていく
私は、実はある計画をたてていた。リリィをグレイスに仕立てあげて、グレイスはどこかに売り飛ばそうと。グレイスの役目はもう終わったのさ。あんな子がいても目障りなだけだ。
ところが、勇者様と冒険者様がこの町にやって来て、その冒険者様がグレイスの兄のマイケル様だと言う。まずいと思ったが、なんとか誤魔化せた。そして、嬉しいことに、マイケル様の口添えでレイラ準男爵家が男爵家に格上げされたのだ!
さらに、素晴らしいことに、邪魔なグレイスが忽然と消えてしまった。娼館にでも売れば、稼げたのにと今でも残念だが、マイケル様と会うことなく消えてくれて助かった。
カリブ家は再興し、勇者様の親友のマイケル様は繁栄に一途をたどっていた。それにあやかり、我が家もアイザックは王宮で仕事をもらい、私も社交界では鼻高々だった。
さらに、勇者様のアレクサンダー様は実は王の甥だと言うことが公表された。勇者には普通、危険が伴うので貴族は選ばれても辞退するが、この王の甥は自ら進んで勇者として魔物との戦いに挑んだと発表されると、彼こそが『英雄の中の英雄』ともてはやされた。アレクサンダー様はアティカス侯爵となり宰相補佐の地位に就いた。行く行くは実家の母上様のマイロ女公爵様が亡くなればそちらも継ぐという。貴族の頂点だ! しかも勇者という英雄! 誰も、アレクサンダー様には敵わない! なんて素晴らしいことだろう!
我が家は、さらに繁栄する。マイケル様の親友は我が家にとっても親友に違いないからだ。アイザックも王宮の職場で良い待遇を受けているというからこの世の春とはこのことだ。
だから、お祝いに私とリリィとアイザックと孫で歌劇を見に行こうと思い立った。一番良い席を予約して向かったところ、馬車の車輪が外れるという事件が起きた。端に寄せることもできずに、往来の真ん中で修理をしていたらどこかの貴族の従者がぞろぞろとやって来た。
「「「なぜ、こんな道の真ん中で修理をしているんだい!」」」」
「「「「邪魔だぞ! 端に寄せてやれ!」」」
私達がカリブ伯爵の縁の者だと知らないからそんな口をきくのだろうと思った。
「「「生意気な! こちらは、レイラ男爵家だ! 聞いて驚くなよ! カリブ伯爵の縁の者だ! 無礼だろう!」」」
と言い返すように従者に言った。
すると、あちらの従者達が鼻で笑ったのだ。
「「「あっははははー。レイラ男爵家風情がなにを偉そうに! こちらは王様の甥御様だ」」」
「「「おまけに勇者様で侯爵様だぞ! アレクサンダー・アティカス侯爵に向かって、なんたる無礼!」」」
「「「おい、この馬車を端に寄せちまえ」」」
「「「おうよ」」」
若い血の気の多い従者達がかけ声をあげて、こちらの馬車を無理矢理押した。馬車は大きく傾き、私達は悲鳴をあげ、子供は泣き叫び、私は頭をがっつんとぶつけ、リリィは肩をぶつけた。アイザックだけは無事だったようだが、いつもかけている眼鏡がねじ曲がっていた。
「いったい、なんで、こんな酷いことをするのだろう? グレイス(リリィ)、あとでマイケル様にいいつけとくれ。アレクサンダー様が酷いことをしたってね」
「えぇ、お兄様に報告しますとも」
リリィは、すっかりグレイスになりきってマイケル様に懐いているから心配なさそうだった。
けれど、馬車を立て直しやっとの思いで着いたボックス席には先客がいた。もう、疲れ果てていて、相手もよく確認せずに私は怒鳴りつけた。
「あら、そこの席の右側は私どもの席ですよ! なんて、図々しい! どきなさいよ」
私は怒りで唇が震えた。すると、奥にいた輝く銀髪の黄金の瞳の麗しい男性がなにやら従者に囁いた。あれはアレクサンダー様じゃないか・・・・・・その隣には、極上のシルクの淡いピンクのドレスを纏った、顔の半分をベールで覆った女性が優雅に寛いでいた。これが、勇者様の恋人と噂される異国の姫か・・・・・・
呆然と立っていると、すぐさまアレクサンダー様の従者がはやしたてた。
「「「こちらはアレクサンダー様の席だぞ! 侯爵家と争う気か! 身の程知らずなババァだな」」」
「「「こちらは勇者様だぞ! しかも王家の血を引いておられる高貴な英雄だぞ! たかが男爵家が!」」」
周りの貴族達も、失笑しながらこちらを見ていた。
「「「あのばあさん、呆けてるんじゃないかぁ? 飛ぶ鳥を落とす勢いのアレクサンダー様にいちゃもんつけるなんて頭がきっとおかしいのだろう」」」
そんな声まで周囲から聞こえてきた。あぁ、悔しい! なぜなんだ! アレクサンダー様はなぜ、こんな仕打ちをするんだろう! あぁ、酷い。こんな年寄りを虐めるなんて、なんて性格が悪い勇者だ!
私は、悔し涙を流しながら家に帰ったのだった。
カリブ伯爵家の当主夫妻が亡くなって、負債を抱え込んだ美貌の令嬢のグレイスだけが残されたらしい。それを聞きつけた私は、すぐに手を打った。その借金の証文を全部買い付けて、それにさらに多くの利息を上乗せしてグレイスに請求したのだ。
もともとの負債の額などたいしたことはなかったが、私が上乗せした利息で、グレイスがレイラ準男爵家に嫁に来る選択肢しか選べないように仕向けた。あそこの嫡男が行方不明で本当に良かった。
ところが、せっかく貰った嫁はなかなか子供を産まない。この準男爵家に名門のカリブ伯爵家の血をいれたかった私は怒りに身を震わせた。こんな役立たずってあるかい! 嫁は子供を産むから大事にされるんだ。産めない嫁は嫁じゃぁない。
どうしたものかと思い悩んでいたら、息子のアイザックが首尾良く愛人を連れて帰ってきた。お腹に子供を宿しているという。なんて、めでたいんだろう。私は、嬉しくて涙が出てきた。リリィという愛人は、私ととても気が合ったし、愛嬌のあるふっくらした頬がかわいらしかった。グレイスは美しすぎて高位貴族の気品に溢れていて私は本当は嫌いだったのだ。私は平民だから高位貴族にはコンプレックスがあるのかもしれない。
グレイスを雑用女に落として、食事もろくにやらないでいたら鶏ガラみたいに痩せ細って楽しかった。綺麗な金髪も灰色にしてやった。子供が産まれて嬉しくて、そしてグレイスはどんどん邪魔な存在になっていく
私は、実はある計画をたてていた。リリィをグレイスに仕立てあげて、グレイスはどこかに売り飛ばそうと。グレイスの役目はもう終わったのさ。あんな子がいても目障りなだけだ。
ところが、勇者様と冒険者様がこの町にやって来て、その冒険者様がグレイスの兄のマイケル様だと言う。まずいと思ったが、なんとか誤魔化せた。そして、嬉しいことに、マイケル様の口添えでレイラ準男爵家が男爵家に格上げされたのだ!
さらに、素晴らしいことに、邪魔なグレイスが忽然と消えてしまった。娼館にでも売れば、稼げたのにと今でも残念だが、マイケル様と会うことなく消えてくれて助かった。
カリブ家は再興し、勇者様の親友のマイケル様は繁栄に一途をたどっていた。それにあやかり、我が家もアイザックは王宮で仕事をもらい、私も社交界では鼻高々だった。
さらに、勇者様のアレクサンダー様は実は王の甥だと言うことが公表された。勇者には普通、危険が伴うので貴族は選ばれても辞退するが、この王の甥は自ら進んで勇者として魔物との戦いに挑んだと発表されると、彼こそが『英雄の中の英雄』ともてはやされた。アレクサンダー様はアティカス侯爵となり宰相補佐の地位に就いた。行く行くは実家の母上様のマイロ女公爵様が亡くなればそちらも継ぐという。貴族の頂点だ! しかも勇者という英雄! 誰も、アレクサンダー様には敵わない! なんて素晴らしいことだろう!
我が家は、さらに繁栄する。マイケル様の親友は我が家にとっても親友に違いないからだ。アイザックも王宮の職場で良い待遇を受けているというからこの世の春とはこのことだ。
だから、お祝いに私とリリィとアイザックと孫で歌劇を見に行こうと思い立った。一番良い席を予約して向かったところ、馬車の車輪が外れるという事件が起きた。端に寄せることもできずに、往来の真ん中で修理をしていたらどこかの貴族の従者がぞろぞろとやって来た。
「「「なぜ、こんな道の真ん中で修理をしているんだい!」」」」
「「「「邪魔だぞ! 端に寄せてやれ!」」」
私達がカリブ伯爵の縁の者だと知らないからそんな口をきくのだろうと思った。
「「「生意気な! こちらは、レイラ男爵家だ! 聞いて驚くなよ! カリブ伯爵の縁の者だ! 無礼だろう!」」」
と言い返すように従者に言った。
すると、あちらの従者達が鼻で笑ったのだ。
「「「あっははははー。レイラ男爵家風情がなにを偉そうに! こちらは王様の甥御様だ」」」
「「「おまけに勇者様で侯爵様だぞ! アレクサンダー・アティカス侯爵に向かって、なんたる無礼!」」」
「「「おい、この馬車を端に寄せちまえ」」」
「「「おうよ」」」
若い血の気の多い従者達がかけ声をあげて、こちらの馬車を無理矢理押した。馬車は大きく傾き、私達は悲鳴をあげ、子供は泣き叫び、私は頭をがっつんとぶつけ、リリィは肩をぶつけた。アイザックだけは無事だったようだが、いつもかけている眼鏡がねじ曲がっていた。
「いったい、なんで、こんな酷いことをするのだろう? グレイス(リリィ)、あとでマイケル様にいいつけとくれ。アレクサンダー様が酷いことをしたってね」
「えぇ、お兄様に報告しますとも」
リリィは、すっかりグレイスになりきってマイケル様に懐いているから心配なさそうだった。
けれど、馬車を立て直しやっとの思いで着いたボックス席には先客がいた。もう、疲れ果てていて、相手もよく確認せずに私は怒鳴りつけた。
「あら、そこの席の右側は私どもの席ですよ! なんて、図々しい! どきなさいよ」
私は怒りで唇が震えた。すると、奥にいた輝く銀髪の黄金の瞳の麗しい男性がなにやら従者に囁いた。あれはアレクサンダー様じゃないか・・・・・・その隣には、極上のシルクの淡いピンクのドレスを纏った、顔の半分をベールで覆った女性が優雅に寛いでいた。これが、勇者様の恋人と噂される異国の姫か・・・・・・
呆然と立っていると、すぐさまアレクサンダー様の従者がはやしたてた。
「「「こちらはアレクサンダー様の席だぞ! 侯爵家と争う気か! 身の程知らずなババァだな」」」
「「「こちらは勇者様だぞ! しかも王家の血を引いておられる高貴な英雄だぞ! たかが男爵家が!」」」
周りの貴族達も、失笑しながらこちらを見ていた。
「「「あのばあさん、呆けてるんじゃないかぁ? 飛ぶ鳥を落とす勢いのアレクサンダー様にいちゃもんつけるなんて頭がきっとおかしいのだろう」」」
そんな声まで周囲から聞こえてきた。あぁ、悔しい! なぜなんだ! アレクサンダー様はなぜ、こんな仕打ちをするんだろう! あぁ、酷い。こんな年寄りを虐めるなんて、なんて性格が悪い勇者だ!
私は、悔し涙を流しながら家に帰ったのだった。
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